2016年12月 3日/月刊ハイヴィ編集部・ヤス
現在放送中の「連続テレビ小説『べっぴんさん』」に村田君枝役で出演している土村芳(かほ)さん。その可憐な佇まいと演技でいま、注目を集めている若手女優だ。ここではそんな彼女にインタビューを実施。しっかり者の君枝の裏側にある、土村さん本人の素顔を紹介します。
――出演おめでとうございます。オーディションでは手応えがあったんでしょうか?
ありがとうございます。朝ドラでは初めて書類審査を通ったので、かなり気合を入れて臨んだんですけど、それがいい結果につながったのかなって思います。
――報告を受けた時は?
マネージャーさんに取材があるからって呼び出されたんです。何の取材だろう?って思いながら待ち合わせ場所に行くと、社長さんとかマネージャーさんたちが集まっていたんです。えっ、何が起こったの? って戸惑っていると「実は......」っていう感じでサプライズ的に報告されて。びっくりしましたけど、とってもうれしかったです。
――決まってから撮影までは?
まずは1ヵ月ほどお裁縫と関西弁の練習があって、そこでみっちりがんばりました。
――裁縫は得意でしたか?
いえいえ、学生の頃に家庭科でやっていただけで、普段はボタン付けぐらいしかしていませんでしたから、難しかったです。まずは、正しい針の持ち方という基本中の基本から習って、いまではかなり上達したと思います。家に帰ってからもひたすら裁縫の練習をしていました。
――ドラマではお店のデザインイラストなんかも描いたりしています。
絵はうまい下手は別にして(笑)、描くのは好きなんです。だけど、(ドラマで)自分の絵を使うって言われたら相当焦っていたと思います。
――役作りの面は?
初めに4週目ぐらいまでの仮台本(準備稿)をいただいたので、それを読みながら君枝ちゃんってどんな子なのかなって考えていました。ドラマの会見でもお話しさせていただきましたけど、生真面目な女の子なんだなって感じました。それから、グループ会議ではありませんけど、みんなで集まって、それぞれが思う人物像を発表しあって、役作りを深めていったんです。
――脚本家は同席するんですか?
それぞれ自分で感じた役のキャラクターを発表する機会があり、その時にいらっしゃって色々お話しさせて頂きました。
――君枝ちゃんは、どういう風に役を作っていきましたか。
台本を見て感じたものと、みんなで話し合った後での印象はだいぶ変わりましたね。どの役も、話し合ったことでだいぶ深く掘り下げられたと思います。おかげで今では、自分の中に一本筋の通った君枝ちゃんができているなって感じています。これまで7週まで放送されてきましたけど(取材時)、演じていくうちにドラマの背景(時代)の変化や、役自体の成長もありますし、新しい台本にはどんどん新しい要素が入ってくるので、毎回楽しみなんです。
――戦後の復興に合わせて、時代だけでなく、役柄も変わっていくと。
そうなんです。はじめのほうに比べたらすごく成長していると思います。だけど、最初にみんなで話し合った根っこの部分は、ずっと変わらずにあるので、大事にすべきところは守りつつ、新たな気持ちで演じるようにしています。
でも、衣装を着て現場に立てば、すっとその役に入っていけるし、いろいろと物語の展開や変化があったとしても、その場で生まれる感情というか、みんなで作り出す雰囲気に合わせていけますね。なので、あまり作り込まずに、その場その場で生まれるものを大切にしながら演じています。
とは言いつつもまだまだ模索中ですので、撮影が終わるまでには、私はこれだっていう役作りのセオリーなんかが見つかるといいなと思っています。
――演じている時は、けっこう回りは見えているほうですか? それとも役に入り込んでしまうほうですか?
やはりお芝居って相手があって成り立つものなので、(相手の演技を)受信するアンテナはちゃんと立てておくようにしています。
――ちなみに、土村さんは君枝ちゃんと似てる?
大阪にいると普段から君枝ちゃんとして過ごしているので、共通している部分があるなって感じることはありますね。たとえば、一つのことに熱中してしまうところは、私にも、時間を忘れてしまうほど打ち込んでしまう面があるので、すごく分かります。けど、まだまだ君枝ちゃんほど人間ができていないので(笑)。やはり君枝ちゃんはしっかりしていますし、自分のこと――いいこと、悪いこと――をちゃんと分かっているので、そういうところはすごいなと思うし、見習いたいです。君枝ちゃんを演じれば演じるほど、自分の未熟な部分が見えくるので、しっかりしなくちゃって思います。この撮影が終わるころまでには、人として成長したいですね。
――ちなみに、君枝さんは病弱......という設定ですけど、途中でいなくなったりしませんよね?
さあ、どうなんでしょう。1話でお店の20周年記念のイベント模様は放送されていますから、少なくても、そこまでは元気でいるはずです(笑)。
――撮影のほうはだいぶ慣れてきましたか?
はい。はじめのうちは付いていくのがやっとでしたけど、最近は慣れてきたというか、撮影を含めた生活全体の時間の使い方が分かってきた感じで、自分なりのペースで撮影に臨めるようになっています。
――ずっと大阪なんですか?
そうですね、いまは大阪で暮らしていて、毎日NHKの大阪局に通勤しています(笑)。
――物語のほうも、坂東すみれ(芳根京子)ちゃんがお店を始めて動き出しました。
敗戦のショックを引きずっていましたけど、すみれちゃんに誘ってもらってお店(キアリス)を共に始めて、それまで奥に秘めていたエネルギーを世のお母さんのため、子供のためにというように、誰かのために動くことで自分の中に希望を見いだして、(君枝ちゃんは)どんどんキラキラと輝いていくと思います。
――戦後すぐ、まだまだ女性の社会進出もままならなかった時代のお話しですが、演じていて、何か感じるところはありますか?
当時の資料を見たり、実際に演じてみて、そういうものだったんだろうなっていう認識はできましたけど、どうなんでしょう、不自由さに向かって行く姿勢には共感できる部分があるんじゃないかなって思ったりもします。(演じていても)昔のこと、という気はあまりしないですね。
――いまはどのあたりまで撮影は進んでいるのでしょう。
1月下旬ぐらいに放送予定のところを撮っています。
――今後の見どころをお願いします。
これから4人で商売を始めていきますが。商売のしの字も知らない人たちが集まって、世のお母さんのため、赤ちゃんのために頑張ろうという思いから奮闘して、その姿を見て共鳴・共感してくれた人たちを磁石のようにどんどん惹きつけていきます。その結果、商売としては成長していけるんですけど、反面で、自分がお母さんとして、妻として、家族といることと働くことを両立する苦労や悩み、葛藤は、これからもどんどん続いていきます。そうしたところを見て、共感してもらえたらうれしいですね。
――来春にクランクアップを迎えたら、喪失感も大きいかもしれませんね。
そうなんですよ。いまは、毎日撮影がある幸せを毎日噛みしめています。
――今日はありがとうございました。
●ドラマ「NHK 連続テレビ小説『べっぴんさん』」
月~土、朝8時よりNHK総合にて放送中
●土村芳/つちむらかほ
1990年12月11日生まれ。岩手県出身。女優として映画、ドラマ、舞台で活躍中。主な出演作は、映画では『何者』(2016)、『劇場霊』(2015)、ドラマでは『コウノドリ』(TBS)、『signal』(web、2015)、CMでは『すすメトロ! ホームドア篇』(東京メトロ)など
■関連リンク
・「HNK連続テレビ小説『べっぴんさん』」
・土村芳
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