サムスン事実上トップ逮捕妥当か 今夜~あす未明 結論へ

サムスン事実上トップ逮捕妥当か 今夜~あす未明 結論へ
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韓国最大の財閥、サムスングループの事実上のトップ、サムスン電子のイ・ジェヨン(李在鎔)副会長について、特別検察官が贈賄や横領などの疑いで逮捕状を請求したことを受け、ソウルの裁判所は18日、イ副会長を呼んで話を聞いたうえで、逮捕の妥当性を判断するための審査を行っていて、18日夜から19日未明にかけて結論を出す見通しです。
韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領や知人のチェ・スンシル(崔順実)被告らをめぐる一連の事件や疑惑を捜査している特別検察官は16日、サムスングループの事実上のトップ、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長について、贈賄や横領などの疑いで裁判所に逮捕状を請求しました。

これを受けて裁判所は18日、イ副会長を呼んでおよそ4時間にわたって話を聞いたうえで、逮捕するのが妥当かどうかを判断するための審査を行っていて、18日夜から19日未明にかけて結論を出す見通しです。

特別検察官は、イ副会長が経営権の継承を目的にしたとされるグループ内の合併をめぐって、大統領府に協力を求め、その見返りとしてパク大統領やチェ被告の側に日本円でおよそ41億5000万円の賄賂を贈ったと見ていて、イ副会長を逮捕して調べることが必要だと主張しています。

特別検察官の捜査チームは18日午後の記者会見で、「最善を尽くしたので、裁判所の判断を待つ」と述べ、一方のイ副会長の弁護士は「事実関係について十分に説明した。裁判所が賢明な判断をすると確信している」と強調しました。

イ・ジェヨン副会長とは

サムスン電子のイ・ジェヨン副会長は48歳。韓国最大の財閥、サムスングループの創業者の孫で、日本の慶應義塾大学で経営学を学んだ経験もあります。
イ氏は、グループの中核企業であるサムスン電子で、半導体やディスプレイの部門の事業拡大などに携わり、2012年に副会長に就任しました。
父親のイ・ゴニ(李健煕)会長が3年前に心筋梗塞で倒れてからは、事実上のトップとして経営のかじ取りを担ってきました。

それだけに、イ副会長が逮捕されることになれば、サムスン電子の業績が回復傾向にある中で、企業イメージの悪化に加えて経営の混乱に直面し、韓国経済にも悪影響が出るのではないかという懸念も出ています。

サムスングループとは

サムスングループは1938年、イ・ジェヨン副会長の祖父、故イ・ビョンチョル(李秉吉)氏が韓国南部のテグ(大邱)で創業しました。

現在、グループの中核であるサムスン電子をはじめ、重工業や建設、金融など59の系列企業を抱え、90以上の国や地域で事業を展開しています。

とりわけ、サムスン電子は、スマートフォンや半導体、家電製品などの販売を伸ばして世界的な企業へと成長し、スマートフォンではアメリカのアップルなどと激しいシェア争いを続けています。

韓国の公正取引委員会によりますと、サムスングループの総資産は去年4月の時点で348兆ウォン(33兆円余)と韓国の財閥の中で最大です。

また、サムスングループは韓国の輸出額全体の20%を占めるとも言われ、韓国経済のけん引役と位置づけられています。

事件の構図は

韓国の特別検察官は、イ・ジェヨン副会長が経営権の継承を目的として、グループ内の2つの企業を合併した過程で大統領府に協力を求め、その見返りとしてパク・クネ大統領やチェ・スンシル被告に賄賂を贈ったと見ています。

おととし7月、サムスングループ内のサムスン物産とチェイル毛織が合併しました。これは、イ・ジェヨン副会長がサムスングループの経営権を継承するうえで不可欠だったとされています。

しかし、この合併。計画の段階では、サムスン物産の大株主であるアメリカの投資ファンドが強く反対したため、サムスン物産の株主総会で合併が承認されるかどうか流動的でした。

これに危機感を覚えたイ副会長側は、サムスン物産の別の大株主だった国民年金公団が合併に賛成するよう大統領府に協力を求め、大統領府側は、この請託を受け入れて、公団を所管していた当時の保健福祉相を通じて合併に賛成するよう公団へ圧力をかけたというのが特別検察官の見立てです。

実際、株主総会では、国民年金公団が賛成に回ったことが決め手となって、合併計画は承認されました。

サムスングループから、チェ被告が深く関係する2つの財団や、チェ被告とその娘がドイツに設立した会社への資金拠出は、合併をめぐる協力の見返りとしてパク大統領やチェ被告に贈った賄賂だったと特別検察官は主張しています。

収賄側にパク大統領も含まれるとされるのは、特別検察官がパク大統領とチェ被告は「利益を共有していた」と見なしているためです。

一方、サムスングループは、2つの財団などへの資金拠出について、「イ副会長が対価を望んで支援したことは決してない。合併や経営基盤と関連して不正な請託があったとする特別検察官の主張は受け入れがたい」として、疑いを真っ向から否定しています。

特別検察官 財閥に対する国民の反感も意識か

一連の事件のうち、チェ・スンシル被告が深く関わる2つの財団などへの資金拠出をめぐっては、サムスングループだけでなく、複数の財閥が捜査対象となっています。

当初から多くの韓国国民は「財閥は、大統領府から一方的に拠出を迫られた被害者ではなく、何らかの見返りを得ることを期待していたのではないか」として、大統領と財閥の癒着、いわゆる「政経癒着」だと強く反発していました。

韓国で十大財閥の売上高はGDP=国内総生産の4分の3に相当するとも言われ、財閥なくして韓国経済は成り立ちませんが、就職難が長引くなか、若い世代を中心に「財閥は創業家が富を独占するだけで、一般国民の雇用を増やそうとしない」という批判も広がっていました。

一方、経済界からは、最大財閥の事実上のトップであるイ・ジェヨン副会長が逮捕されれば、韓国企業全体に対する国際的な信用が損なわれると懸念する声が上がっていました。

特別検察官の捜査チームは、逮捕状を請求した際の記者会見で、「国家経済も重要だが、正義を示すことがより重要だと判断した」と述べ、韓国経済への影響は考慮したものの、立件できるという見通しに加えて、財閥に対する国民の反感も強く意識したことをうかがわせていました。