効果がないとは言わせない!コンテンツマーケティングROIの考え方
定期的にコンテンツを投下することで読者を獲得し、自社のファン層を形成していくコンテンツマーケティング。継続して行えば絶大な効果も期待できるだけに、注目しているという人も多いかもしれません。
しかし、コンテンツマーケティングは広告配信のような手法とは少しアプローチが異なるもの。そのため、費用対効果を測るのが難しく、効果を数字で表せないために上司や経営陣を説得するのに苦労している人も多いのではないでしょうか。今回は、そのような人に向けて、コンテンツマーケティングにおける目標設定とROI(投資対効果/Return on Investment)の測り方を考えていきます。

顧客獲得だけではない! コンテンツマーケティングの目的
コンテンツマーケティングを始めるにあたり、まず明確にすべきなのはその目的と目標です。
コンテンツマーケティングの目的を、以下の3つに分類しました。
1.SEO・トラフィック
SEOやトラフィック増加を目的としている場合は、記事を大量に配信してトラフィックを集める手法が取られています。目標設定の指標としては、検索順位・検索ヒット率・PV・UUなどです。
SEO対策では、人気となった記事をさらにブラッシュアップすることもありますが、基本的には質より量。
短期的には効果が出たとしても、長期的に運用し続けるには相当な体力が必要となるでしょう。
2.ブランド認知
1とは真逆の方向にあるのがブランド認知です。
ブランドが持つ世界観を伝えるために、美しい写真や動画の配信に比重がおかれています。
好意度も高い傾向にあるのでSNSでの反応も期待できるでしょう。
写真での表現に長けたInstagramや手軽に動画が公開できるYouTubeだけでなく、それらのコンテンツをFacebookやTwitterでも配信することで、より広くリーチすることができるという点も魅力です。
目標設定の指標としては、リーチ数・シェア数・滞在時間・直帰率・視聴完了率・エンゲージメント率などが挙げられます。
ユーザーとのエンゲージメントをねらえる一方で、制作にかかるコストと時間、ユーザーの反応を得るためのコンテンツ策定がハードルの高さを感じる点ではないでしょうか。
3.顧客獲得・売上
オウンドメディアを活用し、理解・興味・関心を深めるコンテンツを配信して自社サービスに誘導することが可能です。
コンテンツとして配信された記事は、広告に比べSNSで拡散される可能性もあります。
また、広告のように配信して終わりではなく常に記事がアーカイブされていくため、継続的な情報発信が可能となるのも魅力です。
人気記事になれば結果として検索で上位表示されることもあり、継続的な集客にも期待が寄せられていると言えるでしょう。
注意する点としては、自社サービスに偏った記事ばかりではユーザーの信頼も得にくくなるため、自社以外のサービスも広く取り扱うなど、中長期的にファン層を醸成していく姿勢が必要です。そのため、効果が短期的には実感しにくいのが課題とされます。
こういったことからも、コンテンツマーケティングROIを測ることが重要となるのです。

コンテンツマーケティングの意義を見える化するROI
コンテンツマーケティングを実践するうえで、ROIを測ることが重要なのはなぜでしょうか。
全ての企業にとってマーケティングとは、あくまで企業の経済活動の一環として行われるものです。そのため、プロモーションや広告の出稿にどれだけの費用がかかるか、どれだけの利益を生み出せるのかを事前に算出し、費用対効果を踏まえた施策を実践する必要があります。
こうした考え方はコンテンツマーケティングにおいても変わることはありません。コンテンツの制作やサイトの運営にかかる費用が、マーケティング活動を通して得られる利益を上回ってしまっては本末転倒です。
ここで問題なのは、コンテンツマーケティングの費用対効果をどうやって測るのかということです。
コンテンツマーケティングでは、ユーザーが求めるコンテンツを自社サイトやブログなどに掲載し、地道にファンを増やしていくことになります。広告のように即効性のある施策ではなく、また商品やサービスを直接的に売ることができるわけでもないため、効果が数字として見えにくいというデメリットがあります。こうした理由から、実践したくても実施に踏み切れなかった経験がある人もいるのではないでしょうか。
良質なコンテンツを蓄積し、読者を見込み客へと育成するには時間がかかります。そのため、コンテンツマーケティングが効果のある施策であることを上司や経営陣に数字で示し、じっくりと時間をかけて取り組める環境を整える必要があるのです。
コンテンツマーケティングのROIは、このように継続的に施策を実践していくうえで欠かせないものと言えるでしょう。
ROIはどうやって計測する?
それでは、具体的にコンテンツマーケティングのROIはどうやって算出するのでしょうか。まずは一般的なマーケティング施策のROIの算出式を見てみましょう。

例1では600万円と例2の4倍もの利益を生み出していますが、ROI自体は20%と高い値ではありません。効率面だけで判断すると、例2のほうが優秀な施策であると判断できます。
上記の例では計算式を分かりやすいシンプルなものにしましたが、実際は一定期間に発生したコストや利益を合わせて算出することになります。コンテンツマーケティングに則した指標でROIを算出してみましょう。
①施策にかかる「コスト」
・初期費用(サイト制作や体制構築など)
・毎月発生する運用費用(サイト運営費や記事制作費、サーバー費用など)
②得られた「利益」
・売上(コンテンツ経由で獲得した売上を算出)
・会員獲得(コンテンツ経由で獲得した会員数×平均CVR)
・リーチ数(コンテンツのリーチ数×配信面の平均imp単価)
・エンゲージメント数((シェア数+コメント数+いいね数)×配信面の平均CPC)
上記の算出方法はあくまでも一例となり、そもそもエンゲージメントを金額換算することが間違いといった意見も少なくありません。他にも、社内のリソースを活用した場合の費用換算はどうするのか…といった細かい費用の算出はあると思いますが、重要なのはコンテンツマーケティングで得た売上以外の効果を費用換算することで「利益」として見える形にすることです。
上記は既に実施している場合に取れる数値ですが、これからコンテンツマーケティングを始めようとする場合には、下記のような想定条件を設定して利益を算出します。

上記の条件で、コンテンツマーケティングに取り組んだ際の24ヶ月目までの延べコスト・利益と、24ヶ月目までのROI(単月・累計)をグラフに表すと下図のようになります。
・上記の条件で、コンテンツマーケティングに取り組んだ際の25ヶ月目までの延べコスト・利益

・上記の条件で、コンテンツマーケティングに取り組んだ際の25ヶ月目までのROI(単月・累計)

上図の2つのグラフを見ると、コンテンツマーケティングを始めた当初はコストが利益を上回っているものの、9ヶ月目には単月で算出しているROIが黒字に転換しています。18ヶ月目以降には累計でも黒字を出しており、その後にも期待ができると考えられます。
コンテンツマーケティングは、始めた当初は効果が現れにくいことや、サイトの制作費など初期費用がかかるケースもあり、短期的なROIは決して高いとは言えません。また、コンテンツの質や競合企業の参入などさまざまな要因もあり、上図のグラフのように利益が順調に推移していくとも言い切れません。ですが、こういった指標を持つことで、コンテンツマーケティングにかけるべき費用を明示することが重要ではないでしょうか。
事例から見る、コンテンツマーケティング成功のポイント
コンテンツマーケティングを成功に導くためには、読者に受け入れられる質の高いコンテンツを投下していく必要があります。具体的には、どのようなコンテンツを制作すればいいのでしょうか。成功事例から、そのポイントを探ってみましょう。

日本全国に18ヶ所の拠点を持つ弁護士法人ベリーベスト法律事務所では、離婚相談や債務整理といった問題に対応する法律的な知識をコンテンツとして法律情報サイト「LEGAL MALL」に公開しています。
そのポイントは、何と言ってもユーザーにとっての価値を追求するというコンテンツの制作姿勢。同社によると、法律相談に来るお客様のほとんどは、弁護士に依頼するまでもなく、正しい法律知識があれば自分で解決できるケースで相談に来るのだとか。そんなユーザーのために、正しい法律知識をわかりやすく提供することが、自社の社会貢献にもつながるという方針のもと、コンテンツの質にこだわって制作を続けています。
こうした姿勢がユーザーに受け入れられたのか、サイト経由での問い合わせ数は月間1100件を超えるほど。徹底的にユーザーの立場に立って制作されるコンテンツが、根強いファン層を生み出しているのです。

もう一例、ご紹介したいのがメガネのECサイトを運営するOh My Glassesのコンテンツ「OMG PRESS」です。
メガネは通常、実店舗に行き、実際にフレームを試してみたり視力を測定してもらい購入するものです。ひとつひとつ、その人に合わせてオーダーメイドされるものだけに、「ネット通販で購入するなんてありえない」と思っている人も多いのではないでしょうか。
OMG PRESSの事例が秀逸なのは、こうした難しい課題を自社メディアのコンテンツによって解決している点にあります。たとえば「通販でメガネを買う際に気になる点:度数情報の取得」「小顔、面長、丸顔など各顔の形・サイズに適したメガネの選び方とは?」など、店舗に行かずにメガネを購入するための具体的な情報を提供。さらに、自社サービス以外の紹介から話題のテレビ番組などで使用されている他社アイテムを紹介するなど、メガネをフックにサイトを訪れる様々な読者に向けた情報が網羅されています。
こうしたコンテンツづくりの結果、Facebookのファン数は2016年12月時点でなんと20,000人超えを達成しています。自社の課題を解決し、さらにコンバージョンにつなげることに成功した秀逸な事例といえるでしょう。
良質なコンテンツを生み出すための環境づくりが重要!
コンテンツマーケティングは単純に売り上げや問い合わせ数といったコンバージョンを改善するだけでなく、自社の抱える問題を解決し、イメージアップにも役立てられるなど、さまざまなアプローチを実現する優秀なマーケティング手法のひとつといえるでしょう。
ただし、コンテンツマーケティングを成功させるためには、今回ご紹介した事例のような良質なコンテンツが不可欠です。「とにかく記事を書けばいい」といった意識で片手間にコンテンツを制作しても、それが受け入れられることは簡単ではありません。
ユーザーに受け入れられるためには、どのような情報が求められているのかを詳細にリサーチし、それをしっかりとコンテンツに落とし込むための体制づくりが欠かせません。場合によっては、新たに編集チームを編成し、新たにサイトを立ち上げるなどの初期費用が発生することもあります。
そして、繰り返しになりますが、決して即効性のある施策とはいえないコンテンツマーケティングで効果を生むためには、良質なコンテンツを蓄積し、読者を見込み客へと育成する長期的取り組みが必要です。
長期的な取組みを続けるためにも、マーケティングROIで算出した指標に則して活動し、実施した効果を明示していくことが重要となるのではないでしょうか。





