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【ねこぢるの夫】最凶の鬱漫画『四丁目の夕日』【山野一】

自分の世界観があまりに下らないことに気づいた時こそ山野作品を読むのにふさわしい時である。山野作品は、その唾棄すべき世界観を一気にクラッシュしてくれる。

更新日: 2017年01月18日

dougasetumeiさん

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単なる冗談としてでいいから「信じられないほど不幸な人生」というのを、今ここで想像してみてほしい。きっと、あなたの想像力より山野一の想像力のほうが、はるかに深いどん底を覗いている…。

出典枡野浩一『漫画嫌い』二見書房刊

鬼畜系特殊漫画家「山野一」

1961年福岡県小倉市出身。立教大学文学部卒。
身長185センチ。体重62キロ。

『月刊漫画ガロ』1983年12月号掲載の「ハピネスインビニール」で漫画家デビュー。

貧困や差別、電波、畸形、障害者などを題材にした作風を得意とする特殊漫画家で「ガロ系」と呼ばれる作家のなかでも、極北に位置する最も過激な作風の鬼畜系漫画家であった。

山野は「大学2年か3年の時」に東京駅の八重洲口で「神の啓示を受けた」と述べている。

その体験によって山野は、将来の自分の職業が「部屋にずっと籠もって、何かを書く仕事」になるという展望を得た。また、漫画を描くという労働の特徴として「人と会わなくてすむ」ことを挙げている。

山野一先生を好きだって公言するだけで鬼畜だと思われるんじゃないかと危惧してしまう程、キ○ガイで変態で差別的で不条理な、いや〜な気持ちになる世界です。私も含めて、ある種の人にはそれが心地よいのですが。

四丁目の夕日

タイトルを見て『三丁目の夕日』のような
ほのぼのとした漫画をイメージしたら大間違い。

内容は似ても似つかず。
あの独自路線を進みすぎている
漫画雑誌『ガロ』の掲載作品と
言えばわかる人にはわかるはず。

強烈なショックと嫌悪感に襲われるにも関わらず、
それでも最後まで読まずにはいられない、
不思議な“何か”がこの作品には宿っている。

不幸な人を描いた漫画というのは他にもあるでしょうが、恐らくこの漫画の主人公以上の不幸は無いと思います。主人公を襲う不幸があまりにも非情過ぎて、読んでいて気分が滅入ってきます。

読んだ人の心を動かすという点では間違いなく傑作と言えるでしょう。ただし、読むならしっかり覚悟を決めてから読むべきです。

地獄がみたい?それは簡単です。
ただ、この本を読むだけでいい。
(ただ、読むのは非常に苦しいです。)
完璧に救いようのない現実。現代の悲劇。

漫画でこの様な表現を行ったのは、
この本の著者の山野一さんと根本敬さんしかいないように思う。

20代前半でこんな漫画が描けるなんて
この人は天才だと思います。
本当にどこにも救いがない。

工場労働者を軽蔑し、低学歴を軽蔑する。山野の嫁(?)のねこぢるとは比べものにならない差別意識の顕在化、暴露が見事。
とにかくグロい。性的なシーンも少しはあるが、全然エロくない。グロいだけ。吐き気を伴う気持ち悪さ。読後感最悪。

ねこぢる(作者の嫁)の漫画の作中で「旦那は鬼畜系漫画家」と描かれていて、あのねこぢるが「鬼畜系」と評するからには相当なものに違いないと思っていたら、本当に鬼畜で胸糞悪かった。

さすがはねこぢるの旦那。これを読んである意味安野モヨコ&庵野秀明夫婦以上の夫婦だと確信。

『月刊漫画ガロ』連載作品

かつて青林堂が1964年から2002年まで刊行していたオルタナティブ・コミック誌『月刊漫画ガロ』。

漫画界の極北に位置する伝説的な漫画雑誌であり「サブカルチャーの総本山」として漫画界の異才・鬼才をあまた輩出した。

1998年からは青林堂の系譜を引き継いだ青林工藝舎が事実上の後継誌『アックス』を隔月で刊行中。

どの漫画雑誌にも引っ掛からない個性の塊の様な新人を積極的に採用し、作品発表の場を与え、漫画界の異才・奇才をあまた輩出したことで知られる。

『ガロ』はオリジナリティを重視する編集方針のもと、独創的な実験作・意欲作を積極的に掲載した。

その結果、他誌では到底受け入れられないアウトサイダーな作風を持つ特殊漫画家が集まり「ガロ系」というジャンルが生まれた。

連載当時はバブル前夜でありながら
『ガロ』は部数を3000部台にまで落とし
ついに原稿料が支払われる事は無かった。

こうしてガスも電話も止められた殺風景な
木造四畳半アパートで荒廃した漫画家生活を
送る羽目になった漫画家・山野一。

その窮乏した生活環境で生まれた作品こそ
本作『四丁目の夕日』であるという。

あらすじ

主人公の別所たけしは、零細印刷所を経営する家庭の3人兄妹の長男。高校3年生で受験を控えている。

経済的な境遇は決して恵まれてないが、学業だけは特別に秀でている。有名私大合格はほぼ確実で将来は明るいと思われた彼だが、不幸が不幸を呼ぶ負の連鎖の果て、無間地獄へと堕ちていく事になる。

爆発事故、父親の死、借金の取り立て、職場でのいじめetc...
作者は苦難に次ぐ苦難を用意し、たけしを追い詰めます。

たけしの親父さんの悲惨な死にざまは、中盤最大の見せ場です。
また、やがて訪れる惨劇も身震いするようなシーンだと思うが、その後のエピローグの冷めた狂気にこそ、作者の真髄が表れているような気がします。

よどんだ風景、汚い工員がたむろする汚い食堂とか、絵がもの凄く雰囲気出てます。
おかしくなった人間の表情や底辺の人たちの顔なんて、真に迫るものがあります。

ここに描かれてるのは、世の真理ってやつだと思う。
這いつくばって生きてる人間の醜い姿や人生に意味など無いって事を、嫌というほど丹念に見せつけられます。

たけしほどじゃなくとも社会に辛酸嘗めさせられてる人なら、好き嫌いはともかく、何かしら感じるところはあるんじゃないかな。

平穏な日々はあっけなく終わってしまう。残った日々は希望も何もない虫けらのような生活。
そのような生活を過ごしていく中で、蝕んでいく精神。そして創られる狂気…人は壊れやすい生き物かもしれない…

陰惨、としか言いようのない作品だった。
でもってその当時、私は精神的にどん底状態だったのだが、この漫画の読後に不思議なほど爽快感を感じた。
こんな残酷としか言いようのない作品に「爽快感」を感じるなんて、自分でもどうかと思って、その後読むことはなかった。

世の中に蔓延する建前的な嘘臭さに、どうしても不愉快さを感じることがある。そして頭にくるし疲れる。

そう感じてしまうと社会はもちろん、自分の心にすら逃げ場や救いがなくなり、そんなとき、崩壊していくこの作品の主人公でも眺めたくなるのかもしれない。どうにもならないとき、この作品はその心の掃き溜めとして機能するのかも。

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dougasetumeiさん

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