【ロンドン=黄田和宏】英国のメイ首相は17日の欧州連合(EU)離脱の基本方針を示す演説で、EU単一市場から完全に離脱する用意があると表明し、12の優先事項を提示する見通しだ。EUと部分的な関係を続けるよりも、明確に離脱した上で、新たな関係を築くことを方針に掲げてEUとの交渉に臨む考え。単一市場へのアクセスよりも、移民制限や司法権の独立など英国の権限回復を優先する。
英主要メディアが16日、電子版などで演説要旨を一斉に報じた。メイ氏は英国時間17日昼(日本時間同夜)にロンドン市内で演説し、EU離脱の方針を示す予定だ。演説では「独立し、自ら統治し、グローバルな英国と、我々の友人で同盟関係にあるEUとの間に、我々は新しく対等なパートナーシップを求める」と述べるとみられる。
今後のEUとの関係については「部分的なEUへの加盟や準加盟国ではない」とし、加盟国の間でモノやサービスなどを自由に取引できるEUの単一市場から離脱する用意があることを明確にするもよう。同盟国の間で関税なしに取引できる関税同盟から脱退するかどうかも焦点で、離脱交渉に向けた英国の立場を明確にする方針だ。
メイ氏は「すべての過程で可能な限りの確実性と明瞭さを示す」とともに「より強く、より公正にし、よりグローバルな英国を築く」という交渉に向けた4つの理念を掲げる。これに基づき、離脱交渉の12の優先事項を提示する考えで、具体的な内訳を17日の演説で明らかにする見通し。
優先事項には国境を管理する権限の回復や欧州裁判所の司法権からの独立、自由貿易協定の締結などが含まれるとみられる。
英国がEUから完全離脱するとの見方が強まった16日、東京外国為替市場では英ポンドが対ドルで一時2%近く急落。1ポンド=1.19ドル台後半まで下げた。