通常国会が召集された。2017年度当初予算案審議のほか、天皇陛下の退位のご意向を踏まえた法整備や、テロ対策に伴う「共謀罪」の法制化の議論などが焦点となる。
安倍晋三首相が政権に復帰して5年目を迎え、これまでの運営が総合的に点検される場となる。
同時に、米トランプ政権の誕生や英国の欧州連合(EU)離脱方針など、国際環境が大きく変わる中での国会だ。変化に機敏に対応した政策論争を与野党に求めたい。
首相の施政方針演説は、トランプ氏を強く意識した内容となった。
日米同盟が外交、安全保障の基軸であることは「不変の原則」だと冒頭部から強調し、近く行う見通しの首脳会談について「同盟の絆をさらに強化する」と抱負を述べた。
トランプ氏が離脱方針を示す環太平洋パートナーシップ協定(TPP)についても「今後の経済連携の礎だ」と指摘した。新政権の動向が安倍内閣にとっても最大の不確定要因になるという認識の表れだろう。
確かに国際環境の変化は、外交だけでなく、首相が重視する経済政策などにも大きく影響する。
首相は演説で「成長と分配」「地方創生」「1億総活躍」「働き方改革」などのテーマの実績と継続への意欲を説き、政権4年を節目と意識していることをうかがわせた。だが、トランプ政権の動向次第では為替水準など経済環境が変動し、雇用などの土台が揺れ動きかねない。
政権4年の点検を踏まえた戦略の練り直しも迫られつつある。
首相は「名目GDP(国内総生産)は(4年で)44兆円増加」したと強調したが、実質成長率は公約した水準には遠い。今国会に提出された16年度第3次補正予算案の財源は赤字国債による借金でまかなわれた。
2度にわたる消費増税の先送りで税と社会保障の一体改革は揺らいでいる。年金、医療制度などの再構築に向けた協議こそ野党に提起すべきだった。
また、首相は日本国憲法施行70年を踏まえた「新しい国づくり」を訴え、改憲案策定に向け国会で具体的な議論を深めるよう呼びかけた。だが、集約を急ぐような状況ではあるまい。
政策全般で与野党の建設的な議論がこれまでにも増して求められる状況である。にもかかわらず、首相は演説で「批判に明け暮れたり、国会でプラカードを掲げても何も生まれない」などと野党を挑発した。国会の役割を本当に重視しているのか、疑問符がつく。
首相が野党の意見に耳を貸さず、野党は批判に終始する。変化に対応していくためにも、国会はこんな悪弊から今度こそ脱却すべきだ。