■習氏、反トランプで欧州取り込み
【上海=河崎真澄】トランプ次期米政権の発足を20日に控え、中国の習近平国家主席は世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)の舞台を、対米牽制(けんせい)のチャンスととらえた。17日の基調講演で、保護主義の台頭などグローバル化からの逸脱に反対する一方で、中国経済の存在感を訴えた習氏。「トランプ次期米政権と一線を画す欧州勢などとの関係を深める戦術」(関係筋)に出る狙いだったようだ。
習氏の会議出席は今回が初めて。欧州政財界に影響力が強いとされるダボス会議を重視する姿勢をみせた。基調講演では対中批判を強めるトランプ次期大統領を念頭に、「反保護主義の旗幟(きし)を鮮明にする。貿易戦争の結果は双方ともに敗北しかない。通貨安競争はしない」と反論した。
英国の欧州連合(EU)離脱決定で各国が揺れる中、トランプ次期政権を“悪者”に仕立てることで、「中国は欧州勢などと共通の“敵”を作ることができる」(関係筋)との読みがある。
一方で、中国経済は成長鈍化の厳しい局面にある。
習氏は、20日に発表される2016年の中国の国内総生産(GDP)成長率について、「6・7%増になったようだ。今後5年で8兆ドル(約900兆円)の商品輸入を予測している」と述べた。6・7%は1990年以来、26年ぶりの低い成長率。「その数字も大半は公共投資や減税の効果。民間活力や外資の取り込みは急速に衰えている」(エコノミスト)のが実態だ。