加藤一二三九段=東京都渋谷区の東京将棋会館で2016年12月24日午後9時40分、宮間俊樹撮影
第75期名人戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)のC級2組順位戦9回戦の残り11局が19日、東京と大阪の将棋会館で指され、竹内雄悟四段(29)が佐藤慎一五段(34)に勝って3勝目を挙げたため、この日対局がなかった1勝7敗の加藤一二三九段(77)は同組51人中下位10人になることが確定し、規定で現役引退が決まった。加藤九段は将棋界の史上最年長棋士で、約63年のプロ生活に終止符が打たれた。
加藤九段は現在、名人挑戦者を決める順位戦の最も下のクラス、C級2組に在籍。同組は各自10局を戦い、今期は下位10人(42位以下)に降級点が付く。加藤九段は降級点が3回目となるため、フリークラスへの降級が決まったが、同クラスは原則65歳が定年のため、自動的に引退となった。ただし順位戦の残り2局と、3月までに抽選がある棋戦で勝ち進んだ対局は指すことができる。
加藤九段は「まだ今後の対局も残っており、全力投球する所存ですので、進退に関するコメントは最後の対局が終わってからに致したい」との談話を発表した。
加藤九段は福岡県出身。1954年に14歳7カ月でプロ棋士となる四段に昇段し、昨年、藤井聡太(そうた)四段(14)に抜かれるまで最年少プロ入り記録を保持していた。順位戦では毎年昇級昇段を果たし、18歳でA級八段に。「神武以来の天才」の異名をとっていた。
20歳で名人挑戦者となったが、故大山康晴十五世名人ら当時のトップの壁は厚く、初タイトルは69年の十段(竜王の前身)。名人戦は3回目の挑戦となった82年の第40期で、千日手局を含む延べ10局にわたる激戦の末に中原誠十六世名人を破り、名人の座に就いた。
タイトル獲得は名人1期のほか、王将1期、十段3期、王位1期、棋王2期の計8期。順位戦の最上位、A級在籍は名人1期を含む36期で、大山十五世名人に次ぐ2位。通算成績は1323勝1173敗で、タイトル戦の持将棋を含む対局数は2497局。対局数、負け数は歴代1位。勝ち数は大山十五世名人、羽生善治王位(46)に次ぐ歴代3位。
最近は「ひふみん」の愛称でテレビのバラエティー番組にもたびたび出演している。【山村英樹】