【ソウル米村耕一】韓国のソウル中央地裁は19日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友、崔順実(チェ・スンシル)被告による国政介入事件に関連して、贈賄などの疑いが持たれた韓国サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長(48)に対する逮捕状請求を棄却した。サムスン側から朴氏側への贈賄事件と見立てた特別検察官チームの捜査は難航する見通しとなったが、朴氏の弾劾訴追を審理する憲法裁判所の判断への影響は限定的との見方もある。
特別検察官チームの報道担当者は19日、「棄却理由を綿密に検討し、今後の方向性を決定する」と述べて、請求棄却の衝撃の大きさを隠さなかった。一方で朴氏に対する対面捜査については「日程上、2月初めに実施する必要がある」との立場に変更がないことを強調した。
特別検察官チームは、李副会長側が2015年の系列企業間の合併に関連し、韓国政府傘下で系列企業の最大株主だった国民年金公団の後押しを受け、その見返りに崔被告側に巨額の資金支援を行ったとの構図を描いてきた。
馬術強化費用などの名目での崔被告側への資金支援は、約束した分を含めて430億ウォン(42億円)に上ると判断。系列企業の合併によって李副会長のグループ全体への支配力が強まる一方、朴氏と崔被告との間には「利益の共有関係」が成立し、崔被告側への資金提供は「朴氏への贈賄」に当たると仮説を立てた。
しかし、中央地裁は「贈賄罪の要件となる不正請託と見返りなどに関する立証の程度、事実関係や法的評価を巡る争いの余地などに照らし、現段階で逮捕の必要性や相当性を認めることは困難」として特別検察官チームの請求を退けた。
特別検察官チームは今後、李副会長に対する在宅起訴や逮捕状の再請求などを検討するが、すでに法律専門家からは「無理な捜査だった」との批判が上がっている。
朴氏にとっては一定程度、有利な展開だといえるが、一方で贈収賄疑惑は朴氏の弾劾訴追に関する五つの論点の一つに過ぎない。「崔被告の国政介入」を憲法違反と捉えるなどのポイントがより重視される可能性も指摘されている。