さらに、フランス人カップルには結婚以外にもうひとつのオプションがある。コンクビナージュよりは正式な関係で、結婚と比べると手続きの簡単な選択肢。それは1999年に認められるようになった「PACS(パックス)」だ。これは、日本語にすると民事連帯契約となるが、簡単に言うと、いざ男女が別れる際に、正式な離婚よりはよっぽど簡単に終わらせることができる「内縁以上、結婚未満」のカジュアルな契約だ。
しかし、こんな恵まれた選択肢を前に、困惑するフランス人も少なくない。かく言う私もそのひとりだが、税金、児童手当、相続などを計算高く考えた場合、どの道を選べば得するのか、夫婦の愛も決断の要素に入れるべきなのか。考え始めると、もう、ややこしくて永遠に後回しにしたくなる。その結果、7年間のカップル生活を経て、ついに1児のママになったのだが、今でも私はまだ結婚もパックスもしていない。そう、子どもができても、私はいちばんゆるい男女関係のコンクビナージュに属している。これが日本だったら、世間体的には、かなりヤバイ状況だろうと思う。
一方、私のフランス人の同世代の友達は、結婚している人とコンクビナージュとパックスの人の割合はほぼ同じくらいだ。子どもがいる人の多くはせめてパックスにする。これは都市と田舎でも違うし、社会階級によっても違う。
■フランス人が「結婚」を考えるとき
現在、フランスでは結婚を考える人の3割はすでに子どもがいるらしい。ただそれは日本でいう「できちゃった結婚」とは違う。子どもが少し大きくなったタイミングで、未婚の親たちが冷静に考え直し、「自分に事故が起こっても、子どもへの遺産や権利がちゃんと守られている状況を作ってあげたい」とか、「夫婦としてはここまでやって来られたから、結婚して家族に形をつけたい」などの発想から生まれた結婚の決意である。
後者をさらに分析すると、1960年代の自由な時代、フランス人の若者は自発的に結婚しない道を選んだ。その結果、1970年代から2000年代にかけてその副作用のように同時に増えてきたのが離婚率だった。2000年以降は少し安定してきているようだが、自分の親の別れや、新たな親を迎える「ステップファミリー」を経験してきた多くの30、40代のフランス人の心には、離婚に対する不安が大きいというのが事実だ。それもあって、「離婚ブーム」の時代を経験した親たちは、自分の子どもに「結婚しなさい」とは少し言いにくいのかもしれない。
私の場合、親に妊娠のことを告げたときに「結婚はしないの?」と軽く驚かれたが、強く批判はされなかった。もっとも保守的な家庭では、結婚へのプレッシャーはフランスでも強いが、それは少数派だろう。
「内縁以上、結婚未満」のカップルも
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週刊東洋経済 |
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