『ご近所未来ラボ』では、読者の皆さんの活動に役立つ、これからのコミュニティや地域を作っていく取り組みや考え方をご紹介しています。
これまで、コミュニティデザインの領域における注目キーワード「パークマネジメント」について、数回にわたってお伝えしてきました。今回は、「パークマネジメント」の概念を取り入れた、日本での事例を見ていきましょう!
【「パークマネジメント」の概要をご紹介した記事はこちら】
【海外における「パークマネジメント」の事例をお伝えした記事はこちら】
(リンク)
地域住民が経営する公園が池袋に誕生
写真出典:http://www.haconiwa-mag.com/magazine/2016/05/minamiikebukuropark/
南池袋公園は、JR池袋駅から徒歩10分圏内にある、オフィスビルに囲まれた小さな都市公園。この公園は「サードプレイス」の概念を取り入れ、周囲で働くオフィスワーカーからファミリーまで、様々な人が集まる場を目指しています。
【公式ホームページ】南池袋公園Facebookページ
園内には、大きな芝生広場を中心に、生産者と消費者の「食を介するつながりの場」を目指したカフェレストラン「Racines FARM to PARK」や、卓球台や遊具が設置された多目的広場などが設けられています。
公園では、園内の芝生や樹木について知ることで自然と親しめるワークショップや、防災について学ぶ講座、旬の食材を味わうイベントなどが行われています。気軽に参加できる雰囲気があり、どのイベントも大賑わい!
実は、日本で最も建物が密集する「高密都市」である池袋。特にオフィスビルや商業施設が集まるJR池袋駅周辺において、この公園は、広々とした空間でのんびりと過ごすことができる貴重な場所です。だからこそ、より多くの人々に親しまれる公園となるために、2011年から公園を一時閉鎖し整備が進められました。そして、2016年春、約5年間にわたる工事を経て、ついにリニューアルオープンしたのです!
写真出典:南池袋公園公式Facebookページ
公園のリニューアルにあたって、商店会や町会、隣接する地権者、出店者である「Racines FARM to PARK」の経営者、豊島区などによって「南池袋公園をよくする会」が結成されました。現在はこちらの会が、公園の具体的な利用方法やルールづくりを担っています。会の運営資金には、レストランの売り上げの0.5%が地域還元費として寄付されており、日本では珍しい地元の人々を巻き込んだ経営システムとして、全国から注目されています!
【参考記事】
ディズニーランドの運営方法を取り入れた公園!?
写真出典:ぐるっと神戸
次に、地方における大規模な公園での実践例をご紹介します。
兵庫県立有馬富士公園(以下「有馬富士公園」)は、日本の市民参加型パークマネジメントの先駆け的存在。現在整備している場所も含めると、約416haという広大な公園です。棚田や、生き物の観察ができる生態観察園、日本の伝統的な住まいや暮らしを伝承するかやぶき民家など、自然や日本の伝統に触れることが出来る環境が整備されています。特に、子どもたちには地域の民話をベースにした遊具施設「あそびの王国」が大人気だそう!
【公式ホームページ】
有馬富士公園は2001年に開設。周辺のニュータウン開発に伴い、急増したレクリエーション需要に答えるべく計画されました。
計画・建設が進んだ1990年代は、ちょうど住民参加型の施設運営が注目され始めたころ。兵庫県内初となる「市民参加型パークマネジメント」の実践を掲げた公園として、建設が進められました。工事が始まる前から、地域住民を交え公園活用に関する研究会を開催するなど、住民参加の活動を積極的に展開。現在は、NPOなどの市民活動団体が公園運営に参加し、年間を通じて多数のプログラムを行っています。
写真出典:緑の環境クラブ
住民たちが提供するプログラムは「夢プログラム」と呼ばれます。開催される夢プログラムは、なんと年間600以上! 里山環境を学ぶ教室や、お米作り体験などの自然環境にまつわる講座の他、託児つきプログラムや、子どもたちがプレイリーダーとして他の子どもたちをサポートするクラブ活動など、様々なプログラムが提供されています。
ユニークなのは、プログラムの運営方法。NPOなどの市民が「キャスト」となり、一般来園者「ゲスト」に対してプログラムを提供する仕組みづくりを行っています。このシステムはなんと、あのディズニーランドを参考にして作られたのだそうです!
【参考記事】
studio-L | project | 有馬富士公園パークマネジメント支援
自由な遊び場は自分たちの手でつくる
最後に、1つの公園にとどまらず、複数の公園で多面的に展開するパークマネジメントの例をご紹介します。
写真出典:羽根木プレーパーク|世田谷区エリアガイド|住みたい街がきっとみつかるエリアガイド【itot】
世田谷区のプレーパークは、豊かな自然環境の中、木登りやたき火、泥遊びなどに挑戦できる遊び場です。
【公式ホームページ】NPO法人プレーパークせたがや
プレーパークのモットーは、「自分の責任で自由に遊ぶ」こと。
近年、事故の責任追及や住民からの苦情によって、多くの公園や遊び場で、子どもたちの遊びが制限されてしまっています。しかし、プレーパークは、あくまでも子どもたちの自由な遊びを尊重することを提唱。世田谷区と地域住民が協働で運営し、一緒に遊具やルール作りなどを行うことで、子どもたちが主体的に遊びをつくる場を創出しています。現在、世田谷区内には、公園内の敷地を利用した4か所のプレーパークがあります。
プレーパークの理念を掲げた看板。各プレーパークに設けられています。
写真出典:「自分の責任で自由に遊ぶ」プレーパーク | 世田谷区
プレーパークの原型は「廃材やがれきのほうが子どもたちに自由な遊びを提供できる」という考えのもと、1940年代にデンマークで誕生した「廃材遊び場」です。この廃材遊び場に触発されて、イギリスでは第二次世界大戦の爆撃跡地に「冒険遊び場」が作られます。イギリスの冒険遊び場は、諸外国でも注目を浴びるようになり、1950~70年代にかけてヨーロッパを中心に、たくさんの冒険遊び場が設立されました。
この冒険遊び場が日本に伝わったのは、1970年代のこと。当時の子どもの遊ぶ環境に窮屈さを感じていたとある夫婦が、冒険遊び場のあり方に感銘を受け、日本における第一号の冒険遊び場として「羽根木プレーパーク」を開設しました。
すると、その概念に賛同する住民や親たちが集まり、世田谷区を中心に活動が拡大。区内には、次々と新しいプレーパークが作られていきました。現在、プレーパークの概念は全国に伝わり、各地でそれぞれの運営組織や自治体が運営しています。
【参考記事】
世田谷のプレーパークは、区から委託を受けた「NPO法人プレーパークせたがや」が運営を行っています。
プレーパークせたがやでは、開園時のプレーパークの管理のほか、地域の中高生を対象にした夕食会の開催や、中高生が企画するイベント運営のサポートなども実施。また、子育て中の両親に対する育児講座や、託児付きのイベントなど、子どもの親に対する活動も展開しています。
各プレーパークには、子どもの遊びを支援する研修を受けたプレーワーカーと呼ばれるスタッフを常駐させ、子どもたちの遊びを支援しています。
身近な公園について知る、身近な人たちとつながるために
人々の生活を豊かなものにする公園。
その公園をより魅力的なものにしていくため、「パークマネジメント」を取り入れた様々な取り組みが、地域の人々の手によって、全国各地、そして世界中で行われています。
「パークマネジメント」を実践する上では、住民同士のコミュニケーションがひとつのキーになります。ご近所SNS「マチマチ」はコミュニケーションツールとしてきっと役に立つはず。
「パークマネジメントを近くの公園で実践してみたい!」という方も、「自分の近くの公園はどんなことをやっているんだろう?」と興味を持った方も、「マチマチ」をぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか? これまで知らなかった公園の新たな一面を知ることができるかもしれません。
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