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豊洲市場 最悪の事態も考える時

 最大で基準値の79倍のベンゼンが検出されたというデータには驚く。

     豊洲市場(東京都江東区)の地下水のモニタリング調査の結果だ。他にも、基準値の3・8倍のヒ素や不検出であるべきシアン化合物も検出された。しかも、201カ所の調査地点のうち3分の1以上の72カ所で有害物質が基準値を上回った。

     豊洲市場は地下水を飲用として利用しない。だが、ベンゼンは気化しやすく、吸い込み続ければがんを発症する恐れがある。ヒ素やシアン化合物も、体内に取り込むと知覚障害や急性中毒症状を起こす。

     モニタリング調査は9回目の今回が最終の予定だったが、都は外部有識者による「専門家会議」での再調査を決めた。科学的な分析による原因の解明をまずは急ぐべきだ。

     不可解なのは、ベンゼンとヒ素が若干基準値を上回った8回目以外、これまで基準値内だったのに、けた違いの数値が突然出たことだ。昨年10月、地下空間にたまった水を排出する「地下水管理システム」が稼働し、水圧の変化などで有害物質の濃度が上昇したとの推測が出ている。

     再調査の結果は3月にも公表される。一過性の数値と評価され、適切な対応が可能ならば前に進むことは可能かもしれない。

     だが、ことは簡単ではないだろう。生鮮食料品を扱う市場にとって、安全性が担保されることは絶対条件だ。今になってこの数値の有害物質が検出されたことで、豊洲市場への信頼は大きく傷ついた。信頼を取り戻すのは容易ではない。

     再調査の結果次第では、追加的な汚染地下水対策が必要になるなど、さらに状況が悪化する可能性も否定できない。その場合、コストも時間もかかる。その後に実施する環境影響評価にどのくらいの時間がかかるのかも不透明だ。

     一番大変なのは市場業者だ。移転をめぐる判断が昨年変更され、さらに今回不透明になったことで、先が見通せない状況に拍車がかかった。都への不信感も増している。

     都は豊洲市場に先行投資した業者に対し、今月中にも損失補償の枠組みを決める方針だ。だが、移転について早期に方針が示されなければ、業者は今後の事業展開を決められない。まさに死活問題だろう。

     築地市場(中央区)から豊洲市場への移転について、小池百合子知事は今夏にも可否の判断をし、早ければ年内の移転を予定していた。

     今回のモニタリングの結果を受け、その判断はずれ込む公算が大きいという。だが、移転判断が遅れるほど悪影響は深刻化する。豊洲への移転断念という最悪の事態も想定し対応を練るべき時だ。

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