消えた来韓中国人観光客…済州の「春節特需」に赤信号

THAAD報復で中国人観光客減少
貸し切りバスの稼働率わずか10-15%
人気商店街は閑古鳥

 大型バス30台以上を収容できる済州市内の観光地、竜頭岩の公営駐車場。19日午後に訪れてみると、駐車場は閑散としていた。中国人観光客用の貸し切りバス数台が停車しているだけで、バスは十数分に1台、出たり入ったりする程度だった。近くで土産物店を営むムンさん(45)は「昨年の今ごろは中国人観光客でいっぱいで、駐車場が満車で入れないほどだった。それが昨年の後半から中国人観光客が減り始め、売り上げは3割ほど落ちた」と嘆いた。

 中国最大の連休となる「春節(旧正月)」を前に、済州島の観光業界に暗雲が立ち込めている。ここ数年、済州の観光業は中国人観光客の増加で好況に沸いていたが、その中国人観光客が今年は激減することが予想されているからだ。済州道観光協会によると、春節連休(1月27日-2月2日)の1週間に済州を訪問することになっている中国人観光客は4万2880人。前年同期の5万1385人より8500人ほど少ない。このうち航空機(直行便、経由便含む)で済州を訪れる予定の中国人は2万5920人で、残りはクルーズ船で立ち寄る観光客だ。航空機利用の観光客数だけで比較すると、昨年(4万1490人)より37.5%も減少することになる。

 済州道観光協会は、中国政府が訪韓観光客の規模を縮小し、韓国行きのチャーター便の運航を認めなくなったことが、観光客減少につながったと分析している。韓国が、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を決定したことに対し、中国が「報復性の締め付け」を強めているのだ。済州道観光協会の関係者は「中国政府は、韓国の航空会社が1-2月に申請した桂林-済州便など6路線を認可しなかった。春節連休中の定期便と不定期便はそれぞれ前年比10%減、同50%減となる見込みだ」として「今年に入り、18日までに航空機で済州島と訪れた中国人観光客は5万3891人で、前年比で6.8%減少した」と説明した。

 中国人観光客の減少は売り上げの不振に直結し、観光業界は悲鳴を上げている。済州島の貸し切りバス運送事業組合の関係者は「中国人の団体観光客がぱたりと途絶えたせいで、貸し切りバスの稼働率はわずか10-15%にとどまっている」と話した。中国人観光客が化粧品や医薬品を購入するスポットとして有名になった済州中央地下商店街は、売り上げが約70%も減少し、土産品として人気だったチョコレートの注文量も30%ほど落ち込んだという。さらに、この1年はクルーズ船が730回(計28隻)済州に寄港する予定だったが、2社が済州への寄港を減らしたため、寄港回数が704回に減少し、関係者は不安を募らせている。

 済州道は中国発の悪材料に困惑しながらも、対応策を立てようと腐心している模様だ。済州道は昨年末、「格安観光の改善、個人観光客の拡大、観光市場の多角化」を済州観光の3大重点課題に選定した。THAAD問題発生以降、済州道は中国政府の動きに注目すると同時に、これを機に量的な成長を優先させてきた観光政策を質的成長重視に転換する構えだ。

 済州道観光マーケティング担当のキム・ナムジン氏は「済州で人気のあるトレッキングコース『オルレ』をはじめ、釣り、ゴルフ、ウエディングなど付加価値を高める商品を開発したい」として「中国、日本、東南アジアの現地メディアやインターネットを通じて積極的にマーケティングを展開する計画だ」と述べた。

済州= オ・ジェヨン記者
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