2016年11月4日

老舗銭湯「大社湯」復活へ 11月中には営業再開

 困難を乗り越えて“復活”へ―。鳥取中部地震で大きな被害を受け、存続の危機に立たされていた倉吉市新町3丁目の老舗公衆浴場「大社湯」(牧田慎太郎さん経営)が再開に向けて動きだしている。2日から剝がれ落ちたタイルの貼り替え工事を業者が進めており、今月中には営業を始める考えでいる。牧田さんの妻、智子さん(79)は「多くの励ましを受けて存続を決めた。再び憩いの場として利用してほしい」と話し、笑顔を取り戻している。

 大社湯は1907(明治40)年ごろに建てられた木造2階建ての銭湯。建物の外観や浴室など明治期の面影を残していることから国登録有形文化財となっている。

 震度6弱を観測した鳥取中部地震では、男湯と女湯の壁面に建築当時からある貴重な絵付けタイルなどが大量にはがれ落ち、ボイラーも一部損傷した。

 無残な光景に牧田さん夫婦は存続か廃業かで頭を悩ませたが、四国から急ぎ帰省した長男の修治さん(54)との家族会議で「存続」を決意。修治さんが定年後に家業を継ぐ約束をしてくれたことや、市民からの声が再開を後押しした。

 明治時代の特注品とされるタイルの形状に近い代替品も親しくしている業者の仲介で確保でき、現在、左官職人7人が修復に当たっている。数日後には、震災前の浴室の姿にほぼ戻るという。

 智子さんは「大勢の協力で走りだすことができ、感謝でいっぱい。早く再開し、被災した人たちに湯に漬かってもらいたい」と話し、番台に座る日を心待ちにしている。(前田雅博)