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【鳥取地震】
明治の風情は残った…被災した銭湯が再開へ、100年続く倉吉の老舗
最大震度6弱の地震で浴場のタイルが100枚以上はがれ、休業していた鳥取県倉吉市の老舗銭湯「大社湯」が、月内にも再開する見通しとなった。経営する牧田慎太郎さん(79)、智子さん(79)夫妻は一時廃業も考えたが、常連客らの励ましに支えられ、修繕作業を進めている。
明治40年ごろから市中心部で営業を始めた大社湯の木造建物は、国の登録有形文化財となっている。れんが造りの外壁や浴場の壁一面に張られた白いタイルなど、明治の公衆浴場の風情がそのまま残る。
激しい揺れに襲われた10月21日午後2時7分ごろ、浴槽の湯を入れ替えていた慎太郎さん、建物内にいた智子さんは慌てて外に飛び出した。2人は無事だったが「ガシャガシャン」という大きな音とともに、次々とタイルがはがれ落ちた。水道の出も悪くなり、休業を余儀なくされた。
智子さんは、タイルの飛び散った浴場のひどいありさまに「私たち夫婦も年を取ったし、もう店を終わりにしようかと思った」と振り返る。
しかし、気落ちしたときに相次いで訪れたのは、再開のめどを尋ねる常連の高齢者や休業を残念がる県外からの観光客。4日後に徳島県から一時帰省した大学教員の長男修治さん(54)が、退職後に後を継ぐと申し出てくれたこともあり、再開を決意した。
タイルの張り替え作業が続く中、智子さんは「みんなに心配してもらった。励まされた恩返しに一日でも早く再開したい」と意気込んでいる。