- 2017年01月17日
西太后墓 海外メディア初公開! BY 近藤史人
「中国王朝 よみがえる伝説」は、考古学の新発見などから、中国史上著名な人物の実像を探るシリーズです。今まで、項羽と劉邦、諸葛孔明などを取り上げて来ましたが、今回は「悪女」と非難されてきた西太后、楊貴妃、趙姫(始皇帝の母)の素顔に迫ります。
シリーズの取材で、毎回最も苦労するのは、新発見の遺跡や文物を撮影することです。そもそも中国には、新発掘の遺跡は、中国人研究者が調査報告書を発表するまでは海外メディアの取材を許可しない、など厳しいルールがあるのですが、これに加えて最近の対日感情の悪化で、取材は極めて困難になっています。撮影の数日前に、理由もなく突然不許可になったり、法外な撮影料を要求されて諦めざるをえなくなったり…そんな中、第一集の取材では、西太后の墓の副葬品を海外メディアとして初めて撮影することができました。
北京から東へ約150キロ。清歴代の皇帝が眠る東陵の中に西太后墓はあります。墓は、20世紀の初め、清王朝滅亡後の動乱の時代に盗掘されました。このとき、西太后の遺体は破壊され、豪華な副葬品も根こそぎ奪われたとされてきました。ところが、取材を進めると、1970年代、文化大革命のさなかに東陵の研究者達が再発掘、土の中に埋もれていた副葬品の一部を掘り出し、大切に保存していたことがわかりました。海外のメディアには未公開、中国でも数度公開したことがあるだけという貴重な品々です。東陵の研究者達は、私たちの取材に対し当初は警戒心を隠しませんでした。日本の取材班に協力することで、自分たちの立場が悪くなるのではないかと危惧したのです。しかし、ディレクター、コーディネーターたちスタッフ一同が一年にわたって交渉を続けた結果、ついに撮影が許可されました。歴史への真摯な姿勢が通じたのか、ありがたいことでした。
撮影には、作家・浅田次郎さんに同行していただきました。浅田さんのベストセラー「蒼穹の昴」シリーズの重要な登場人物が西太后です。取材のために西太后墓を訪れたことがあるという浅田さんですが、残された遺品を見るのはもちろん初めてです。
ラストエンペラー・溥儀が捧げた香冊。そこからは、悪女というよりも、宮廷の人々の敬愛を集めた西太后の姿が浮かび上がります。土の中に散乱していた真珠。おそらく、首飾りなどの一部だったものの、盗掘の際にバラバラになったと思われます。そして、芸術的センスが伺われる西太后自筆の絵…。
厳冬の季節、墓の中は氷点下10度という寒さでしたが、浅田さんは食い入るように遺品に見入っていました。番組では、浅田さんが、悪女の仮面に隠された西太后の素顔を読み解いて行きます。
★放送予定
「中国王朝 よみがえる伝説 悪女たちの真実」 第一集「西太后」
[BSプレミアム]1月25日(水)夜9:00~9:59