アパホテルに南京大虐殺否定の本、中国で批判の声
- 2017年01月19日
ビジネスホテル大手のアパグループが客室内に第2次世界大戦中の南京大虐殺を否定する本を置いているとして、同社を非難する声が上がっている。
問題となっている本はアパグループの元谷外志雄代表の著書。グループが運営するホテルのさまざまな場所で置かれていることが今週明らかになり、中国政府が批判したほか、中国国内の予約サイトがアパホテルをボイコットするなどしている。
しかし、アパグループは本の撤去を拒んでおり、元谷代表も主張は変えないとしている。
本はホテルの各客室に置かれ、ホテル内のギフトショップでも売られているという。
なぜ大問題に発展したのか
「レイプ・オブ・南京」とも呼ばれる南京大虐殺は、中国にとって非常に敏感な問題で、日本でも議論が絶えない。
1937年12月に旧日本軍は中国東部の南京に侵攻。中国は、当時30万人が虐殺されたとしているが、数字には一部の歴史家からの反論もある。日本の一部のナショナリストたちは虐殺自体を否定している。
南京大虐殺をめぐる論争は、戦時中の行いに対する日本の謝罪や償いが十分でないと中国が非難する理由にもつながっている。
中国では2014年に、南京大虐殺が起きた12月13日を「国家追悼日」と定めており、事件は国民にとって愛国心がかき立てられる象徴的な存在になっている。
どんな本なのか
問題となっている本の題は「本当の日本の歴史 理論近現代史学Ⅱ」。元谷代表がアパホテルのニュースレターで連載していたコラムをまとめたもので、南京大虐殺の歴史資料への疑問を述べ、中国側によって捏造(ねつぞう)されたもので、実際は起きていない、と主張している。
本には、旧日本軍兵士らが女性を強制的に性奴隷にした事実はないと主張する部分もある。
「従軍慰安婦」をめぐる問題も、中国が敏感になる問題だ。韓国もこの問題をめぐって日本と対立している。
中国の反応は?
中国外務省は、元谷氏の本は「日本の一部勢力がいまだに歴史を直視しようとせず、さらには否定し、歴史を歪めようとさえしていることが、またもや示された」と述べた。
アパグループは400以上のホテルを運営しており、中国の団体観光客から人気を集めている。
しかし、日中の報道によると、中国のホテル予約サイト「Ctrip」などではアパホテルを除外する対応を取っている。
アパはどう説明しているのか
アパグループは発表文で、多数の「意見」や問い合わせを受け取ったものの、本は撤去しないと表明した。本については、「あくまで事実に基づいて本当の歴史を知ることを目的としたもの」としている。
同社は、「国によって歴史認識や歴史教育が異なることは認識しているが、本書籍は特定の国や国民を批判することを目的としたものではない」と述べた。
日本経済新聞によると、元谷氏は同紙に対し「事実だと信じることを書いた」と語ったという。
菅官房長官は、「過去の不幸な歴史に焦点を当てるのではなく、日中両国は未来志向で取り組む姿勢が重要」だと述べた。
非難の声はどのように広がったのか
本がアパホテルの客室にどのくらい以前から置かれていたのかは不明だが、「katAndSid」というハンドルネームのカップルが中国のミニブログサイト「微博(ウェイボ)」に15日に投稿した動画で紹介されていた。
米国人女性と中国人男性のこのカップルは、ニューヨーク大学の学生で、日本を旅行中にアパホテルに滞在し、部屋に置かれていた本に気が付いたという。
2人は、本の存在を広く周知し、中国人を含む宿泊客に情報を提供できればと考えたと説明した。
動画は70万3000回以上共有された。
(英語記事 Japan hotelier's Nanjing massacre denial angers China)