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消える白線、補修予算不足 愛知の道路6割手つかず

更新基準年数を超え、白線が見にくくなった横断歩道=名古屋市千種区で

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 愛知県内の公道にある横断歩道や停止線などの道路標示の六割が、県公安委員会の更新基準である四年を超えても引き直されないままになっていることが分かった。昨年の県内の交通事故死者数は二百十二人に上り、十四年連続で全国ワースト。道路施設の整備は急務だが、維持管理には多額の費用がかかり、予算が慢性的に不足していることが背景にある。このため場所によっては、薄れてほとんど見えない標示も出ている。

 名古屋市千種区の若宮大通(通称・百メートル道路)にかかる横断歩道。ところどころが消えかかり、見にくくなった白線の上を自転車や歩行者が頻繁に行き交う。二〇〇八年一月に引き直されて以来、丸九年が経過しており、予定より五年遅れで三月までに引き直されることになった。

 センターラインなどの白線や黄線のほか、進行方向を示す矢印、最高速度など約四十種類ある道路標示のうち、愛知県警は横断歩道の引き直しを最も優先的に進めている。例年、歩行者の死亡事故は多発しており、昨年も県内の交通事故死者のうち、歩行者が全体の約四割の八十二人を占めたためだ。県警の担当者は「歩行者の安全確保に横断歩道は重要」と説明する。

 県内の道路の総延長は約五万キロで、北海道、茨城に次いで全国三位。横断歩道八万三千本は、東京都の十万五千本に次いで全国で二番目に多く、維持管理には毎年多額の整備費がかかっているのが現状という。県は道路標示を引き直す予算を一五年度から十一億円超に増額し、横断歩道については一八年度末までの四年間で、県内のすべての横断歩道を引き直す計画だ。

 その一方で、横断歩道以外の停止線やセンターラインなどは、予算が上積みされず、引き直しが後回しになっている。愛知県警によると、県内の道路標示を十五センチ幅の直線に換算すると、総延長は二万六千六百キロ(一六年三月末)。このうち更新基準の四年を超えても引き直しがされていない標示の距離は一万六千キロで、全体の約六割に上る。

 道路標示の管理を担当する県警交通規制課の森厚憲次長は「信号機や道路標識の更新もあり、限られた予算の中で優先順位を付けながら効率的に整備していくしかない」と説明。県警交通事故対策室の飯田悟室長は「事故防止に道路標示は欠かせないが、それだけに頼ることなく、取り締まりや啓発を徹底していく」と話している。

◆岐阜、三重も補修漏れ多く ともに年限規定なし

 横断歩道やセンターラインなどの道路標示について、岐阜県は更新期間は定めておらず、摩耗が激しい場所を調べ、重点的に予算配分している。二〇一五年度は一万三千五百七十二カ所の引き直しに二億五千百七十五万円を費やした。ただ、愛知と同様、予算の制約があり「必要な場所すべてを更新できているわけではない」(県警交通規制課)という。

 三重県も更新年数は定めていない。一五年度、白線が薄くなった横断歩道は千七百二十七本に上ったものの、引き直しができたのは半数以下の七百七十八本にとどまった。一七年度は、横断歩道の更新費用として、一六年度の四倍近い八千六百万円を予算要求する方針だ。

 (市川泰之)

 

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