蹴球探訪
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【首都スポ】鮮魚店ボクサー岩佐亮佑 世界王座へいっいらっしゃい!!2017年1月18日 紙面から
チャンピオンは鮮魚店にいる。第66代日本バンタム級王者、第44代東洋太平洋バンタム級王者、そしてIBF世界スーパーバンタム級3位で、今年前半にも指名挑戦者として世界戦を控える岩佐亮佑(27)=セレス=。いま最も世界タイトルに近い、国内を代表する強豪ボクサーは今も、地元の千葉県柏市内の鮮魚店で威勢良く掛け声を上げながら、頂点を目指している。 (藤本敏和) 「いらっしゃい! いらっしゃい!」 柏市のショッピングモールに入居する「タカマル鮮魚店」から、誰よりも威勢のいい呼び込みが響く。声の主は?と見ると、鋭い目と短髪に、短い口ひげ。前掛けがよく似合い、どこからどう見ても鮮魚店の店員だ。 だが、この男には別の顔がある。今年の前半にも2度目の世界戦に挑むことが決まっている、現代日本屈指のプロボクサーなのだ。 「魚屋さんっぽいでしょ(笑)。みんなに言われます。お客さんに顔を指されたことはないですね。ファンの人が見に来てくれたことがあるだけで」 実力、実績は折り紙付きだ。千葉・習志野高では高校3冠(全国高校選抜、全国高校総体、国体)を獲得。卒業後にプロ入りしてからは連勝を重ね、通算22勝(14KO)2敗。敗戦は2011年3月、現在は世界でも屈指の名王者となっている現WBC世界バンタム級王者・山中慎介(34)=帝拳=との日本タイトルマッチと、15年6月、IBF世界同級王者リー・ハスキンス(33)との世界戦のみ。減量苦からスーパーバンタム級に上がった昨年は、1階級上のフェザー級世界ランカーをボディー一発で沈め、指名挑戦者の権利を手にした。いま、最も戴冠に近い日本人選手だ。 それだけの選手がなぜ鮮魚店にいるのか。プロボクシングは、厳しさとは裏腹に、なかなか稼げない。デビュー直後はもちろん、日本タイトルを奪っても、副業を続ける選手が多い。 日本タイトルのさらに上が見えてくれば、後援会が充実してスポンサーもつく。世界戦を戦うような選手は、正社員との兼業など一部を除き、ほとんどが競技に専念している。 岩佐の場合、生活のためではない。08年のデビューから数年間はチラシ配りなどのアルバイトで生計を立てていたが、11年に再挑戦で日本王者を獲得したころからボクシングに専念できる環境になった。そこからが、一風変わっている。 「仕事しなくてもよくなったんですけど、そうすると練習以外やることがなくて。ボーッとしてる時間が多くなって、『こりゃ良くないな、働こう』と思ったんです」 働き先の探し方も独特だった。「気を使われたくなくて」。後援会員の伝手を使わず、地元のショッピングモールのオープンスタッフに応募。鮮魚店にしたのは、魚が好きという単純な理由だった。 当初は、元日本王者の世界ランカーということも明かさずに働き始めたものの、あっという間にバレたという。 「『名前で検索したらウィキペディアにページがあるんだけど!?』みたいな感じで(笑)。でもみんなピンときていなくて、試合後も『勝ったんだって?』ぐらいで。それぐらいがちょうどいいんです」 仕事内容は主に販売。開店前の店で総菜などを用意し、開店後は刺し身の盛り合わせなどとともに売っていく。店側もプロボクサーであることを配慮し、働ける時に働けばいいような形にしてくれているという。 「店の方から辞めるように言われない限り続けようと思ってます。見たことのない魚を扱えたりするのは楽しいですし。職場での人との付き合い方や人間関係の作り方、経営のことを現場で見ていくことは引退してから役に立つと思うので」 世界戦を控える今も、その目はさらに先まで見据えている。きっと世界チャンピオンになっても、ショッピングモールに威勢のいい掛け声を響かせることだろう。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。 PR情報
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