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【野口裕之の軍事情勢】中国を警戒し始めた「太平洋国家フランス」の安全保障事情 「対中武器輸出」の蜜を棄て包囲網に加わる? 

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【野口裕之の軍事情勢】
中国を警戒し始めた「太平洋国家フランス」の安全保障事情 「対中武器輸出」の蜜を棄て包囲網に加わる? 

 南進する中国

 しかし、地域安定を望まぬ異分子が、ここでもチョッカイを出している。言わずと知れた中国である。 

 振り返ってみれば、中国は《環太平洋合同演習リムパック/1998年》→《西太平洋潜水艦救難訓練/2000年》→《コブラゴールド軍事演習/2002年》にオブザーバを派遣。2007年にはタスマン海で、豪州やニュージーランドと対テロ・捜索救難に関する海上共同訓練に参加した。明らかに南進している。この種の訓練はどちらかと言えば信頼醸成にウエートが置かれるが、参加各国に比べ中国は仮想敵国や周辺国の能力・装備を探る諜報活動に完全に傾斜している。

 中国はさらに「病院船外交」を展開中だ。2014年には、人民解放軍海軍の「病院船」がトンガ/バヌアツ/フィジー/パプア・ニューギニアに寄港して現地の人々を無料診察した。気持ち悪ほどの“善行”だが、全て中国と外交を結んだ国々で、地元の要人・住民を艦内に案内し、軍事力を見せつける「中国らしさ」も忘れなかった。米軍や豪軍の電波・通信情報の収集任務も兼務していると、多くの安全保障関係者が分析している。

 もっとも、「中国らしい」ミスも犯した。仏領ポリネシアでも無料診療を行ったのだ。軍事拠点に近付いた人民解放軍海軍を、フランス軍は間違いなく警戒したはずだ。しかも、FANCとFAPFの間に位置するフィジーはロシアに続き2015年、中国とも海軍建設などで軍事協定を締結した。軍事クーデターで政権が樹立された際、南太平洋の「盟主」たる豪州の経済制裁を受けても強気だったのは、中国が背後で強力に支えたためだ。

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