英ポンドが対ドルで下落 メイ首相のEU離脱演説の報道受け
- 2017年01月16日
15日の為替市場で英通貨ポンドが対ドルで下落し、1ポンド=1.20ドルの水準を下回った。テリーザ・メイ英首相が今週予定する欧州連合(EU)離脱についての演説の内容をめぐる各社報道を受けた。
ポンドは昨年10月の「フラッシュ・クラッシュ(瞬間的な急落)」以来の安値を付けた後、多少水準を戻した。
アナリストらによると、メイ首相が演説でEU単一市場からの脱退を示唆する、との報道を受けて市場参加者がポンド売りに傾いたという。
ポンドの対ドル為替レートは、EU離脱が決まった国民投票が行われた昨年6月から約2割下落し、1985年によく見られた安値と同水準となっている。
ポンドは15日に、ユーロに対しても1パーセント以上下落し、1ポンド=1.13ユーロと約2カ月ぶりの安値を付けた。
トランプ氏は15日に行われた英紙タイムズとのインタビューで、ポンドの下落は英企業にとって「素晴らしいことだ」と述べた。
トランプ氏は、英スコットランド・ターンベリーに所有するゴルフ場がポンド安でメリットを得ていると述べ、「英国の多くの地域で企業活動は、すごいことになっている」と語った。
ポンド安は、英企業の海外市場での競争力を向上させるが、輸入品価格や海外旅行の費用に上昇圧力がかかる。
「フラッシュ・クラッシュの水準」
15日に英新聞数紙が報じたところによると、メイ首相は今週、単一市場へのアクセスよりも移民管理の強化に重点を置く「ハード・ブレグジット(英国のEU離脱)」的な対応をとると表明する見通し。
英首相官邸は、報道を「憶測」だとしている。
ロンドン・キャピタル・グループのアナリスト、ジャスパー・ローラー氏は、ポンドの動きは「明らかに政治が起こした下落」だと述べた。「ポンドはいまやフラッシュ・クラッシュの水準に戻っている」。
昨年の10月7日に起きたフラッシュ・クラッシュでは、ポンドは一時、1ポンド=1.19ドルを下回り、国民投票後の最安値を付けた。
シティー・インデックスのアナリスト、キャスリーン・ブルックス氏は、英国が単一市場を離れるとの報道が、ポンドを買っていたトレーダーたちにとって「クリプトナイト(訳注:米コミックのキャラクター、スーパーマンの力を奪うとされる鉱物)のようなもの」だったと語った。
「為替市場は反応した。15日夜時点では、17日にテリーザ・メイ氏が求められているような明快さと自信をもってブレグジットの計画を説明できるかどうか、市場は確信を得られずにいる」
メイ首相が「ハード・ブレグジット」的な対応をするとの見方は、これまでも出ており、ポンドにとっては売り要因だと市場参加者らは考えている。このため、今回のような報道が出れば「またポンド売りの波が起きる」とブルックス氏は指摘した。
ハーグリーブス・ランズダウンのアナリスト、ライス・カラフ氏は、「ポンドは、ブレグジットがソフトなのかハードなのかという推測で動いている」と語った。
アジア市場
ソシエテ・ジェネラルのアナリストらによると、移民管理の権限を取り戻し、欧州司法裁判所の管轄下にならないことにメイ首相がこだわっているため、市場参加の多くは英国が単一市場を脱退する可能性が高いとみている。
「なので、英国がどの程度緊密な貿易関係の取り決めを得られるかが問題になる」
昨年の国民投票以来、ポンドの為替レートは不安定に推移してきた。背景には、関税障壁のないEU市場へのアクセスを失った時の経済的な影響に対する不透明感がある。
アジア市場でのポンド取引は、ロンドンなど欧米市場が動いていない時間帯にさらに不安定になる可能性がある。昨年10月のフラッシュ・クラッシュはアジア時間に起きている。