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学内研究、軍事利用の恐れの有無 信大の審査、本格運用

 信州大(本部・松本市)が本年度、学内の研究が軍事目的の技術に利用される恐れがないか審査する仕組みを導入し、運用を始めたことが18日、分かった。2015年度に改訂した「研究活動上の行動規範」などに基づき、学内に審査組織を設けて個々の研究内容を審査し、研究実施の可否を判断する。軍用と民生用の両方に利用可能な「デュアルユース」技術が進展していることを踏まえた対応。既に1件の研究について審査し、軍事転用の懸念はないと判断した。その他の複数の研究についても近く審査を始める。

 防衛省は15年度、防衛分野に応用可能な民生技術を積極的に活用するため「安全保障技術研究推進制度」を創設。本年度は研究費6億円を大学や研究機関に支給した。来年度は予算規模が100億円余まで拡大する見通しで、民間の研究と急接近しつつある。信大内からはこれまで同制度への応募はない。

 信大は昨年7月、際限のない軍事研究の進展に一定の歯止めをかける仕組みが必要とし、学内の研究担当理事や理系学部、文系学部の委員らでつくる「科学技術の利用の両義性に関する部会(デュアルユース部会)」(6人)を設置するなど態勢を整えた。審査は、研究者自身が、「平和用途以外」に使われるかもしれないと懸念する研究が対象。ただ第三者から懸念が出された研究も審査が可能になる場合もある。

 研究者はまず「デュアルユースに関する審査届出書」を大学側に提出。届出書にはテーマや概要に加え、「デュアルユースに関する懸念事項」「共同・受託研究の相手方の存在」「研究財源」を明記する。

 最初の審査は研究担当理事が行い、軍事利用の懸念が消えない場合はデュアルユース部会が審査する。そこでも懸念が残る時は、全学的な組織の「研究委員会」が審査。最終的には学長が判断する。審査では、基礎研究か、直接的な製品開発を目的とするのかといった点や、研究費の支給元、共同研究の相手なども確認する。

 信大は取材に、将来の特許取得の可能性などを考慮して審査対象となった研究内容の詳細を公表しないとしている。信大によると、昨年夏に審査を終えた研究の分野は「資源探索」で、研究担当理事の段階で軍事転用の懸念はないと判断したという。このほか、「防護服」「バイオミミクリー(生物模倣技術)」に関する研究について審査する見通し。

(1月19日)

長野県のニュース(1月19日)