FCPAによる制裁内容が想定の範囲を超えるかどうかも問題だ。同法では企業に最高200万ドル、個人に最高10万ドルの罰金と禁錮5年が科されるが、訴訟や和解の過程で、金銭的損失が膨らむ可能性がある。
実際に08年、ドイツの電機・電子大手シーメンスは、中国、ロシア、ベネズエラ、メキシコ、イスラエルなどで公務員に14億ドルの賄賂を贈ったとして、米司法省に4億5000万ドル、米SECに3億5000万ドルの計8億ドルという罰金を支払った。李副会長の場合、約430億ウォンの贈賄の疑いが持たれているため、賄賂の額を基準に過去の事例と比較すると、サムスン電子も数千億ウォンの罰金を科される可能性がある。また、米連邦政府との事業が禁止されたり、企業の合併・買収(M&A)を拒否されたりとさまざまなペナルティーが課される。サムスン電子は15年の売上高200兆6500億ウォンのうち25%(約50兆ウォン)を米国市場で稼ぎ出しており、米国への依存度が高い。仮にさまざまな罰則や制裁が現実となれば、衝撃は非常に大きなものになる。
■ヘッジファンドによるISD訴訟の可能性も
政府・財界は15年のサムスン物産・第一毛織合併に反対した米系ヘッジファンド、エリオット・マネジメントが特別検事による李副会長の逮捕状請求を根拠に投資家対国家の紛争解決(ISD)制度で提訴する可能性も指摘されている。ISDは投資対象国の政府が認可や規制廃止など当初の約束を守らず、外国の投資家が被害を受けた場合、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に提訴できると定めた制度だ。
サムスン物産の合併は既に完了しているため、それ自体が無効になることはないが、合併比率などをめぐり、法廷での攻防に持ち込むことが可能だ。エリオットをめぐっては、損害賠償請求額に機会費用まで含め、4000億-5000億ウォンの賠償を求めて提訴するのではないかとの見方も一部で浮上している。