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大学入試改革 制度の安定性が重要だ

 大学入試センター試験が実施され、今年も受験シーズンたけなわとなった。そして今正念場を迎えようとしているのは、センター試験に代わって2020年度から登場する新共通テストの設計である。

     この「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)について文部科学省は、17年度初めには具体的な実施方針を示すとしてきた。しかし、大学や高校側には異論や戸惑いもあり、安定的な実施に必要な共通認識を築くにはなお時間がかかりそうだ。

     たとえば、新テストの目玉の一つである英語試験の民間検定試験などへの委託について、本紙が全国の国立大を対象に賛否を問うアンケートを実施したところ、賛成を表明したのは全体の3割程度にとどまった。

     民間検定の高額な受検料負担が生じる問題や、高校の指導が資格試験対策になりかねないという懸念など、意見は多様だ。制度が複雑化・煩雑化するという批判もあった。

     またもう一つの目玉、国語の記述式問題導入については、文科省が基本的な80字以内の短文と、それより難度の高い長文の2種類を用意、受験生は志望校の指定に従って片方か両方かを選択する提案をした。

     一方、国立大学協会は、新テストの短文は全受験生に課すほか、長文の記述式問題は基本的に2次(個別)試験で各大学が実施したい考えだ。単独の作問が難しい大学は複数校で協力するなど、いくつかのパターンを挙げている。

     採点や公正性の確保、具体的な問題例示など宿題は山積しているが、安定して継続する制度は、仕組みができるだけ平明でわかりやすいものであることが肝要だ。

     この改革の論議と制度設計の作業は、次期学習指導要領改定作業と並行して進められている。これまで、学習指導要領で教える内容の基準を定め、入試の出題はそこから「逸脱」しない、という関係だった。

     討論や論述などを通じ主体的な探究型学力「アクティブ・ラーニング」を目指す次期指導要領は「何を覚えるか」より「どう学ぶか」を主眼とし、新共通テストへの記述式導入案もそこにつながっている。

     若者の将来選択に重要な節目ともなる大学入試が変われば、さかのぼって学校教育が変わり、グローバル化時代や人工知能(AI)などで急速に変化する社会に生きる力を育成できると文科省は説く。

     その要である入試改革が制度的に不安定であったり、見切り発車的に実施されたりするようでは、絵に描いたモチになりかねない。

     受験世代や教育現場のみならず、社会にも広く改革の趣旨と仕組みに理解を得てこその安定である。

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