(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年1月13日付)

中国、パキスタンのインフラ開発に5.5兆円 「経済回廊」整備へ

パキスタン・ラワルピンディの空軍基地に到着し、少女から花束を渡された中国の習近平国家主席(左、2015年4月20日撮影、提供)。(c)AFP/PRESS INFORMATION DEPARTMENT(PID)〔AFPBB News

 アラビア海に臨むパキスタンの港町・グワダルは、世界のエネルギーの急所に位置している。中国が輸入する原油のほとんどが、すぐ近くのシーレーン(海上交通路)を通る。どんな形であろうとこの交通路が使えなくなれば、世界第2位の経済大国は窒息しかねない。

 中国が資金を融通して建設し、租借もしているグワダルの港は、戦略上重要な場所だ。だが、パキスタン政府と中国政府は何年も、この港は純粋に商業目的のプロジェクトであり、軍事利用する計画はないと言い張ってきた。

 だがここへ来て、その仮面が外れつつある。

「グワダルが港として活気を帯びるにつれ、この地域における中国の船舶の通行は、商船と軍艦の両方で増えることになるだろう」。パキスタン政府外務省のある高官はこう語る。「中国海軍の恒久的な基地を置く計画はない。しかし、両国の関係は海に向かって伸びている」

 グワダルは、習近平国家主席が推進する、海洋超大国になりたいという大望の一角をなしている。本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の調査が、この目標が過去6年間でどの程度達成されてきているかを明らかにした。

 中国は巨大な港湾ネットワークに投資を行い、自国のポート・オペレーター(港湾運営会社)を世界の大手に育て上げた。中国の海運会社が運ぶ貨物の量の合計は、どの国の合計をも上回る。また、世界の10大コンテナ港のうち5つは中国本土にあり、1つは香港にある。中国の沿岸警備隊(中国海警局)が法執行活動に使う船の量(トン数)は世界最大で、中国海軍は主要国の中で最も高い成長率を記録している。そして、漁船団を構成する遠洋航海が可能な漁船の数は約20万隻に達している。

 中国が海洋超大国として台頭してきたことは、パックス・アメリカーナ(第2次世界大戦後に西側諸国が過ごした比較的平和な時期のこと)の重要な要素だった、米国による海の支配に挑戦することになりそうだ。

 ドナルド・トランプ次期大統領が就任の準備を進めている中、米国と中国の政治的緊張はすでに南シナ海で明らかになっている。中国政府は、この海に浮かぶ島々や環礁をめぐる係争で自らの主張を通すと言って譲らないのだ。