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<宮内庁>にじむ警戒感 元日即位浮上「寝耳に水」

毎日新聞 1/18(水) 7:00配信

 宮内庁の西村泰彦次長が17日、2019年1月1日に皇太子さまが新天皇に即位される案を政府が検討していることについて「困難」との見解を示した。この案については今月10日から各紙で報道が相次いだが、宮内庁では「寝耳に水。全く聞いていない」と戸惑いの声が出ていた。記者会見という公式な場での今回の発言。天皇陛下の退位を巡る議論が本格化する矢先、改元との絡みで「即位の日」が浮上するという急展開への同庁の警戒感がにじむ。

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 新天皇の即位が元日に行われることに否定的な宮内庁が、その理由として挙げるのは伝統的な皇室行事だ。「四方拝(しほうはい)」は元日午前5時半から皇居・宮中三殿に付属する神嘉殿(しんかでん)の庭で行われてきた。天皇が国の安寧や五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る儀式で、12年からは住まいの御所に場所を移して行われている。

 続いて、宮中三殿を拝礼する「歳旦(さいたん)祭」が行われる。近年は陛下の負担軽減のため、宮中祭祀(さいし)を担う掌典(しょうてん)職が代理を務め、陛下は御所で過ごされる。

 その後は、皇族方や首相、閣僚、衆参両院の議長、最高裁長官らのあいさつを受ける国事行為の「新年祝賀の儀」がある。

 一方、新天皇の即位に際しては長期にわたってさまざまな儀式や行事があるが、即位当日の実施が想定されている国事行為の儀式もある。昭和天皇の逝去により陛下は1989年1月7日に即位した。同じ日に、歴代天皇に伝わる三種の神器のうち剣と璽(じ)(まが玉)、印章の御璽(ぎょじ)と国璽を受け継ぐ「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」が行われている。

 ある宮内庁関係者は「皇位継承と元日行事のどちらが優先されるべきかという問題ではない。元日に即位した天皇が、四方拝や歳旦祭に加えて剣璽等承継の儀を行うことは現実的ではない」と話している。【高島博之】

 ◇見解理解できる

 所功・京都産業大名誉教授(日本法制文化史)の話 天皇陛下や皇室が、従来続いている行事や祭祀を重んじるのは当然であり、宮内庁の見解は理解できる。元日は重要な行事が目白押しで、皇位継承の儀式を加えることは困難だ。国民生活にとって元日の改元が都合がいいからと、それを前提に皇位継承の時期まで決めてしまうのは本末転倒だ。

 ◇「具体的検討はまだ」一問一答

 西村泰彦・宮内庁次長の記者会見での主なやりとりは次の通り。

 --2019年1月1日に(皇太子さまの)即位が検討されていることについて、宮内庁として考えは。

 ◆有識者会議で議論がなされている最中なので、制度に関わる議論に言及することは控えたいが、一般論として申し上げれば、1月1日というのは皇室にとって極めて重要な日。早朝から四方拝、歳旦祭の祭祀があり、国事行為に位置づけられている新年祝賀の儀が行われる。両陛下は終日、心を込めてお務めになっている。1月1日に譲位、即位に関する行事を設定するのは、なかなか難しいのではないかと考えている。

 --同じ日に二つのことをやるのは物理的に難しいのか。

 ◆皇室にとって極めて重要な日。そこにもう一つ大きな行事なりを設定するのは、やはり困難ではないかということです。

 --新年の1月1日以外の日ならありえるのか。

 ◆そこはまだ具体的に検討していない。1月1日に限定して、その日のご譲位なりご即位は難しいと。

 --官邸に伝える必要があるのでは。

 ◆質問があったので答えた。これから宮内庁としての考えは伝える。

 --陛下に(意向を)尋ねたのか。

 ◆宮内庁としての考え方です。

 --両陛下の意向を踏まえて(の見解)では。

 ◆1日は無理だということは、両陛下のご意向ということではない。

 --改元が元日にできないことにつながる。

 ◆そうですね。

 --12月31日に(即位の儀式を)済ませて、1日に改元するといった検討はあるのか。

 ◆まだ検討していない。その質問に答えるのは差し控えたい。

最終更新:1/18(水) 16:21

毎日新聞

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