日本列島で地震の活動がやむことはない。昨年だけでも4月に熊本地震、10月には鳥取県で震度6弱の地震などが起きた。避難所生活が長引いた人は少なくなかった。被災者の暮らしの再建には安定した住まいの確保が何より重要である。
きょうで発生から22年たった阪神大震災では約64万棟の住宅が被害を受け、ピーク時に約31万人が避難所にあふれた。災害で奪われた生活基盤を回復するための公的支援が求められ、議員立法で1998年に成立したのが被災者生活再建支援法だ。
当初の支給額は最大100万円で住宅の建て替えに使えなかった。現在支給額は最大300万円に増え、2004年の中越地震などをきっかけに使途の制限は撤廃され、手続きも簡素化された。
だが、被災者や被災自治体から改善を求める声が絶えない。支給対象は原則として全壊か、大規模補修をしないと住めない半壊だ。被害認定は市町村が判断するが、大規模半壊と半壊との線引きは難しい。
鳥取県など各地の自治体は独自の助成制度を整備し、半壊世帯にも支給するところがある。熊本地震では一部損壊世帯にも補助金を出して救済する自治体があった。
毎日新聞が東日本大震災と関東・東北豪雨(15年)、熊本地震の被災自治体に実施したアンケートでも、半壊世帯まで対象にすべきだという意見が最も多かった。過去の災害では、半壊でも修理費用が500万円を超えたケースもある。
財源に限りはあるとはいえ、住宅再建が進まなければ被災地の復興はおぼつかない。半壊であっても損害の実態に応じて柔軟に救済できるような制度を検討してはどうか。
昨年12月の新潟県糸魚川市の大火に対し、国は支援法適用を決めた。強風による延焼で被害が広がったことが風害に当たると判断した。こうした柔軟な運用を今後も望みたい。
巨大地震の備えには住宅の耐震化も重要だ。阪神大震災の犠牲者の約8割が建物の倒壊による圧死や窒息死だった。南海トラフ地震や首都直下地震では耐震化率を100%にすれば大幅に被害を減らすことができるとされる。
全国の住宅耐震化率は約82%に上るが、防災拠点の自治体庁舎の耐震化率は約75%と遅れている。熊本地震では壁が落ちるなどして閉鎖した指定避難所があった。耐震化を急がねばならない。
また、地震保険の世帯加入率は約30%にとどまる。阪神大震災を経験した兵庫県の住宅再建共済制度の加入率も9・5%と低調だ。
「公助」だけではなく、生命と財産を自ら守る「自助」の意識も高めていきたい。