グラフは部門別の金融資産・負債である。日本と同じく、家計の金融資産が財閥など企業の債務を支えるのだが、韓国は中央・地方政府に年金など社会保障基金を加えた一般政府が純資産を持つ(日本では一般政府が巨額の負債を抱える)。一般政府の資産総額のうち4割近くを国民年金公団が管理し、主に国内の債券や株式で運用している。財閥に絶大な影響力を持てるわけである。その仕組みがあるから、今回のサムスンをめぐる疑惑を招いた。
グラフでもう一つ目立つのは、海外との資産バランスがマイナスになっている点だ。韓国は2014年半ばまでは対外債務国だったが、日本と同じく対外債権国に転じたわけである。と言うと聞こえはよいが、韓国の場合、資金の最大の出し手である家計の純資産はGDPの1・1倍程度で、日本の2・5倍に比べてかなり劣る。企業純負債は同1・3倍(日本は0・91倍)であり、国内資金不足に陥りやすい。
14年当時は、ユーロ危機を受けた欧米金融機関が韓国などから資本を引き揚げるので、韓国の大手企業は日本での資金調達に躍起となった。国際金融市場危機や、今回のサムスン問題、政局不安のために韓国売りが始まると、通貨危機になりかねない危うさがある。
韓国は通貨スワップで大きく中国に依存しているが、中国自体、1年半前から巨額の資本逃避に悩まされ、トランプ政権発足を前にさらに資金流出は加速している。韓国支援どころではない。
理性的に考えると、韓国政府は日本の信頼を取り戻すしかないはずだが、次期大統領候補者たちには「反日」しかないようだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)