史上最年長のプロ棋士 加藤一二三九段の引退決まる

史上最年長のプロ棋士 加藤一二三九段の引退決まる
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将棋界で60年以上、プロ棋士として活躍し、今月、史上最年長の棋士となったばかりの加藤一二三九段が、競合する別の棋士が勝ち星を挙げた結果、順位戦の最も下のクラスの中で下位にとどまることが確定し、規定によって、残された対局を終えた時点で現役を引退することになりました。
加藤一二三九段(77)は、昭和29年に当時の史上最年少記録となる14歳7か月の若さでプロ棋士になり、「名人」や「王位」などのタイトルを合わせて8期獲得するなど、将棋界を代表する棋士の1人として活躍してきました。

77歳を迎えた今月には将棋界で史上最年長の棋士となりましたが、棋士のランクを決める順位戦のリーグでは、現在、最も下のクラスに在籍し、これまで1勝7敗と振るいませんでした。

そして19日に、同じクラスで競合する別の棋士が勝ち星を挙げた結果、加藤九段は現在のクラスの中で、シーズンを通じて下位の10人にとどまることが確定しました。

加藤九段は、規定によって残された対局を終えた時点で、現役を引退することが決まり、誰よりも長く続いた棋士生活に終止符を打つことになりました。

引退が決まったことについて、加藤九段は「まだ今後の対局も残っており、全力投球する所存ですので、進退に関するコメントは最後の対局が終わってからに致したいと存じます」としています。

ひふみんは「神武以来の天才」

加藤九段は昭和15年1月1日に福岡県で生まれ、昭和29年、当時の史上最年少となる14歳7か月の若さでプロ棋士になりました。

デビュー後は4年連続で昇段を決めて、これも史上最年少の18歳で棋士として一流の証しであるA級になり、異例の速さで将棋界の最高レベルまで駆け上がりました。

その活躍ぶりから「神武以来の天才」と呼ばれ、「名人」や「王位」などのタイトルを合わせて8期獲得するなど、将棋界を代表する棋士の1人として活躍しました。

対局では、飛車の先に銀を繰り出す「棒銀」の戦法を得意とし、長考派として知られる一方で、終盤、秒読みに入ってからも力強さを発揮することから、「1分将棋の神様」の異名も持ち、持ち時間の少ないルールで行われるNHK杯では、これまでに7回の優勝を果たしています。

還暦を迎えたあともA級に在籍して活躍を続けるなど、60年以上にわたって現役を続け、個性的なキャラクターから「ひふみん」の愛称で親しまれています。

先月24日には、加藤九段の記録を塗り替えて14歳2か月で史上最年少棋士となった藤井聡太四段との間で、年齢差が62歳の対局も実現し、話題となりました。

77歳になった今月、将棋界で史上最年長の棋士となり、12日には最年長棋士として最初の対局に臨みました。この対局に敗れた加藤九段は、取材に対して「今まで元気で対局できたことに改めて感謝したい。これからもまた新しい意欲を持って人生の旅路を歩んでいきたい」などと話していました。

なぜ引退? その仕組みは

加藤九段は、棋士のランクを決める順位戦のリーグで、現在、最も下のクラスの「C級2組」に在籍しています。

このクラスでは、毎年在籍する棋士どうしでそれぞれ10局を戦い、通算成績が下から一定数の順位に入った棋士には「降級点」が与えられます。

すでに2つの降級点がついている加藤九段は、競合相手の棋士が勝ち星を挙げたことで「C級2組」の下位の10人にとどまることが確定し、3つめの降級点がつくことになりました。

降級点が通算で3つ重なると、「フリークラス」という順位戦に参加できないクラスへと降格することになりますが、降格によるフリークラス入りは60歳までという年齢制限が設けられています。
このため、現在77歳の加藤九段はこのクラスにも入ることができず、現役引退が決まりました。