もう11年も前のことだ。 2006年10月、当時外交部(省に相当)長官だった潘基文(パン・ギムン)氏が国連事務総長に選出された。すると、外交部担当記者たちは同氏に世界地図をプレゼントした。そこには「世界を動かす」という意味の漢語「(走+隹)万(韓国語での発音:ユマン)」が書かれていた。同氏は当時、「答えにくい質問をうまく避けて通る」という意味から「油を塗ったウナギ=油鰻(同:ユマン)」と呼ばれており、同じ発音の漢字語を当てて「国際社会をうまく導いてほしい」という思いが込められたプレゼントだった。この地図を受け取ってニッコリ笑っていた同氏の姿が今も目に浮かぶ。
韓国を10年間離れていた潘基文氏が、早期の大統領選挙を念頭に置く政治家として帰国した。本人の頭には、国連事務総長に選出された時のメディアの賛辞ばかりが記憶にあるようだ。同氏はおととい、韓日慰安婦合意について質問を浴びせ続けたインターネット・メディアの記者たちに激怒した。「慰安婦問題について繰り返し言わないでほしい。それはフェア(公正)な闘いではない」。そして、懇談会を終えて出てきた時、自身の側近に対し、記者たちのことを指して「悪いやつら」と言った声がマイクに拾われて批判を浴びた。
帰国初日、空港鉄道の券売機に紙幣を2枚重ねて入れたことや、忠清北道陰城郡の社会福祉施設で「よだれかけ」をした姿などが悪意を持ってインターネット上で流布されていることに対し、積もり積もった感情が爆発したのだろう。同氏の足を引っ張ろうと、あら探ししたりでっち上げたりする勢力が存在するのは明らかだ。しかし、重要懸案である韓日慰安婦合意問題は違う。10回でも100回でも答えなければならないのが政治家の宿命だ。民主主義国家で大統領になろうと考えているなら、避けて通れない道でもある。クリントン大統領の時、ホワイトハウス担当記者たちは、同大統領と外国の首脳との共同会見でも「ホワイトハウス実習生モニカ・ルインスキーさんとの不倫スキャンダル」の質問ばかりした。