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【インタビュー】小西明日翔『春の呪い』【「このマンガがすごい!2017」オンナ編2位】 死んだ妹、妹の婚約者、妹を愛する姉―― 愛憎うずまく三角関係の裏にあった、著者の過去

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2017/01/16


人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、小西明日翔先生!

デビュー前から個人創作の作品がインターネット上で話題となっていた、小西明日翔先生。『春の呪い』で、ついに連載デビュー、そして『このマンガがすごい!2017』では、「オンナ編」第2位にランクインし、さらに今後の期待度MAXの新人です!

死んだ妹に執着する主人公は、妹の元婚約者と彼女の痕跡を追うように逢瀬を重ねていく……。2人の間に見え隠れする「死」、そして心を蝕んでいく「孤独」と「狂気」!
今回、背徳的な雰囲気ただようセンセーショナルな愛憎ドラマが展開する、この『春の呪い』を手がけた小西明日翔先生にインタビューしました。

作中で表現される、リアリティある「死」や「孤独」の感覚……お話をうかがうと、本作制作の裏側に、小西先生の悲しい実体験があったのです!

著者:小西明日翔

個人の創作サイト(現在は閉鎖)で小説を発表したのち、pixiv、twitterに掲載したマンガやイラストが、話題を呼ぶ。

2015年11月から「月刊コミックゼロサム」(一迅社)にて『春の呪い』を連載スタートし、商業連載デビューを果たした。
本作は2016年末に完結し、最終巻となる第2巻は現在、好評発売中!

かつて個人サイトに発表していた小説を、自らコミカライズ!

――『このマンガがすごい!2017』オンナ編、第2位獲得おめでとうございます。デビュー作でいきなりのこの順位はなかなかの事件ですよ!

小西 最初、メールでお知らせをいただいた時は、まるでピンと来ませんでした。担当さんが「絶対ランクインしますよ」といってくださってたので、50位くらいか20位くらいかわからないけど、入れるのかもと期待はしてましたけど……まさか2位に入るなんて思っていなかったので。

――時間が経って現実感がわいてきた?

小西 2位ということはまだ上があるので、逆に自分のピークはまだここじゃないのだと思いたいです。

――おお、カッコいいですねぇ!

小西 そう思ったほうがこれから先のやる気にもつながりますし。でも、2位に入ることができて、ものすごくうれしいです! 冷静になって考えたら3位以内に入るってこの先どんなにがんばってもあるかどうか……。いや、 がんばりたいですけど。とにかく、こうやって形になる評価をいただいて本当にありがたいです。

――この作品はどのように立ち上がったのでしょうか。

小西 じつは、『春の呪い』はもともと小説として書いていたお話なんです。といっても未完でしたし、個人サイトにアップしていただけなんですが。

――小説とマンガを並行して描いていたんですか?

小西 ずっと小説を書いていたんですが、ある時『Fate/Zero』[注1]というアニメにハマってイラストを描くようになって。それから、マンガも描くようになったんです。

担当 小西先生がWEBに上げていたマンガ作品を見て、お声がけしたんですが、小説を書いていたことはお会いするまで知りませんでした。

小西 連載のお話をいただいた時にプロットを何案か出したなかで、これがおもしろいということになって。仕事としてマンガを描くのは初めてですから、短くまとめられそうな話をいくつか持っていったのですが。

――どこからこのようなお話を思いついたのでしょう。

小西 なにしろ小説は10年くらい前に書いていたものなので、細かいことはあまり覚えていないのですが……まず「妹が死んでいる」という設定を決めましたね。

――「妹が死んでしまい、妹の恋人だった男性と姉がつきあう」という設定からのスタート?

小西 はい。小説を書いている時は、先を考えずに行きあたりばったりでお話をつくってましたね。キャラクターを最初につくることはほとんどなかったです。最近はそういうやり方も試しているんですが、なかなかうまくいかないです。私の場合、キャラクターからつくるとお話をつくるのにすごく時間かかってしまう。

――軸になるのは、あくまで「妹が死んでいる」状況なんですね。このイントロはかなり衝撃的でした。

「妹が死んだ」――度肝を抜く物語の導入から、あらためて『春の呪い』というタイトルの不穏さをより感じさせられる。

「妹が死んだ」――度肝を抜く物語の導入から、あらためて『春の呪い』というタイトルの不穏さをより感じさせられる。

小西 夏美はそれまでずっと春の通院や検査に付き添っていたわけですが、じつは私もこのマンガを描き始める直前の3~4カ月間、夏美と同じようなことをしていまして。不思議な巡りあわせで……担当さんと初めて会って打ちあわせをしたのが2015年の4月1日なんですが、その3日後に家族が亡くなったんです。

夏美は春の見舞いに毎日通っていた。春の前では“いつもどおりの姉”をふるまいながら……。

夏美は春の見舞いに毎日通っていた。春の前では“いつもどおりの姉”をふるまいながら……。

――ええ、そうだったんですか!?

小西 おおかたの道筋は考えていたけど、もとの小説は未完でしたし、打ちあわせ時点ではまだプロットは完全でありませんでした。でも、それからプロットがすぐに固まって……結果的にこの作品は、家族を亡くした経験から生まれたといえますね。

――具体的に、先生ご自身が抱いた気持ちを描いた箇所もありますか?

小西 夏美には、春が死んでしまったあとも、ずっとどこかで春に見られているんじゃないかという恐怖があるじゃないですか。私にもそれがありましたね。いつか天国で再会する時に、胸を張って会えるようにちゃんと生きなければと。当初はそう思ったけど、「天国なんてないかもしれない、死んだ後に会えるかなんてわからない」と……一度はそこに行きついたんです。なのに、ハエが飛んできて近くにとまったりすると、「このハエってもしかして?」と思ってしまう。

――人の死を受けとめるには、そんなふうに逡巡する時間が必要ですよね。

小西 そんなことはないと、だんだん思うようになって……2巻では、私が考える「死」への答えを示したつもりです。あの時しか描けなかった作品かもしれません。

春の元婚約者・冬吾と会うことに、うしろめたさを感じる夏美。夏美の妄想が、背後から責めたてる。

春の元婚約者・冬吾と会うことに、うしろめたさを感じる夏美。夏美の妄想が、背後から責めたてる。


家族を亡くし、死生観に向きあった今だからこそ描けた

――本作は夏美と冬吾の恋愛物語であるだけでなく、夏美と春の結びつきが強固であるゆえに、普通の三角関係とは違っていますよね。夏美の春への想いは姉妹でありながら、かなり恋愛感情に近い。

小西 夏美にとって春は、自分を理解してくれる、ただひとりの、しかも血のつながった家族なので。

――並みの仲よし姉妹なら、冬吾に対して「大事な妹を幸せにしてくれますように」と思うところですが、夏美は冬吾に憎しみを覚えてしまうという……。

小西 そこまで妹のことを好きだったら、きっと本心はさびしいだろうなと。憎いというほど振り切ってもいいかなと思ったんです。

――春が死んでしまったあとに、彼女の面影にどうにかして触れたい一心から、春の婚約者とつきあい、だけど彼に惹かれていくうしろめたさに苦しむ。その痛々しさにグッと引きこまれて……だから、夏美を「心が狭い」とは思えないんですよね。

小西 そうですね。とても複雑なキャラクターです。

――そして、単行本第1巻のヒキで、春がひそかに書き残していたSNSの書きこみを見つけてしまうくだり、ゾクゾクしてしまいます!

春のSNSを偶然見つけ、知りえなかった妹の想いに直面する!

春のSNSを偶然見つけ、知りえなかった妹の想いに直面する!

小西 今の時代には実際にありますよね、きっと。

――名前を変えて身内にばれないようにするのもリアルで。自分がこんなの見つけてしまったらと思うと、怖くてしょうがないですよ!

小西 私も遺品整理をしていて、死んだ家族のメモ書きを見つけてしまったんです。自分の体調がどうだったかをチラシの裏に書きつけていて。「本当はこんなにしんどかったのか」と、初めて知ったんです。「弱気になっちゃだめだよ、大丈夫だから」と励ましの言葉ばかりかけていたけど、「つらいよね」っていってあげればよかったと思いました。

――第2巻で、春の本音が少しずつ明らかになっていくのを、息詰まる想いで読みました。かわいらしくて、夏美のことが大好きで病室でも笑顔を絶やさなかった春の、人間くさい本心に触れて……でも、不思議とドロドロした気持ちにならなかったです。

姉を羨む春。第2巻では、春の痛切な想いが明かされる。

姉を羨む春。単行本第2巻では、春の痛切な想いが明かされる。

小西 それはよかったです。やっぱり、春に何かいわせないと消化不良になってしまうと。SNSでは核心的なことは書いていないので、回想シーンで補う形で。現実の話、看取った側としては、「もっとこうしてあげればよかった」とか「私の行動をどう思っていたんだろう」「不満を抱いてなかったのかな」とか考えてしまうけど……。でも、その答えは絶対にもらえないとわかったから、その開き直りを夏美にも与えようと思いました。

――本作を描くうえで、先生は夏美の視点を置いているのでしょうか。

小西 いえ、そういうわけではないんです。死生観については、感じたこと、考えたことを夏美に託しはしましたが、物語を描くうえで視点はどのキャラクターにもにも置いてないですね。私は、基本的にキャラクターのことを「隣の家に住んでる人」だと思っていて。キャラクターがおかしなことをしていると、私が気づくみたいな距離感なんです。第2巻でも、その感覚について夏美にいわせています。

あくまでも他者であるスタンスと視点が、小西先生のマンガづくりの肝にもなっているようだ。

あくまでも他者であるスタンスと視点が、小西先生のマンガづくりの肝にもなっているようだ。

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