『ご近所未来ラボ』では、読者の皆さんの活動に役立つ、これからのコミュニティや地域を作っていく取り組みや考え方をご紹介していきます。
前回のリサーチ記事では、これからの公園のあり方を考える上でのキーワード「パークマネジメント」の発想について取り上げました。
今回は、この「パークマネジメント」の発想を用いて運営されている海外の公園をご紹介します!
元線路がニューヨークを代表する公園に
写真出典:Take a Walk on the High Line with Iwan Baan | ArchDaily (photo by Iwan Baan)
The High Line(以下ハイライン)は、ニューヨーク市にある全長2.3kmの線形の公園です。
この公園、実はもともと鉄道の高架部分なんです!廃線となったニューヨーク・セントラル鉄道の支線を利用して作られました。今は年間500万人近くの入場者が訪れ、ニューヨークを代表する観光名所の1つになっています。
この公園は、2人の青年の「ハイラインを残したい」という思いから生まれました。
沿線の住民だったジョシュア・デービッドさんとロバート・ハモンドさんは、Friends of the High Line(以下フレンズオブハイライン)という団体を結成。取り壊される予定だった線路を残すため、ハイラインの写真集の出版や、地域住民からセレブリティまで巻き込んだ大規模なファンドレイジングなどを行って、保存のための資金を調達します。
その結果、ハイラインは元の面影を残しつつ、オシャレで素敵な公園として生まれ変わったのです!
ハイラインでは、ガイドツアーやアートイベントが定期的に開催されています。また、地域の若者が公園をランウェイに見立ててファッションショーを行ったり、子ども向けのイベントを開催したりするなど、周辺地域の人々がプログラムを提供する場にもなっています。
ハイラインで行われたファッションショーの告知写真。若者がチャレンジする場を提供しました。
写真出典:The HighLine Fashion Show ‹ Valerie Star
現在、ハイラインはニューヨーク市が所有し、フレンズオブハイラインが管理を行っています。財源の約9割は、企業やメンバーシップ会員からの寄付。ニューヨーク市内だけでなく、全米中のファンからの支援が、ハイラインの運営を支えています。
【参考記事】
「廃線を活用した都市公園開発 ~ニューヨーク・ハイライン公園の成功に学ぶ~ 」Clair Report No.394 (2014年3月31日) (財)自治体国際化協会 ニューヨーク事務所
緑豊かな都会のオアシスは、サラリーマンや周辺住民が集うコミュニティ拠点
Bryant Park(以下ブライアント・パーク)は、ニューヨークのミッドタウンのオフィスビルに囲まれた公園です。中央には大きな芝生が広がっており、周辺の企業に勤める人や観光客の憩いの場となっています。
公園内では、ヨガやジャグリングや太極拳、語学教室など、様々な講座が週1ペースで開催されています。なんと、ほとんどの講座が無料で提供されているそう!
園内にある様々な遊具や、卓球のラケットなどの遊ぶための道具も、無料で使うことができます。
ブライアント・パークで開催されている絵本の読み聞かせ教室の様子。
ブライアント・パークで行われている語学教室の様子。
写真出典:Bryant Park Blog: Learn a New Language with Inlingua
ブライアント・パークは、もともと貯水池だった広場を利用し、1843年に開園しました。しかし、アメリカはこの頃から、度重なる経済恐慌、及び南北戦争の影響で、国内の情勢が不安定になっていきます。そんな世相を反映するかのように、ブライアント・パークも次第に荒れていき、麻薬密売人が出入りするような暗い空間になってしまったのです。
1980年代に入ると、ブライアント・パークの再生を目指して、都市計画家やランドスケープデザイナーによるリニューアルが行われます。この施策に伴って、Bryant Park Restoration Corporation(略称 BPRC)という組織が設立されました。
BPRCは、ブライアント・パークの公園運営費用を管理するため、ニューヨーク市や周辺企業が共同で設立した組織です、公園を眺めることが出来るビルやオフィスのオーナーからお金を集めて、公園の管理の費用に充てています。
このような手法は、Business Improvement District(BID)と呼ばれます。ニューヨークでは、様々な場所の管理にBIDの手法が用いられており、地域の資産は地域の人々自身で運営するという考えが根付いています。
【参考記事】
公園づくりは地域のコミュニティをも生み出す
最後に、公園ではありませんが、地域に公園を作ることを通じて、コミュニティ構築を目指している活動をご紹介します。
KaBOOM!(以下カブーム)は、地域住民や地域の非営利団体や企業を巻き込みながら、各地で公園をつくるプロジェクトを行う非営利団体です。アメリカの貧困地域において、子どもたちが安全に遊べる場所をつくることで、健やかに成長することが出来るような地域コミュニティの構築を目指しています。カブームは15年以上活動しており、これまで建設された公園は、なんと2100以上にのぼります。
カブームのプログラムの特徴は、公園の建設にかかる期間。なんと、たった1日で公園を作ってしまいます!
しかし、建設に至るまでは、入念な準備期間が設けられています。半年以上、話し合いやヒアリングを重ね、地域コミュニティとの関係性を築きながら一緒に公園の建設計画を作っていきます。その集大成として、建設日にはたくさんの人々が集まり、皆で一気に公園を建設します。その日は、地域の人々だけでなく、カブームに資金を提供している企業の方なども集まり、まるでお祭りのようです。
カブームの建設日の様子をムービーでご覧いただけます!
カブームでは、公園建設を建設する際、負担費用の10%を必ず地域住民による募金活動によってまかなうと決められています。これは、地域の人々からお金を集めることで、新しく出来る公園が自分たちのものだと認識し、愛着を持ってもらいたいという思いから。カブームは、地域の人々を主役にした、公園づくりのサポーターなのです。
写真出典: Photo Galleries | KaBOOM!
パークマネジメントと言葉だけ聞くと固そうな印象を受けがちですが、こうして実際の活動を見てみると、どれも見ているだけでワクワクしますね^^
次回は、日本の事例についてご紹介します。お楽しみに!
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