韓国大統領選挙戦が徐々に本格化しつつある中、立候補が予想される候補者たちがポピュリズム的な公約に次々と言及している。城南市の李在明(イ・ジェミョン)市長は若年層、高齢者、農林漁業関係者、障害者など2800万人に年間100万ウォン(約9万7000円)の給付を行う「基本所得制」と呼ばれる制度の導入を公約として掲げた。またソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長も児童、青年、高齢者に月30万ウォン(約2万9000円)を給付するよう主張している。最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は高齢者向けの基礎年金支給対象の拡大に加え、その額も10万ウォン(約9700円)上乗せし、さらに失業中の若者には月30万ウォン、児童には10万-30万ウォンの給付を行うと言い出した。
李在明市長の提案を実現するには年間28兆ウォン(約2兆7000億円)、朴元淳市長の提案だと同じく20兆-35兆ウォン(約1兆9000億-3兆4000億円)の予算が必要となる。現行の基礎年金には年間10兆ウォン(約9700億円)、基礎生活保障(生活保護)には9兆ウォン(約8700億円)が投入されている。現状でもヌリ課程(満3-5歳に対する教育・保育課程)に必要な4兆ウォン(約3900億円)をめぐって毎年激しい議論が行われているが、これに加えてさらに大規模な福祉を行うとなれば、その財源をどうするか当然説明すべきだが、候補者たちは財源については何も語らない。われわれが先進国に比べて福祉が不十分であることは事実だ。ただそれでも2000年の時点でGDP(国内総生産)の4.5%だった社会福祉関連の支出は、昨年は10.4%にまで増加している。福祉が拡大するペースがこのように非常に早いにもかかわらず、ここからさらにバラマキ競争に熱を上げているようでは、逆に経済も財政も破綻させ、最終的には福祉全体のレベルを下げる結果をもたらしてしまうだろう。