社会的脱走ワゴン

　上の動画は「梅原大吾」ていう、日本もしくは世界で最も有名な格闘ゲームのプロと、日本でかなり有名なバルログ使いである「冷血」さんによるネット対戦なんですが、少し前に、この動画にコメントに寄せられたコメントが話題になりました。自称PP4000のSF4シリーズのプレイヤーが、動画に対してアドバイスをしたというものです。
　日本のトッププレイヤー同士の対戦であることを知らず、アドバイスをガンガンしたことで「お前は誰にアドバイスしてんだ」と様々なユーザーから総ツッコミが入った上に、悪名高いまとめサイトに晒しあげられております。

　書いてて思ったんですが、別に悪いことはしてないのよね。「知らんかった」というだけで。本人もコメントしてたけど。それが正しいかどうかもあるし、コメントがそもそも見知らぬ人に対してすっげえ上から目線という脇の甘さもある。多分、この人は、普段からこういうことやっちまう性格なんだろうと思う。「オレの得意分野だからドヤって知識ばらまきてえ」っていう欲望に突き動かされただけのように見える。そして、それが疎まれただけだ。「疎んでしまったこちら側」が被害だと思えば、その後攻撃に近い「つっこみ（この表現嫌い）」が矢のように飛んでくるのもわかる。
　この場合、冷血さんのニコ生から、長い長い対戦の一部を切り出したもんだし、そもそも両者がこの業界でトッププレイヤーであることや、あとランクマッチであるとか、お互いが大会前であったとしたら、いろいろなことを試している状況かもしれんわけだ。「前後の文脈があるはず」と想像しなかったことがこういう現象を生んだんだろうな。
　でも、別に悪いことはしてないのよなあ。だからこういう、袋叩きみたいな現象を見て気持ち悪いとは思った。ネットだから、「被害を受けた」と感じた人が際限なく増えるし、袋叩きを見て「オレも一叩き」って参加したがる人も際限なく増えるしな。

　僕が思ってたのは、結局「格闘ゲームってわかりにくい」ってことでした。何がどうすごいのか、とりあえず見ていて全然わからない。自称ではあるけどPP4000の人から見たウメハラと冷血という対戦は、練習とはいえ、素直に全然すごく見えなかったというわけだ。ということは、僕にももちろん伝わってないし、格闘ゲームに興味のない人間には100%伝わってない。誰が見ても楽しいもんじゃないのだ。よく考えたら「PP4000」の凄さも、わからん人からすればなんのこっちゃですな。
　だから、指摘する側も「あのウメハラにアドバイスできる？ウメハラを知らんってまじで？」っていう、権威的な部分で威圧することに終始してしまう。コメントの方は「対空が出ていないので自分より弱い」と判断したようだけど、対空を出さなかったのか出なかったのか、見た目にはよくわからん。あと、対人対戦中、飛んだのを見てから100%で対空が出せないと「対空が出ていない」と誹られる理由にはならんのは僕だってわかる。でも、アドバイスに僕でもわかる脇の甘さがあることに気づけても、動画の対戦における「格闘ゲーム的正しさ」は全く説明できません。それは「ハイレベルだから」で片付けられるともったいないと日々感じております。
　だから僕、格ゲー真剣にやりたいと思ってんだけどね。今は金も時間もねえよ。

　この間のトパンガワールドリーグで、中国のプレイヤー「シャオハイ」が通訳付きであれこれコメントしてたけど、こうなってくると通訳が「格闘ゲーム的文脈」を理解してないと、まともに意味を伝えられんからな。市井とゲーム業界には大きな溝があると思いました。