天の川を撃ち抜く超音速の『弾丸』を発見 ―正体は「野良ブラックホール」か?―
|研究成果
慶應義塾大学大学院理工学研究科の山田真也(やまだまさや、修士課程2年)氏と同理工学部物理学科 岡朋治教授らの研究チームは、国立天文台のASTE(アステ)望遠鏡および野辺山45メートル電波望遠鏡を用いて、天の川銀河の円盤部で発見された超高速度分子ガス成分「Bullet(弾丸)」の電波分光観測を行い、その詳細な空間構造・運動・物理状態を明らかにしました。その結果、このBulletは5000年から8000年前に起きた局所的な現象によって駆動された成分である事が分かりました。Bulletの膨大な運動エネルギーと空間・速度構造、そして今現在この方向に天体が見られないことを考え合わせると、駆動源は一時的に活性化したブラックホールである可能性が高いと考えられます。現在、天の川銀河には、1億個から10億個のブラックホールが浮遊していると考えられています。今回の発見は、これまで観測する手段のなかった、伴星を持たない「野良ブラックホール」に迫る極めて先駆的なものです。
この研究成果は、Yamada et al. “Kinematics of Ultra-high-velocity Gas in the Expanding Molecular Shell adjacent to the W44 Supernova Remnant”として、2017年1月1日発行の米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』オンライン版に掲載されました。