活動時間がやたらと長いブラック部活の実態は、顧問として長時間労働を強いられる教員だけでなく、子どもの健全な成長を危惧する保護者たちの間にも、問題視する声は少なくないようです。忙しすぎる練習スケジュールの再考を中学校に強く求め続け、ついに改善させた父親に、その「勝因」を聞きました。(朝日新聞編集委員・中小路徹)
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「この部活動は長すぎる!」。父親は憤りを収められませんでした。中学生になった長女は、ソフトテニス部に入ると、帰宅後ぐったりとして寝てしまい、深夜に起きて宿題をこなす生活となっていたのです。外食に誘っても「疲れているから家で食べたい」と断られる。父親は立ち上がりました。
40代会社員のこの父親は「スポーツは健全な体をつくるためにあるのに、むしろ心身を壊してしまいそうでした」と振り返ります。
東京都の公立中に通う長女の部活動の休日は、月1日程度しかありませんでした。週末や祝日も朝8時に家を出て、夕方6時の帰宅が当たり前。もちろん、家族が一緒に過ごす時間はありません。「まじめで頑張るタイプの娘は、そういうものだと学校で刷り込まれていました」
父親が実態を探ると、スケジュールをつくっているのは外部指導者でした。
「その競技を実業団でもやっていた人。この部の外部指導者を長くやってきたこともあって全権を握り、練習日を決めるはずの顧問や学校側との力関係は、逆転していました」
確かに技術指導は優れている。地区大会を突破して都大会に出ることもあり、学校側もその指導で好成績を残せばPRにつながると考えていたところが見受けられました。しかし、試合に負けると、この指導者は「負けるのは努力と練習時間が足りないからだ」と生徒たちに言い、練習は厳しくなるばかりです。
他の保護者の考えも聞き、父親は学校に改善を求めました。「部活が『本業』になっている。おかしいのでは?」
しかし、顧問も管理職もはぐらかすような態度。学校というところは、都合の悪いことには、一筋縄ではいかない相手です。それを実感した父親は、理論武装を固めました。
調べ上げたのは、国の提言や教育委員会のガイドライン。1997年に文部省(現文部科学省)の有識者会議が「週に2日以上」「大会参加などで土日に活動する場合は他の曜日で確保」など、中学校の部活動における休養日の設定例を出していました。
兵庫などいくつかの県教委が、家族で過ごす時間などを保障する練習時間の設定を手引として出していることも調べました。
「ガイドラインを超える練習は不適切では」「練習時間が社会通念を外れているのでは」……。繰り返し、学校側に迫ります。
数カ月後、学校側は「負けました」と、父親の意見に折れます。練習日程は改善され、今は平日1日と土日のどちらかが休養日になり、週末の練習も半日に。長女は部活以外の友人ともカラオケや買い物を楽しむ“健全な”生活を送るようになりました。
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