田原総一朗「『約束反故』の韓国には怒るべきだが、その先はどうする」
ところが、朴槿恵大統領が糾弾されるなどして、実際にはソウルの少女像問題もまったく解決の方向に動いていない。日本政府が不満を覚えていたところに、釜山に新たな少女像が建設されてしまったのである。
日本政府は1月6日、長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事の一時帰国を発表した。韓国側に対する対抗措置としてだ。両氏は1月9日に帰国した。さらに金融危機時に通貨を融通し合う「通貨スワップ協定」再開に向けた協議の中断など経済面での措置にも踏み込んだ。
リベラル派の新聞各紙は「日韓の国民感情を刺激しないような冷静な対応に努めるべきだ」と主張するが、私は日韓が本当に信頼関係を構築するためには、むしろ怒るべきときは怒りを表明すべきだと考えている。
だが、長嶺、森本両氏の一時帰国は少なからず問題だと考えている。政府は2人を一時帰国させて、いったいどんなきっかけで韓国に帰任させるつもりなのか。
昨年末に韓国で行われた世論調査では、日韓合意に賛成は25.5%で、59%が破棄を求めている。それに今年は大統領選挙が控えており、与党も野党も日本に厳しい態度をとらなければ選挙に勝てない。最大野党「共に民主党」の禹相虎院内代表は「日本政府が出した10億円を返すべきだ」とまで訴えている。日本側が求めている言質など韓国側からとれるはずがなく、何の言質もとれないうちに両氏を韓国に帰任させればソウルと釜山の少女像を認めたということになってしまう。かといって、いつまでも帰任させないと日韓関係は深刻な事態となる。政府の幹部は、その辺りをどのようにとらえているのだろうか。
※週刊朝日 2017年1月27日号