”ひふみん”加藤一二三九段、今期限りで現役引退…77歳で資格喪失
将棋の加藤一二三(ひふみ)九段(77)の今期限りでの現役引退が19日、決まった。
将棋界には、自ら引退を決断しなくとも成績低迷により引退を余儀なくされる規定がある。名人を目指す棋戦「順位戦」の最下級であるC級2組に在籍する棋士は、リーグの年間成績下位に付けられる降級点を3度取ると、順位戦参加資格のないフリークラスに降級する。降級後にフリークラスに在籍する資格は60歳までと規定されており、既に77歳の加藤九段には資格がなかった。
19日に加藤九段の対局はなかったが、順位戦C級2組で竹内雄悟四段(29)が佐藤慎一五段(34)に勝利し、現在1勝7敗の加藤九段に3度目の降級点が付くことが決まった。
今期のC級2組は、在籍51人のうち成績下位10人に降級点が付く規定になっているが、竹内四段の勝利により、下位の0~2勝勢は13人に減る。残った13人の中で「藤森哲也四段(2勝)―森鶏二九段(2勝)戦」と「大平武洋六段(2勝)―岡崎洋六段(2勝)」という直接対決が2局残されているため、確実に0~2勝勢は11人に減る。すると、加藤九段が残り2戦で連勝して通算3勝7敗としても、3勝で並ぶ他の棋士よりも昨期成績による持ち順位が低い(45位)ため、今期順位の42位以下が確定、3度目の降級点が付くことが決まった。
今後は3月末までに予定される今期中の対局に臨み、勝ち進めずに最終対局日となった日が引退日となる。勝ち進むと4月以降も対局が残るケースもある。
引退決定を受け、加藤九段は「まだ今後の対局も残っており、全力投球する所存ですので、進退に関するコメントは最後の対局が終わってからに致したいと存じます」との談話を発表した。
加藤九段は1940年、福岡県稲築町(現・嘉麻市)生まれ。棋士養成機関「奨励会」在籍時の54年に14歳7か月で四段(棋士)昇段。史上初の中学生棋士となり「神武以来の天才」と称された。昨年10月、藤井聡太四段(14)に62年ぶりに塗り替えられるまで最年少記録だった。
デビュー後、順位戦で4年連続昇級。18歳で最上位クラスのA級に昇級し、八段に昇段。60年には弱冠20歳で名人挑戦者となった。68年に初タイトルの十段を獲得後、故・大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、故・米長邦雄永世棋聖、谷川浩司九段らと名勝負を演じ、獲得タイトルは名人1、十段3、王位1、棋王2、王将1の通算8期。通算記録は2497戦(歴代1位)1323勝(歴代3位)1173敗(歴代1位)。
今月12日の直近の対局で公式戦出場の最高齢記録を77歳11日に更新した後に取材に応じ、報道陣に対して将棋に対する変わらぬ思いを語っていた。「今日の日まで対局できたのは当たり前でないと言えば当たり前でない。戦って来られたことはあらためて良かったと思っています。これからも意欲を持って人生を歩んでいきたいという気持ちでいます。まだ健康なんですよね。対局できる健康体なので、これからも将棋を本業として活躍していきたいと思っています。(77歳での現役は)全く想像しなかったです。幸いに健康で来られたのが何よりのこと。現状はよく認識していますが、最善を尽くして戦ってきました。全力投球の結果なので、これからも人生明るく歩んでいきたい。新しい意欲で人生の旅路を歩んでいきたいと思っております」
うな重を昼夕食に連続注文したり、床に付くほどネクタイを長く結んだり、タイトル戦で庭の池に注いでいた滝を止めさせるなどの数々の伝説でも知られる。最近は「アウトデラックス」などのバラエティー番組にも出演し「ひふみん」の愛称で人気を集めている。