The Economist

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

先進国、デフレ不安緩和の兆し

(1/2ページ)
2017/1/17 2:00
保存
印刷
その他

The Economist

 物価の上昇を極度に恐れるドイツが2017年の第1週にインフレが進んだことを発表した。このことは多くを物語っている。16年12月の消費者物価上昇率は前年同月に比べ1.7%上昇し、前月の同0.8%増から跳ね上がった。この2年間は物価の上昇圧力が非常に低かったが、今年は先進国全体で物価上昇率が回復する兆しが見えてきた。

昨年12月、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国が15年ぶりに協調減産で合意したことで、原油価格が上昇した=ロイター
画像の拡大

昨年12月、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国が15年ぶりに協調減産で合意したことで、原油価格が上昇した=ロイター

 その大きな理由は原油価格の上昇だ。16年の初めの数カ月間は1バレル30ドルを割り込んだが、最近は50ドル超まで戻している。変動の大きな項目や一時要因を除く基調的なインフレ率も上昇しそうだ。これは朗報と言える。17年は物価が過度に上がるのではなく、デフレ不安が緩和されることになりそうだ。

 なぜそうなるのかを理解するには、先進国でインフレが進む原動力となる要因を考えてみるといい。それは輸入品の価格、国内経済における余剰生産能力、インフレ予測の3点だ。

■中国の供給過剰、縮小傾向に

 まず輸入品の価格上昇をみてみよう。1年前は総需要の減少と(資源や食料などの)商品や工業製品の供給過剰で物価が世界的に下落していた。中国経済は大きく揺らいだ。新興国は全般的に経済が低迷し、ブラジルとロシアは深刻な景気後退に陥っていた。

 今、状況は以前より明るく見える。新興国の中にはまだ問題がある地域も多いが、安定に向かっている国も出てきた。中国の生産者物価は54カ月連続で下落した後、ついに上昇に転じ、16年12月の卸売物価指数が前年同月比で5.5%上昇した。中国の供給過剰はまだ莫大ではあるが、縮小傾向にある。アジアや先進諸国における購買担当者調査の楽観的な結果をみれば、需要環境が好転していることが分かる。商品価格が回復してきたことにも反映している。

 つまり先進国は世界中で始まった物価の上昇を以前よりも多く国内に取り込むようになってきている。国内物価への影響がどれだけあるかは為替相場によってくる。米国では基調的なインフレ率が米連邦準備理事会(FRB)が目標にする2%に近づき、ドルが上昇している。一方、日本やユーロ圏はインフレ率が低く、円とユーロが下落しているのだ。

■米で失業率低下、賃金2.9%上昇

 物価上昇に大きな影響を及ぼす2つ目の要因は、国内の余剰生産能力だ。労働力の余剰を測る指標である失業率が(生産能力をみる上でも)便利な尺度になる。失業率が4.7%の米国では生産設備はフル稼働に近い。平均賃金は16年12月に前年同月比で2.9%上昇し、09年以来最大の伸びとなった。生産性の向上が1%程度で推移していると考えると、単位労働コストが2%上がれば、賃金が3%前後上昇するのは妥当だ。

 他の先進国では、見通しが米国ほどは良くない。ユーロ圏の労働市場はより硬直的だ。ユーロ圏の余剰能力はより大きく、失業率は9.8%に及ぶ。イタリアやスペインなど南欧の主要国は、大きな余剰生産能力を抱えている。このため欧州中央銀行(ECB)が掲げるインフレ率目標の2%に近い水準に戻すためには、特にドイツのインフレ率が2%を大きく上回る必要がある。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 次へ
保存
印刷
その他

電子版トップビジネスリーダートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる、業界がみえる。非上場企業を含む4200社、67業界のニュースとデータを網羅

【PR】

The Economist 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

昨年12月、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国が15年ぶりに協調減産で合意したことで、原油価格が上昇した=ロイター

ロイター

先進国、デフレ不安緩和の兆し

 物価の上昇を極度に恐れるドイツが2017年の第1週にインフレが進んだことを発表した。このことは多くを物語っている。16年12月の消費者物価上昇率は前年同月に比べ1.7%上昇し、前月の同0.8%増から…続き (1/17)

アップルの「シリ」をはじめ、音声アシスタント機能はスマホでも急速に使われている=AP

Alexander Heinl/picture-alliance

「話す端末」で変わる未来

 十分に発達した技術は魔法と見分けがつかない――。英国のSF作家アーサー・クラークはこう指摘した。にわかに出現したコンピューターの音声技術はこの指摘通りだ。まさに魔法をかける時のように空に向かって二言…続き (1/10)

2017年初めまでにインドの全成人が指紋や虹彩をスキャンし「アドハー」登録を終える見通し=ロイター

ロイター

ネットインフラ、インドを拓く

 圧倒的な安さで人気のインドの携帯通信サービス「ジオ」に加入するには2つの方法がある。一つは様々な書類に署名して業者に提出し「顧客確認」が終わるのを数日から数週間、忍耐強く待つ方法。もう一つは幅2.5…続き (2016/12/27)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

今週の予定 (日付クリックでスケジュール表示)

<1/16の予定>
  • 【国内】
  • 2016年12月の企業物価指数(日銀、8:50)
  • 16年11月の機械受注統計(内閣府、8:50)
  • 黒田日銀総裁が支店長会議であいさつ(9:30ごろ)
  • 1月のQUICK株式月次調査(11:00)
  • 16年11月の第3次産業活動指数(経産省、13:30)
  • 16年11月の特定サービス産業動態統計(経産省、13:30)
  • 1月の日銀地域経済報告(さくらリポート、14:00)
  • 【海外】
  • 16年12月のインド卸売物価指数(WPI)
  • 16年11月のユーロ圏貿易収支(19:00)
  • キング牧師誕生日の祝日で米市場休場
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/17の予定>
  • 【国内】
  • 閣議
  • 経団連が春季労使交渉の指針
  • 20年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 16年11月の鉱工業生産指数確報(経産省、13:30)
  • 1月のESPフォーキャスト調査(日本経済研究センター、15:00)
  • 16年12月の投資信託概況(投信協会)
  • 16年の訪日外国人客数(日本政府観光局)
  • 16年の訪日外国人消費動向調査(観光庁)
  • 【海外】
  • 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議、スイス東部ダボスで20日まで)
  • 16年12月の英消費者物価指数(CPI、18:30)
  • 1月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測指数(19:30)
  • 1月の米ニューヨーク連銀製造業景況指数(22:30)
  • ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事が金融・財政政策について講演(18日0:00)
  • 16年10~12月期決算=ユナイテッドヘルス・グループ、モルガン・スタンレー
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/18の予定>
  • 【国内】
  • 1年物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 中西地銀協会長が記者会見(14:30)
  • 稲野日証協会長の記者会見(14:30)
  • 【海外】
  • 16年12月のマレーシア消費者物価指数(CPI)
  • 16年9~11月期の英失業率(18:30)
  • 米次期商務長官の公聴会
  • 米リテール・エコノミスト・ゴールドマン・サックス・チェーンストア売上高(週間)
  • 16年12月の米消費者物価指数(CPI、22:30)
  • 16年12月の米鉱工業生産(23:15)
  • 16年12月の米設備稼働率
  • カナダ中銀が政策金利を発表(19日0:00)
  • 1月の全米住宅建設業協会(NAHB)住宅市場指数(19日0:00)
  • 米地区連銀経済報告(ベージュブック、19日4:00)
  • イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が講演(19日5:00)
  • 16年11月の対米証券投資(19日6:00)
  • 16年10~12月期決算=シティグループ、ゴールドマン・サックス、ネットフリックス
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/19の予定>
  • 1月のQUICK短観(8:30)
  • 対外・対内証券売買契約(週間、財務省、8:50)
  • 3カ月物国庫短期証券の入札(財務省、10:20)
  • 5年物国債の入札(財務省、10:30)
  • 16年12月と16年の首都圏・近畿圏マンション市場動向(不動産経済研究所、13:00)
  • 国部全銀協会長が記者会見(15:00)
  • 三村日商会頭の記者会見(14:30)
  • マレーシア中央銀行が政策金利を発表
  • 16年12月の豪雇用統計(9:30)
  • 欧州中央銀行(ECB)理事会の結果発表(21:45)
  • ドラギECB総裁が記者会見(22:30)
  • 16年12月の米住宅着工件数(22:30)
  • 1月の米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(22:30)
  • イエレンFRB議長が講演(20日10:00)
  • 海外16年10~12月期決算=IBM、アメリカン・エキスプレス
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

<1/20の予定>
  • 閣議
  • 日銀金融政策決定会合の議事録公表(2006年7~12月開催分、8:50)
  • 16年11月の毎月勤労統計確報(厚労省、9:00)
  • 中曽日銀副総裁が国際銀行協会で講演(都内、12:40)
  • 進藤鉄連会長の記者会見(13:00)
  • 16年12月の食品スーパー売上高(日本スーパーマーケット協会など、13:00)
  • 16年12月と16年の全国百貨店売上高(日本百貨店協会、14:30)
  • 16年12月と16年の主要コンビニエンスストア売上高(日本フランチャイズチェーン協会、16:00)
  • 16年10~12月期の中国国内総生産(GDP、11:00)
  • 16年12月の中国工業生産高(11:00)
  • 16年12月の中国小売売上高(11:00)
  • 16年1~12月の中国固定資産投資(11:00)
  • 16年1~12月の中国不動産開発投資(11:00)
  • 16年12月の英小売売上高(18:30)
  • トランプ氏の米大統領就任式
  • 海外16年10~12月期決算=ゼネラル・エレクトリック(GE)
  • (注)時間は日本時間

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

[PR]