【1月16日 時事通信社】トランプ次期米大統領が英紙などのインタビューで、対ロシア制裁解除と引き換えに米ロの核兵器削減に合意できる可能性に言及したことは、既存の国際秩序よりも米国に有利な「取引」を重視するトランプ氏の価値観を反映したものだ。こうした「米国第一主義」の方針に対し、友好国間では「米国の信頼性が著しく低下する」(西側外交当局者)との懸念も出ている。

 トランプ氏はこれまでも、「もしロシアが(対テロ戦などで)本当に役に立てば、なぜ制裁を科すのか」(米紙)と、制裁解除の可能性にたびたび言及している。ただ、欧米の対ロシア経済制裁は、2014年のロシアによるクリミア半島編入やウクライナへの軍事介入を受けた対抗措置で、核軍縮交渉や過激派組織「イスラム国」(IS)とは直接関係がない。

 仮にトランプ次期政権がウクライナ情勢の進展とは別に制裁解除に踏み切れば、「力による一方的な現状の変更」を容認することになる。さらに制裁への協力を求めてきた欧州に対しはしごを外すことにもなる。

 トランプ氏はインタビューで、欧州連合(EU)の将来に悲観的な立場を示し、北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れ」と酷評。トランプ氏が同盟国に一層の負担を求める考えを選挙戦中から変えていないことを浮き彫りにした。(c)時事通信社