今回はヘイトスピーチ考とは直接関係ありませんが、弱者利権の一環として「フェミニズム利権」が存在することをご認識ください。
正直な話、現在の日本に女性差別が存在するとは到底思えませんが、いまだ男女は同権でない、女性差別が存在すると言い張るのが、フェミニストと呼ばれる人々です。
そして、彼女たちの主張に喝采を浴びせ、擦り寄っていった一部の政治家や政治団体がありました。なぜなら、彼らはそこに利権の匂いを嗅ぎつけたからです。
以下は2006年に私が編集した別冊宝島Real「男女平等バカ」のなかで、私が取材執筆した大阪府市のフェミニズム浸透状況についてのレポートです。
現在、国会議員たちのあいだで議論が闘わされているヘイトスピーチの法規制ですが、もし差別表現に関する新法が議会を通過すれば、ふたたび以下の様なことが起きてしまうのではないかと、私は真剣に危惧しています。
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大阪・クレオ大阪他
同和利権か!?
乱立する「男女共同参画センター」の怪
「不当解雇」された女性館長
東京に次いで女権運動の盛んな土地といえば大阪である。大阪市内に限っても、市立の男女共同参画センター・クレオ大阪中央、クレオ大阪北、クレオ大阪西、クレオ大阪東、クレオ大阪南、それから府立のドーンセンターと、いわゆる女性会館(男女共同参画センター)が6つもある。それ以外でも、豊中市、茨木市、吹田市、摂津市、枚方市、寝屋川市、岸和田市などに男女共同参画センターがあってフェミニズム講座やフェミニズム集会の花盛りである。
たとえば、今年(05年)1月29日、クレオ大阪中央で、豊中市などを提訴した三井マリ子氏を支援する市民団体(ファイトバックの会)主催の集会が開かれた。三井氏は、豊中の男女共同参画センター「すてっぷ」館長職を「不当解雇された」として市などを訴えていた。彼女らは過激なジェンダーフリー推進勢力に歯止めをかけようとする保守勢力を「バックラッシュ(反動)」と呼ぶから、「ファイトバック」というのは「反動と闘う」という意味だろう。
弁護団を引き連れて集会に臨んだ三井氏は、「この裁判は、私の人生の中でも最大の仕事になると思います。応援してください」と所信表明演説をおこなっている。そして、自分が解雇されたのは市議会を中心としたバックラッシュ勢力の攻撃に市が屈したため、と説明した。「人生最大の仕事」にかける三井氏の意気込みは凄まじく、現在全国の女性会館などをまわって支援要請行脚を展開中だ。
履歴によると米コロンビア大学を卒業した三井氏は、都議会議員を2期務めた後、法政大学で教鞭をとる(専門は政治学と女性学)。そして2000年秋、豊中市の「すてっぷ」初代館長の全国公募に応募。約60人の中から論文、面接などの選考を経て、採用されたという。当時の館長職は非常勤の嘱託職員の立場だった。若いころから女権運動に熱心だった彼女は、都議時代に「公費ミスコン廃止」を訴えて話題を呼んだ。また、全国フェミニスト議員連盟初代代表を務めたこともある。「すてっぷ」の初代館長に選ばれたのは、市側が彼女の知名度に眼をつけたためと言われる。
今回の「解雇」にあたって豊中市は、その理由を「組織強化のため、非常勤館長を廃止し、館長は事務局長兼務の常勤職に改めたことによるもの」と説明し、「バックラッシュ勢力に屈した」と言う三井氏の主張を「事実誤認」と一蹴。だが、市当局が三井氏のスタンドプレイに手を焼いていたこともまた事実のようだ。
「当初は市のほうにも三井氏の知名度を利用して『すてっぷ』の売込みを図りたいとの思惑もあったようですが、次第に彼女の運営方針に疑問の声が上がるようになってきました。豊中市民の税金を使って運営されている会館なのに、彼女の眼は市民のほうを向いていない、あるいは、彼女は自分の売名行為と運動のために『すてっぷ』を関西のフェミニズムの司令塔にしようとしているんじゃないか、といった風にね」(北川悟司・豊中市議)
それから、彼女の振り回す過激なフェミニズムや、その高慢な態度も批判の対象となった。
「三井氏の主張に批判的な市内の女性グループが彼女を講師に招いて出張講座を要請したのですが、その席上、三井氏は“専業主婦はIQが低い”と発言したのだそうです。本人は否定していましたが、後にこれが市議会でも取り上げられ、問題化しました」(同)
同市議によれば、「館長の交代は機構改革によるもので不当解雇ではない」という。
総施工費126億円
10月某日、大阪在住の市民運動家で、元大阪市職員・根屋雅光氏の案内により、天王寺区にあるクレオ大阪中央館へと出かけてみた。
地上4階地下3階の会館には、1000人収容可能なホール、会議室、研修室、図書館、展示ギャラリー、交流サロンなどがあり、基本的な構造は東京のウィメンズプラザとよく似ている。試みに図書館を覗いてみると、やはり蔵書の系統もそっくりだ。セクハラ、離婚、売買春と言ったテーマが多いのはもちろんだが、男性作家の文芸作品がまったくないところも一緒だった。そして土地柄からか、こちらは「同和」や「部落」の文字が並ぶ人権本専門コーナーがある。根屋氏によれば、この種の本のなかには数万円単位の本が何種類もあって、部落解放同盟その他の同和団体の利権になっているのだという。
「彼らは一般書店では到底売り物にならないこれらの高価な本を、行政に買わせるのです。たとえば、府内の教育委員会、公立図書館、学校図書館のなどには、ほとんどと言っていいほど、この種の人権本コーナーがあります」
と根屋氏が説明してくれた。。
さすがは女性センターというだけあって、託児室や授乳室まで完備され、やはり、というかトイレの表示は♂も♀もおなじ黒色だった。一階には女性のための相談室があり、部屋の前に貼ってあるスケジュール表を見ると、
「一般相談」、「からだの相談」、「自立・悩み」、「DV相談」、「法律相談」……などの予定が組まれている。曜日ごとに、専門のカウンセラーが相談に応じてくれるらしい。しかし、男の悩みを聞いてくれる施設はない……。
このクレオ大阪中央館は日本初の公立女性施設である大阪婦人会館の跡地に建設された。総施工費は53億円。現在の管理・運営には、大阪市の外郭団体である財団法人大阪市女性協会があたっている。ちなみに、他の各館の総施工費は北館が16億6000万円、西館が20億円、南館が19億4000万円、東館が17億4000万円で、全館合計は126億4000万円となっている。いずれも女性協会の運営だ。
そして、大阪市から女性協会に支払われる年間の運営費(委託費)は05年度で8億3900万円で、このうち5億円強を人件費が占める。現在クレオ大阪各館には常勤65名、非常勤1名、計66名の職員がいるが、半分は女性協会の職員で、残りの半分が大阪市からの出向職員である。
このクレオ大阪中央館に本拠を置く女性協会が大阪市におけるフェミニズム運動の総本山であり、女性協会はクレオ各館に職員をおいて「男女共同参画社会」の啓蒙と「男女共同参画事業」の指導にあたっている。事業内容は「普及・啓発」「調査研究」「研修・学習」「情報提供」「相談」「交流・ネットワーク支援」等と多岐にわたっているが、いずれも女性に対する差別をなくし、「女性のエンパワメント(力をつける)」を支援するのが主な目的のようだ。
解放同盟ダミー団体との類似点
大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)は、大阪府の外郭団体「大阪府男女共同参画財団」が運営している。大阪市の女性協会と同様に、大阪府におけるフェミニズム運動の司令塔になっている。こちらは地上七階、地下一階の豪華版で、02年10月に改装オープンした。まるでファッションビルのように瀟洒な外観だ。
03年、この施設の利用料が不公平な料金体系になっている、と批判の声が上がった。ドーンセンターに登録している会員団体には施設利用料が半額になるサービスがあるが、その会員団体を認定する判断基準がきわめて恣意的で思想的に偏向している、というのだ。
同年、大阪の保守系女性団体で、過激なジェンダーフリ-教育や偏った男女共同参画行政の是正を目指して運動していた「教育を考える大阪女性の会」がドーンセンターに会員登録しようとしたが、「大阪府や財団の施策に対する誤った考えを府民に与えかねない」との理由──つまり、思想・信条上の理由から許可されなかった。
しかし、たとえば「日本政策研究センター・大阪ビジョンの会」代表の吉田康彦氏のように、
「180を超す登録団体のなかには、過激な性教育を推進する団体や、行き過ぎたフェミニズムを提唱する団体、離婚を推奨する団体など、偏った思想や運動方針を持った団体が多い。これらの団体に許可が下りて、教育を考える会に下りないというのは、財団の運営方針自体に思想的偏向があるとしか考えられない」
と、疑問を投げかける向きは多い。
こちらの総施工費は96億5000万円。年間の運営費は毎年3億円以上が費やされている。府民の税金で建設・運営されている公共施設に思想・信条の偏向があってはならないとの批判は当然だが、「教育を考える大阪女性の会」の登録はいまだ認められていない。
じつは大阪には、このように特定の政治目標を掲げるイデオロギー色の強い集団が自治体の「外郭団体」として行政に食い込み、住民の税金を使って雇用と利権を確保し、自分たちの運動の拡大に役立てている例が、もう一つある。部落解放同盟である。
大阪市を例にとれば、この両者に市政への介入の権限を与えているのは、大阪市役所のなかにある市民局だ。試みに「大阪市市民局」のホームページを開いてみよう。
「施設紹介」の欄をクリックすると8つの関連施設が出てくる。女性協会の運営するクレオ大阪もこの市民局の関連施設であることがわかる。そして、その下に、「人権文化センター」「人権博物館(リバティ大阪)」「アジア太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)」とあるが、この三つはすべて解放同盟の息のかかった施設である。
そのうちの1つ、人権文化センターをクリックすると、浪速人権文化センターを筆頭に13ヵ所の人権文化センターの名前が出てくる。これらのセンターは、いずれも部落解放同盟大阪府連合会の支部が入っていた旧「解放会館」を改称したものである。そして各人権文化センターの下、ほんの少しだけ離れたところに何の説明もなく、「(社)大阪市人権協会ホームページ」というのがあるが、この「人権協会」こそが解放同盟のダミー団体に他ならない。
02年に同和対策特別法が失効するまで、大阪市の同和対策事業の一括窓口になっていたのは、「大阪市同和事業促進協議会(市同促)」という社団法人だった。これが現在の(社)大阪市人権協会の前身である。
市同促とは、「地区住民代表、行政関係者、学識経験者で構成され、建前では解放同盟とは別団体であることがうたわれていたが、実態は完全に一体化している」(寺園敦史「同和から人権へ──終わりなき『特別行政』のカラクリ」『同和利権の真相2』宝島文庫)団体であり、大阪市市民局から発注される解放会館の管理などの同和対策事業のほか、健康福祉局からの老人・身障者家庭奉仕などの福祉事業、教育委員会からの教育事業など、同特法失効直前の01年度で年間約28億円分もの事業を受託していた。
失効翌年から市の予算に「同和」の文字はなくなったが、同和事業と同和利権は継承団体である人権協会に引き継がれた。しかも、市からの委託事業は約60億円と、倍増していたのである。
女権運動に侵食をはじめた解同
では、年間60億円もの事業を委託されている人権協会と大阪市は、いったいどんな関係にあるのだろか?
これだけ莫大な予算を計上されているのだから人権協会は大阪市の外郭団体と言ってよさそうなものだが、市民局に問い合わせると
「市のほうから人権協会に出資しているわけではない(資本関係はない)ので、外郭団体とは認識していない」
と言う。
「では、一般の民間団体という捉え方でよいのか」
と聞くと、
「そうだ」
と言う。
しかし、そうだとすると、大阪市は関連機関でもない一民間団体に毎年六〇億円もの巨大な事業を独占的に委託していることになる……。
元大阪市職員の根屋氏によれば、
「昭和三〇年代、市民局が民生局と言った時代に、解放同盟の猛攻撃にさらされ、市はこれに屈したのです。以来、現在にいたるまで市民局は解放同盟に牛耳られてきました。この構図は府のほうでもまったく同じです。程
度の差はあれ、大阪府下のほとんどの自治体でも同様であると言っていいでしょう」
という。
ホームページ上の大阪市権協会理事長・中本順一氏の「ごあいさつ」は、
「二〇〇二年四月、(社)大阪市人権協会は(社)大阪市同和事業促進協議会の五〇年にわたる同和問題のとくりみを継承しながら、人権が尊重されるまちづくりをめざし、新たな活動をスタートさせました」
と、みずから明確に同和事業の独占窓口であった市同促の継承団体であることを認めている。つまり、「同和」が「人権」と看板を変えただけで、「差別」を盾に行政から予算を毟り取る利権の図式は、同特法失効以前となんら変わりがないのである。いや、むしろ「同和」より「人権」のほうが概念が曖昧な分、利権の裾野はいっそう広がったと言うべきだろう。
そして、男女共同参画事業のほうだが、たとえばクレオ大阪の例を見ると、この同和利権の手法をそっくり踏襲しているのではないかと思えるくらい、奇妙な類似性を確認することができるのだ。
クレオを人権文化センターに、人権協会を女性協会に、そして部落解放同盟をフェミニストに置き換えてみれば、その一致性に気づくはずだ。さらに大阪市ばかりでなく、大阪府のほうでもこの図式はまったく同様である。たとえば、ドーンセンターを人権博物館に、大阪府男女共同参画財団を大阪府人権協会に置き換えてみれば一目瞭然だ。
さらに現在、人権協会=部落解放同盟が男女共同参画=フェミニズム運動の領域にじわじわと侵食しようとする兆候があらわれはじめた。
たとえば、大阪市人権協会が市から委託されている事業のなかには、「男女平等教育地域アドバイザー養成事業」や「保育子育て支援モデル事業」など、本来、女性協会に委託されるのが妥当だと思われる事業が複数含まれている。
また、部落解放同盟の機関紙である『解放新聞』〇五年九月二六日付のコラム(「女性の実態を明らかにし解放への展望をきりひらこう」)は、世界中での女性の地位向上の機運が高まっていることに触れ、「男女平等社会の実現は、部落解放運動にとっても重要なとりくみになっている」と結ばれていて、解放同盟の女権運動への関心の高さを示している。
あるいは、解放同盟の機関誌である『部落解放』〇五年一月号は、「男女平等施策にマイノリティの声を/男女共同参画審議会委員等を務める部落解放同盟員の交流会から」という座談会記事を載せている。各地の解放同盟府連や県連から一〇人が出席してそれぞれの地域の現状を報告しているのだが、これによると、地方自治体レベルでの男女共同参画行政への参入が解放同盟女性部の組織的な取り組みであることがわかる。
たとえば、吹田市男女共同参画審議会の委員でもある解同大阪府連の女性幹部は、次のように述べている。
「今回、部落問題の前向きな取り組みとして、審議会委員に女性部長として受けてくれと言われ、うれしく思いました。長い道のりでしたが、やっと、部落問題がいろいろな人権課題の根幹にあるという認識が生まれつつあると思っています」
つまり、彼らにとって男女参画審議会はあくまでも枝葉であって、根幹は常に「部落問題」なのである。まだ憶測の域を出ていないが、男女共同参画社会基本法成立(九九年)以来、関係者のあいだで根強く囁かれている「基本法=同和利権」との説も、この大阪の例を見ることで、にわかに信憑性を帯びてくるのだ。❏
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