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官邸と宮内庁 意思疎通は十分なのか

 天皇陛下の退位問題を巡り、首相官邸と宮内庁の間で認識の違いがあるのかもしれない。皇位継承という国と国民にとって重大な問題である。もしそうであるなら、心配だ。

     発端は、政府が2年後の2019年1月1日に皇太子さまが新天皇に即位し、同時に元号もいまの「平成」を改める検討を始めたことが、報道を通じて表面化したことだ。

     即位に伴い元号も変わる。年の始まりである元日の新天皇即位と元号改変であれば、国民が新たな時代に円滑に移行できるという国民生活への配慮が政府にはあるようだ。

     これに対し、宮内庁は、元日には宮中祭祀(さいし)や国事行為の「新年祝賀の儀」などの行事が終日続くため、これに加えて即位の礼など大きな行事を行うのは難しいと判断している。

     西村泰彦次長は記者会見で「1月1日は皇室にとって極めて重要な日」とし「両陛下は(元日の)儀式や行事を心を込めてお務めになっておられる」と語った。

     退位問題は官邸が主導しているが、気がかりなのは、「19年元日即位・改元」検討の情報が宮内庁に届いていなかったということだ。

     元日即位に否定的な見解を示したのも、広く報道され、宮内庁の見解を明確にするためだったとしているが、官邸から情報が伝わらないことへのいらだちもあるのではないか。

     西村氏は風岡典之長官の退任と山本信一郎次長の長官昇格に伴い内閣危機管理監から宮内庁に移った。官邸とのパイプ役を期待されたが、風通しはよくなったのだろうか。

     官邸と宮内庁には以前からすれ違いがあった。一昨年秋には宮内庁が陛下の退位についてのおことば案を提示したが、調整がつかず見送られ、昨年夏まで先延ばしになった。

     陛下は恒久的な制度による退位を望む考えを学友に明かしているが、官邸は一時、退位ではなく摂政案を検討し、現在は陛下一代の特別立法で対応しようとしているとされる。

     食い違いは退位問題に限らない。東京五輪の招致活動の一環として国際オリンピック委員会(IOC)総会への高円宮妃久子さまの出席を巡って対立した。

     皇室の政治利用ではないかとの懸念から当時の風岡長官は出席を「苦渋の決断」と表現し、菅義偉官房長官がこれを批判する事態に発展した。

     菅長官は今回の西村氏の発言について「あくまで一般論として1月1日は天皇陛下はご多忙であるという趣旨」と受け流している。

     最終的に即位の日程などを決めるのは政府だ。一方、宮内庁は皇室の考えをよく知りうる立場にある。円滑な皇位継承ができるように、双方が意思疎通を深めてほしい。

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