【米政権交代】 トランプ氏就任式のボイコット拡大 支持率は低迷
- 2017年01月18日
20日に行われるドナルド・トランプ次期米大統領の就任式について、ボイコットを表明する民主党の下院議員が50人以上に上った。議員の多くは、欠席を表明した公民権運動の闘士、ジョン・ルイス下院議員(民主党)をトランプ氏がツイートで攻撃したことなどに反発している。また就任前の大統領としては記録的な低支持率が相次ぎ発表されたが、トランプ氏は「仕組まれた結果だ」と反発している。
キース・エリソン下院議員(ミネソタ州選出)はツイッターで、「分断と憎しみの政治を唱える人物を祝うつもりはない」と書いた。
アンソニー・G・ブラウン下院議員(メリーランド州選出)もツイッターで、「就任式はパス。ルイス議員は公民権運動の英雄だ。大統領には巨大な責任が伴う。大統領の職は尊敬する。侮辱は耐えられない」と書いた。
マーティン・ルーサー・キング牧師の生誕記念日16日にかけて、ボイコットを表明する議員の数は増え続けたが、トランプ氏は17日にもルイス議員を攻撃するツイートを続けた。
大統領就任式欠席は1987年に下院議員になって以来初めてだとルイス議員が言うのは「違う(あるいは嘘だ)!」とトランプ氏はツイート(太字は原文の大文字)し、ルイス氏が2001年のジョージ・W・ブッシュ大統領の就任式も欠席したと指摘した。
ルイス議員の報道担当は、確かにブッシュ大統領の就任式には欠席したと認め、「当時の欠席も異議表明の形だった」と話した。
「議員はあの選挙の結果を信じなかった。フロリダ州の結果について紛糾したことや、連邦最高裁の前例のない介入を受けて、あの選挙結果が自由で公平で開かれた民主プロセスを反映するものとは思わなかったからだ」とブレンダ・ジョーンズ報道担当は話した。
ルイス議員(民主党、ジョージア州選出)は13日、NBCの番組でトランプ氏について、「当選させるためロシアが協力したと思う」、「(ロシアが)ヒラリー・クリントン候補の勝利を妨害した」と発言。自分はトランプ氏を正当な大統領として認めないので、20日の就任式は欠席すると表明した。
これに対してトランプ氏は14日、ルイス議員を攻撃するツイートを連投。「ジョン・ルイス下院議員は、選挙結果についてでたらめに文句を言うよりも、(犯罪まみれというだけでなく)ひどい状態でボロボロな自分の選挙区を立て直して助けるために、もっと時間を使うべきだ。口先でしゃべりまくってるだけで、なんの行動も結果もない。残念だね!」などと書いた。
これに対して大勢が、76歳になる人権活動家のルイス議員ほど「口先だけ」に程遠い人はそうそういないと強く反発した。
ワシントンの当局関係者によると、推定80万人~90万人が20日の就任式に向けて市内に集まる見通しだが、就任を祝うためか抗議するためかは不明だという。
8年前にバラク・オバマ大統領が就任した際には、推定180万人がワシントンを訪れたとされる。
ワシントン特別区の観光・会議庁「デスティネーションDC」のエリオット・ファーガソン代表によると、ホテルの客室需要の「熱意」は、オバマ氏の就任時ほどには達していないという。
一部のホテルは最低宿泊数の制限を4泊から2泊に短縮した。
低迷する支持率に反発
多くのホテルで宿泊予約率が5割程度にとどまっているものの、高級ホテルの方が予約が多いとファーガソン氏。
「1期目の大統領の就任にしては、予想よりもかなり、相当に出足は遅い」
11月の大統領選でトランプ氏は選挙人の過半数を獲得して勝利したものの、一般有権者の投票数ではヒラリー・クリントン氏が約290万票差で上回った。
トランプ氏の支持率も、就任直前の大統領としては歴史的に低迷。最新のABCニュース・ワシントンポストの合同世論調査によると、トランプ氏の支持率はわずか40%だった。2009年同期のオバマ氏の支持率は79%だった。
CNNが17日に発表した世論調査でもトランプ氏の支持率は40%で、2009年のオバマ氏は84%だった。
今月初めに行われたギャラップ社の調査では、回答者の51%が、トランプ氏による政権移行の進め方を支持しないと回答。支持した人は44%だった。
<就任直前の歴代大統領の支持率(濃緑)、不支持率(緑)、特に意見なし(薄緑)>
しかしトランプ氏は17日、世論調査結果について「でっちあげ」で「仕組まれている」とツイッターで反発。「記録的な人数がワシントンに流れ込んでいる」と書いた。
21日にワシントンで予定される「女性大行進」には20万人の参加が予想されている。200近い団体が、草の根行進を支援すると約束している。
行進は、人種や性の平等、支払い可能な医療、人工中絶の権利、投票権の保護など、トランプ政権で危機にさらされるのではないかと懸念される諸問題について支持を表明するのが目的。
<解説> 前にもあったのか? ―― アンソニー・ザーチャー、BBCニュース(ワシントン)
アリゾナ州立大学の歴史学者ブルックス・シンプソン教授によると、1973年のリチャード・ニクソン大統領の就任式では議員80人が欠席した。
トランプ氏を強硬に批判し、今回欠席を表明したジョン・ルイス下院議員は、2001年のブッシュ大統領就任式にも欠席。この時はほかにも黒人議員団から複数が欠席した。
しかしマスコミの注目はかつてないほど激烈だ。そして、ボイコットする政治家たちに関する報道に留まらず、トランプ氏によるツイッターでの攻撃も騒ぎをさらに大きくしている。
旗幟鮮明なこうした抵抗の常として、揺れている共和党関係者も自分たちの大統領が集中砲火を浴びるのを見て、あえて応援に回ることにするかもしれない。
保守派が優勢な現在のワシントンでは、共和党が自分たちの政策課題を実行できるかどうかを決めるのは、党内団結かもしれない。
武器の手薄なリベラルにとって、抗議としての就任式欠席は気分は良いかもしれない。しかし民主党が成功するには、共和党を分裂させる方法を探る必要がある。相手の決心と結束を固めさせるのではなく。