中国は、各チームから1試合に出場できる外国人サッカー選手の数を4人から3人に減らした。国内選手の育成を促し、クラブチームの過度な支出を抑制する狙いがある。中国のクラブチームによる多額の支出は世界の移籍市場をゆがめ、資本流出の懸念を高めている。
中国のスポーツ当局は今月、外国人選手に対する支出を減らす対策を講じると警告した。中国のプロサッカー1部リーグ「中国スーパーリーグ」のクラブチームがこの2年間、かつてない勢いで外国人選手の獲得に乗り出していることを受けた措置だ。
外国人選手の獲得は、数十億ドル規模で急増している中国サッカーへの投資の一端にすぎない。中国企業は、欧州トップリーグのクラブチームや放映権を取り扱う企業の買収を行ったりもしている。習近平国家主席が中国を尊敬されるサッカー大国に変える計画を打ち出したことがこの背景にはある。
今回の外国人選手の人数制限は、海外買収やその他の形での資本流出を広範囲に取り締まる中で実施された。人民元に下落圧力がかかるのを防ぐことが狙いだ。
3月のシーズン開幕を控え、移籍期間中に成立した契約の中には、既に高かった(金額の)記録をさらに打ち破ったものもいくつかあった。
上海上港はブラジル人ミッドフィルダーのオスカルを(イングランド・プレミアリーグの)チェルシーから6300万ドルで獲得した。また、ライバルチームの上海緑地申花はアルゼンチンのストライカー、カルロス・テベスと2年契約を結んだ。テベス選手の報酬はシーズン当たり2000万ドル以上と報じられている。
■国際市場を「壊している」
イングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーのマウリシオ・ポチェッティーノ監督は今週、中国のクラブチームはとんでもない額を払うことでサッカー選手の国際市場を「壊している」ようだと警告した。 中国サッカー協会が発表した規定は、各チームが1試合に出場させられる外国人選手の人数を3人に制限し、各チームに23歳未満の中国人選手を最低1人は出場させることを義務付けている。同協会はこの措置が「中国サッカー全体のレベル向上と国内の中国人選手のトレーニングの強化」につながると同時に、「中国代表チームのレベルアップと、プロリーグが健全で安定した、持続可能な発展を続ける」のに役立つとしている。
また「度を越した投資や、国内外の選手の移籍金や報酬で高額が支払われることを抑制する」ために、さらなる対策を講じることも明らかにした。対策案には、クラブへの新たな会計基準の導入や、第三者による会計監査、違法な契約金の取り締まりなどがある。
上海で中国サッカーに特化したウェブサイトを運営するキャメロン・ウィルソン氏は、新たな規制について「莫大な資金がオスカルなどの選手に惜しみなく注がれていることを受けたもの」であり「中国マネーがこうしておおっぴらに中国から出ている」という資金流出に対する懸念の表れだとみる。
同氏は世界の移籍市場への影響は限定的だと言う。中国ではこれまでも各チーム各試合の外国人の出場は4人までで、そのうちの1人はアジア人でなければならなかったからだ。試合当日の外国人の選手登録はまだ5人まで可能だが、実際にピッチに立てるのは3人のみだ。
同氏は、今回の規制強化で、中国政府によるスーパーリーグへの統制の度合いが浮き彫りになったとも述べた。
By Ben Bland
(2017年1月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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