■第3章「親と向き合う」(6)

 じゅうたんの上には、蒸れた臭いを放つ洗濯物が山積みになっている。その横には猫のふんがついた毛布が転がり、ゴキブリが畳の上をはい回っていた。

 「お母さん、その後どうしていますか?」

 午前11時。虐待対応チームのワーカー(児童福祉司)になって4年目のケイコ(仮名)は何事もないかのように、にこやかに声をかけて部屋に入った。父親は仕事に出て、母親が洗濯物をたたんでいたという。

 ネグレクト(育児放棄)により安全が確保されていないとして、児童相談所(児相)が少し前に子どもを職権で保護した家庭だ。保護したとき、子どもの頭はシラミだらけだった。

 両親は子どもに愛情がないわけではないのだが、知的障害などがある。その中で努力し、生活環境に一定の改善が見られたことから、児相は2週間ほど前に子どもを家庭に戻した。その際、「子どもの安全を守る」「衛生面や栄養など適切な養育をする」「児相も含めた援助機関などとの関わりを持つ」などの約束を交わした。

 ネグレクト(育児放棄)の家庭では、家の中がゴミ屋敷のようになって不衛生極まりないことも珍しくない。そんな親たちをワーカーらが支援することで、何とか子どもたちが親元で暮らせるようになるケースもある。

 訪問の前、ケイコは子どもが通…

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