日本人よ、もういい加減目を覚ましてくれ!

12月19日。日経新聞がずいぶん力の入れた特集を掲載した。
新連載「砂上の安心網」から『高齢者医療、チェックなき膨張 2030年 不都合な未来』と題した非常に力の入ったルポである。言論サイト『アゴラ』でも池田信夫氏が紹介していたが、これが実に力の入った特集だ。

現在の日本の予算は? 多くの方々が答えるだろう。
「え?こないだニュースでやってたじゃん」「97兆円でしょ?」
これは正しくは正解ではない。

日本の予算は大きく分けて2種類あり、政府の裁量の任された予算を「通常予算」。しかし、逆に最初から使い道が決まってしまっており、どうにも動かすことのできない「特別会計」という予算が存在している。そして、これらは「動かせない」ことをいいことに、関係省庁や政治家の利権まみれのブラックボックスとして活用されているのが現実だ。私はキー局でアナウンサーをしている時から、この特別会計の闇については数十回にわたり特集を組んできたが、私はこれ(特別会計)が日本の最大の闇だと主張している人間だ。

日本の予算は確かに97兆円だ。
が、特別会計を加えると、実は日本政府が国民から巻き上げているお金は…大体年間で220兆円ほどとなる。ネットなどで調べると『もう少し多いはずだ!』と言いたくなる人もいるはずだが、これは少しかぶっている部分があるために起きる勘違いで、正確には1年間で220兆円ほどと思ってくださればいい。
その年間220兆円巻き上げているお金の…114兆円が「社会保障給付費」に使用されている。

信じられるだろうか?なんと国家予算の半分以上だ。
結局、年金やら医療費やら…その大半が75歳以上に使われる「社会保障給付費」に回されているので若者に全然回らない。子供たちに全然回らない。お金がないので子供も産めない。いや、その前に結婚なんて到底できない。大好きな人に対して「君を幸せにする!」なんて『無責任な』発言、到底できないからだ。

例えば、欧米諸国ではすでに意識を失った高齢老人に対して、チューブを挿管してただ心臓を動かすような医療をしたら即時『老人虐待』で逮捕な国すらある。当然、そんなものに若者のお金は使わない。

が、日本では「高額医療費制度」と言って「高い医療費は税金を使っちゃいましょう~」という信じられない制度が出来てしまっており、若者たちから搾取したお金を意識など完全にない寝たきりの老人の鼻から突っこまれたチューブのお金に垂れ流しになっている。当然、自民党に必死に献金をし続けている日本医師会と製薬会社がぼろ儲けしている状態が垂れ流しだ。

先だって、私の書いたあるブログが多くの非難を浴びたというニュースが流れた。実態は少々多くの方々の認識と異なる部分もあるが、多数のスポンサー攻撃、数十件に及ぶ殺害予告などを受け、私は担当していた全番組を降板する事態に発展した。私はキャスターの降板に当たって、画面上では何の反論の機会すらも与えられることはなく、ただ蓋をする対応だったことに少々悔しい思いもしたが、あんな事態があったとしてもそれでも変わらずに訴えたいことがある。

もう、日本の社会保障制度の仕組みはゼロベースで見直すべきだ。

複数の「人権派」を名乗るジャーナリストなどが私のブログに対して口汚く罵りながら、いかにも「理解のある人」のごとく、次のように言い続けていた。

「医療なんてものはね、全ての人にいきわたるようにして当然なんですよ」

耳を疑った。世界中のどこの国で、どんな病気に対しても2割か3割の負担で…しかも、超高額な医療費の場合は、申請さえすれば本人たちは年間10万円程度で全ての治療費・医療費を「税金同様に徴取されている保険料から支払われている」国があるというのか?

社会保障先進国を名乗るイギリスであっても、日本とは全く違い「かかりつけ医制度」を浸透させ、無駄な医療費の抑制に力を注いでいる。イギリスやオランダが医療費がかからないというのはあくまで建前だけの制度だ。実際に住んでいる方々に話を聞いたり彼らの生活日記をネットを通じて読んでみると分かることだが、そもそも、イギリス人が風邪にかかりました、熱が出ましたと医者に行ったところで、全く相手にされずクスリすら出されない。

イギリスの「かかりつけ医」の制度上では、無駄な投薬は厳に慎むことを徹底されているので、放っておけば治る程度のものに「国民のお金」は費やされないのだ。その中で重篤な方々はそれぞれの専門医を紹介されるのだが、大量に増加している移民たちが次々と病院に押し寄せているので、ステージ2と診断された患者が、次に手術を受けることが出来る上級医に行けるのが5か月先になり、やっと手術を受けられるときにはステージ4に進行していたというニュースもあったほどだ。

そんなことになってはいけないので、イギリス本国の最低レベルの所得のある方々方々は、基本は自分のお金を民間の医療保険を使って支払い、国ではなく「私立の医者」に行って治療を受けているのが現実である。日本などより、よほど医療費はかかっている。その程度を勉強せずに「医療は全ての人にいきわたるべき」とはどの口が言っているのか。聞いていて恥ずかしくなった。

高額な医療費に関してはアメリカだって同様だが「全員を救いたいか?」と言われればもちろん私だって「全員救いたい」。が、そんなことをやってどうなるのか?テレビの前でだけいい顔をしている「自称:ジャーナリスト」の面々は資本主義社会では「救う」のにも「お金がかかるのだ」という大前提をすっ飛ばしているのだ。

そのお金はどこから出ている?

その大半を「現役世代」と呼ばれる15~60歳までの人間たちが負担しているのだ。要は「将来の国の資産となる子供を産み、育てる世代」だ。

私は、現状の日本を見ていると、現役世代の負担があまりにも多すぎることに懸念を抱かざるを得ないのである。2016年の最新データによると、今の日本の可処分所得の水準はなんと1983年当時と同水準である。ファミコンが発売された年だ。テレビは2・3万円で手に入った時代である。

今の若者たちはそんな程度の「使えるお金」しかなく、スマホは必須、Wi-Fiは飛ばさなければいけない、今は主流となっている4Kテレビを購入しようとすると、12~15万円はしますよ、というこの時代に生きなければいけない。こんな状況の中、いったいどの若者が「さ、子供を産もうぜ」となるというのか。

私には子供が3人いる。私自身、親に愛情をたくさん注いでもらって育てられたので、私も子供たちの世代の礎になりたいという思いが強い。が、私たちの世代の…今の日本をそのままで子供たちに渡すことなどできるだろうか? 日経新聞の社会保障給付費のシミュレーションの通り、2030年には社会保障債務が2000兆円に達するという示唆すらあるほどだ。

そもそも、1961年【昭和26年】に出来た社会保障のシステムが、平成29年の現在に適応出来るわけないのだ。そんな当たり前のことを「次の選挙の通りたいだけの政治家」は絶対に言わない。みんなにいい顔をしたいだけの政治家は、息を吐くようにウソをつき続けている。こんなことで子供らに対して僕らの世代は顔向けできるのだろうか? 自信を持って言えるのか?「君らの親だぞ」と。

そろそろ真剣に向き合うべき時期だ。なお、最後に今の年金や保険制度が出来た【昭和26年】の日本人の平均寿命だけ記しておく。

男性65歳。女性70歳だ。

そんな時代のシステムが今後も持つかどうかくらい、懸命な読者諸氏はお分かりになることだろう。口汚く私を批判している暇があるのであれば、もっと真剣にみんなで「持続可能な社会保障制度」を検討すべき時期だと、少なくとも私は信じている。

長谷川豊

長谷川豊

司会者・キャスター。
在京キー局で14年間アナウンサーをした後、フリーに転向。週8本のレギュラー番組を持つ傍ら、人気ブログや連載を執筆。 現在は執筆や講演・イベントなどで幅広く活躍している。時として過激な発言や提言が炎上することも。

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