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ヘイトスピーチ 狭まる包囲網 大阪市「抑止条例」施行から半年 相次ぐ被害申告も認定はゼロ
民族や人種に関するヘイトスピーチ(憎悪表現)への包囲網が狭まりつつある。昨年7月に全国初の抑止条例が施行された大阪市では、ヘイトスピーチの被害申請が半年で20件を超えたことが判明。昨年末にはコリアンタウンで差別的デモを計画した男性に裁判所からデモ禁止の仮処分が出た上、現地を訪れた男性を反対派や警察官が囲んで中止させた。ただ、市は憲法の「表現の自由」に配慮して被害申請を慎重に審査しているとみられ、ヘイトスピーチと認定されたケースはゼロのままだ。
デモ禁止仮処分
「君の主張は明らかにヘイトスピーチじゃないか」
昨年12月29日、日本屈指のコリアンタウンがある大阪市生野区。JR鶴橋駅前に姿を見せた大阪府在住の男性に、在日コリアンらの人権保障に取り組むNPO法人の関係者が詰め寄った。
男性は在日コリアン排除を掲げる団体の元幹部。インターネット上で「朝鮮人の危険性を訴えながら防犯パトロールをする」と日程を挙げて事前告知していた。このため、鶴橋駅近くに事務所があるNPO法人がデモ禁止を求める仮処分を大阪地裁に申請。地裁は同20日、男性に事務所から半径600メートル以内でのデモを禁止する決定を出していた。
当日は大阪府警の警察官数十人も現場で警戒に当たり、男性は結局、半ば強制的に排除された。府警幹部は「男性が禁止区域の中でヘイトスピーチを行う恐れがあり、トラブルを避けるためだった」と話した。