架空請求の被害に遭っていたことが判明した三重大付属病院=津市で、井口慎太郎撮影
付属病院に架空請求する方法で
医療用機器卸大手の八神製作所(名古屋市中区)の社員だった男性(47)が2005年2月から昨年7月までの約11年間で三重大付属病院(津市)に納入した機器の付属品を架空請求する方法で、計約6296万円をだまし取っていたことが同社や大学への取材で分かった。同社は大学から昨年12月に取引停止8カ月の処分を受け、不正に得たとされる全額を返金した。
同大の財務担当者によると、架空請求していたのは医療用モニターなどの複数の機器用としていたメモリーカードの代金。「経年劣化で転送速度が落ちるので、交換が必要」と言われ、病院側はカードの更新費用を支払ってきた。16年度になって請求代金が前年度に比べ高額になったため、不審に思った病院側が調べたところ、対象機器にはメモリーカードを挿入する装置がなく、だまされていたことが分かったという。
男性は社内調査に対し「遊興費に使った」と詐取を認めた。同社は昨年9月、この男性を懲戒解雇し、10月には監督責任を問い八神徹社長らを減俸処分とした。樋田(といだ)佳彦専務は「優秀なベテランで、信頼して任せきっていた。手口も巧妙だった。深く反省し、二度と起きないようにしたい」と話した。
信用調査会社によると、同社は1本数円の注射器から数億円の高額医療機器までの医療用品を取り扱い、売上高は全国3位で中部地区でのシェアは3割に及ぶとされる。大学病院との取引も多い。三重大での不正発覚を受け、東京大や浜松医科大など他の国立大学でも取引停止処分が広がっている。【吉富裕倫】