.


マスター:螺子巻ゼンマイ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:0人
リプレイ完成日時:2017/01/10


みんなの思い出

1
1

オープニング

「NINJAの……Commercial!?」

 冬の屋上に、炎條忍(jz0008)の声が響き渡った。
『そう驚くなよ。CMくらい別に珍しかねぇだろ?』
「それはそうだが!」

 突如として、炎條の元に舞い込んできた依頼。
 それは、『鬼道忍軍を中心としたCMを作ってほしい』……というものだった。

 依頼主の名は、金城珠。
 忍者の一族を母体とした撃退士企業、『金城天魔警備』の社長を務める男だ。
「……でも、何故オレに?」
 普通にプロに頼めばいいんじゃないのか、と炎條は金城に問いかける。
『お前に、っつーか久遠ヶ原に、だけどなァ』
 学園生の発想と経験を借りたいのだ。
 彼の疑問に、金城はそう答えた。
『撃退士、ってモンを一番長く、一番近くで見てンのは、久遠ヶ原の生徒だろ?』
 だから、撃退士というものを一番派手に魅せられるのも、学園生だろう。
 それが金城の理屈だった。
『ウチの社員もまぁ、学園出が殆どだけどな』
 それでも……社会に出れば、変わってしまう部分もある。
 頼めるか、という金城からの確認に、炎條は「No Problemだぜ」と頷いた。
『っしゃ。なら早速資料送っとくから、まぁ気軽に頼むぜ』



「NINJAの……Commercialだ!!!」

 それからややあって、集まった生徒たちに、炎條はいきなりそう告げた。
 唐突さに面食らう者もいたかもしれない。
 だが、依頼概要はしっかり各自の手元に用意されている。
 各々は炎條のテンションをほどほどに受け流しながら、書類に目を通した。

 金城天魔警備のプロモーション映像作成依頼。
 その概要は、以下の通りだ。


プレイング

歴戦の戦姫・雫(ja1894)
中等部2年1組 女 
【心情】
「国内よりも海外での方が評判になりそうですね」


【行動】
・15秒CM
警備会社の人に暴漢役と護衛対象者役をお願いする
暴漢役に襲い掛かって貰い、護衛対象者を背に隠しながら影縛の術を使用して捕縛
迅速かつ安全に危険から護れる事をアピールする

・30秒CM
天魔役で参加
ニンジャ警備員が現れたら天魔側の増援として戦闘に参加
一般人の振りをして警備員が近づいたら創造で作った夜叉の面を顔に付けて不意打ちを行う
戦闘シーンでは、乱れ雪月花や氷の夜想曲、阿鼻叫喚等の見た目が派手なスキルを使用
使用するスキルや攻撃は、力を抜いて警備員役の人達が躱したり打ち破ったりし易い様にする
「全力を出すのは慣れていますが、力を抜くのは如何にも苦手ですね・・・」

攻撃を行う際は、人やセットを傷付けない様に細心の注意を払って行う
主役よりも目立たない様にし、逆に主役たちが目立って映る様に試みる

※アドリブOK

美貌の奇術師・紺屋 雪花(ja9315)
大学部4年107組 男 
派手な演出でインパクトを

学園生が使用せぬ技
金城天魔警備で撮影
怒涛の全〜遁等忍といえば!系優先
同時/連携/映像編集等で秒数節約

視覚芸術使用
方針に従い絵コンテ作成

危険なアングル撮影に空蝉


■30秒
和メタルバンドに惚れた天魔が僕にせんとするのを忍が守る演出
設定は主に役作り用
映像は忍者最高!頼りになる!となる感じの戦闘メイン

炎條の口調
視聴者の耳にインパクト与えそうだ
天魔討伐!要人警護!イベント警備なら!金城天魔警備!!のシャウト宜しく
金城に音楽経験者いたら音作りとバンドマン役採用
危険な技案山子使用別所別撮り

俺は舞台芸術使用
客姿からの(忍は身分偽るよな
光纏で忍バレ
あけびと共に参上
和演出でIt's Show Time!口上無し使用(エフェクト扱い
ミハイル変化解除盛上げ戦闘導入
回避は空蝉

舞台等予算内作成
下限時
エア楽器
久遠ヶ原音楽室でBGM等作成メタルと15秒共通の戦闘シーン用
金城の会議室等に舞台作成(映る部分だけ/視覚芸術使用)
客はエキストラ分身術

起:ライブ
承:天魔襲撃
転:守る忍者
結:企業名PR
z:はしゃぐ要人警護する忍図〆

結に必要な秒数確保
1ターン5秒で詰込める量計算撮りたい画と相談し配分
起承z残秒数でテンポ良く

TVに出るとぼかしが入る・ミハイル・エッカート(jb0544)
大学部5年9組 男 
俺の会社も撃退士ビジネスを始めるので世話になりそうだ
大規模な警備が必要な場合、社内だけで撃退士を賄うのは無理だから別会社に外注するんだ

警備会社を選ぶなら何を注視するかでCM作り
インパクト、素早い対応、綺麗なアクション、ニンジャの格好良さでイメージUP

●30秒CM
イベント会場でコンサート
会場は小規模、客はエキストラ
カメラワークで会場を広く見せる

ニンジャが警備をしている
人気ロックバンドの主要メンバー(炎條忍)は天魔に狙われている
天魔はファンに扮する
炎條は天魔から花束を渡される瞬間に襲われる
ニンジャ警備員参上
しかし炎條が衣装をさっと脱ぐと実はニンジャ
実は俺が変化の術で入れ替わっていた
入れ替わりタイミングは演奏後に炎條が舞台裏に引っ込んだ時
ニンジャ警備員で天魔フルボッコ
エンドに『要人警護も承ります』と紹介、ライブに熱狂するVIPと周りを囲むニンジャの画面をチラ映し

セットはなるべく壊さず
エキストラを傷つけず
ニンジャ警備員の頭数増やすため金城の会社から増員

・行動
近未来的サイバーニンジャ
畳返しで天魔の攻撃を避けて変化の術を解除
干将莫耶を見栄えよく振り回して辻風
トドメは飯綱落とし
カメラ目線でサングラス外してウィンク

●15秒
スキル紹介映像
入りきらなければ画面をコマ割、1画面に2つ紹介
水上歩行で池の上
溺れている人(エキストラ)を引き上げ助ける

依頼後
社長と会社の名刺交換
俺の所属部署は当たり障りの無い名称

ペンギン帽子の・ラファル A ユーティライネン(jb4620)
大学部2年5組 女 
「あけびちゃんて、サムライガール目指してたはずなのにニンジャのCMなんかに出て大丈夫なのか?」
などと親友の不知火あけびをからかいつつCM作成に挑戦するラファルであった。
奥義まで納めて忍軍としては一目置かれている彼女(もともとは闇歩が専門なんだが軒を貸して母屋を取られるような塩梅)ではあるがCMでは非推奨なのでわりとしょんもり。
往年の合体変形ロボ風味に華麗な合体シーンを披露できるかと思っていたのに非常に残念ではある。

後機械化撃退士的な要素も押さえろってお達しなので俺出来る事ほとんどねーじゃんと御冠でもある。
まあ、代役も間に合わないのでいくぶんかは妥協の産物である。

30秒のCMではバンドライブにいちゃもんをつけるフーリガン役で登場。
ペンギン帽子にスタジャンキュロパン縞々タイツといういかにもジャリファン娘姿で登場。
興奮のあまりに飲みかけのペットボトルをステージに投げ込んで演奏妨害するところを警備員役の人に阻止してもらうと言う演出。投げは鋭いけれど受け止めやすいコースでペットボトルを投げる事には注意。
皆の連携は重視して演出に無理があるようなら皆に合わせる。


15秒のCMでは、
「遁甲の術」からの光学迷彩で足先から透明になって手で顔を下から撫でるように消えていく。
「変化の術」で流れるようにあけびちゃんやミハイル等の登場役者に七変化。
「影手裏剣」で的のど真ん中に手裏剣おったてて締め。

童の一種・逢見仙也(jc1616)
高等部3年1組 男 
忍軍かー
盾と鎧とか揃ってしまってからは受けてないなー

襲う天魔役
花束渡す時に天魔とはっきりさせるため天魔の翼使用して攻撃
要人の囮と知らないし、避け易いし、手を抜くなんておかしいので全力でフルメタルインパクト

その後は凍刃や鎖等で応戦しつつやられる
必要なら攻撃に合わせ炸裂陣等で自爆して派手に消える

撮る都度必要なら治療

撮り直しでスキル切れなら
翼→悪魔顕現
フル→アーマーチャージ
炸裂→ファイアワークス
凍刃→アンタレス、識別範囲系

と遠慮なく変える
派手なほうが印象残るだろうし

設定は襲撃かけてやられるところだけ重視
背景とかアピールしないだろうし、それより見る人にやられる様子を印象付けられるようにする

理由は必要になったらヴァニタスとして使えそうだったとかで

その先を歩む・不知火あけび(jc1857)
高等部3年2組 女 
忍者の家の出としては頑張らないとね!
「普段はサムライガールを目指してるけど、今日は正真正銘ニンジャガールだよ!
全力でお守りしましょう!

目的
忍者CMを作る

行動
●30秒CM
ニンジャ警備員役
衣装は忍装束
以下台詞・演出は30秒に収まるカット編集前提で
セットはなるべく壊さずエキストラを傷つけない

炎條さんが天魔(仙也君)から花束を渡される瞬間にさっと割り入る
軍刀で攻撃を防ぐ(金属音が高く鳴り響く
「ニンジャ警備員、参上!
ミハイルさんが変化の術を解いたら戦闘開始
ミハイルさんと他のニンジャ警備員と共闘
「曲者め!
仙也君に羽断ちで二回攻撃し、更に追撃
反撃されたら空蝉で華麗に回避
迫りくるラルと雫ちゃんと敵役複数巻き込み影手裏剣・烈でド派手に決める
ミハイルさんが飯綱落としをするターンでは影渡しで援護
「助太刀します!
終了後ウインクするミハイルさんの後ろでスマートに刀を収める


●15秒CM
30秒ver撮影後
皆でスキル紹介
最後に登場
影渡しを壁走りに、羽断ちを目隠に

場所はビル街(っぽいビルとビルの隙間部分でも可
時刻夜
壁走りしながら振り返りカメラに目隠でCMを〆


終了後
皆で打ち上げ
ご飯でも食べに行こう!
「NINJAも格好良いですけどSAMURAIも格好良いですよ!」
侍を目指してはいるけど忍者の家に誇りもある
忍ばない忍者同士ということで忍さんに全力で絡みに行く←



リプレイ本文




「……なるほど、炎條さんの暴走では無く、警備会社からの正式な物だったんですね」

 手元の資料と説明を合わせ、雫(ja1894)はようやく納得がいった。
 正直、炎條の第一声を聞いた時は、また彼が好き勝手言い出したのかと思ったものだが。
「Oh……だが確かに、それは思いついておくべきだったぜ……!」
 NINJAの紹介ムービー。こうなってはもう遅いが、先に学園側で作るべきだったか!
 本気で悔し気な様子を見せる彼に、自分の想像もあまり外れてはいなかったな、と雫は半ば呆れる。

「忍軍かー。盾と鎧とか揃ってしまってからは受けてないなー……」

 依頼の内容に、さて自分は何をしようかと考える逢見仙也(jc1616)。
 改めて講習を受けるよりも、今ある忍軍スキルで手伝うか、それとも。

「ひとまず、顧客の側に立って考えてみるか」

 もし、自分が撃退士の警備会社を選ぶなら……
 ミハイル・エッカート(jb0544)は『本業』の立場から思考を巡らせる。
「注視するポイントと言ったら……大体こんなところか」
 インパクト、素早い対応、綺麗なアクション、ニンジャの格好良さでイメージUP……
 その上で、会社からはスキルを多く取り入れて欲しいとの要望も出されている。

「派手さも出したいよね。強いインパクトで目を引けるようにしてさ」

 紺屋 雪花(ja9315)は、使えそうな忍軍スキルを確認しつつ構想を練る。
 いかにも忍者らしい技と言えば……火遁とか、土遁とか、だろうか?
 勿論、スキル以外にもインパクトを強める要素はあるだろう。
 例えば……。考えつつ、紺屋はふっと炎條に目を向けた。

「なー、これって俺の機械部分とかもダメなわけ?」
「Yesだ。あくまで金城社所属のNINJA、ってImageだからな……」
『会社側の社員が使えないスキルは非推奨』……その一文を目にして問うのは、ラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 彼女は、身体の何割かが機械化している。
 戦闘においても、その機械としての特性を活かした能力を使用するのだが……
「まじかよ。じゃあ俺のスキルあんま使えねーじゃん」
 金城社の忍者が同じことを出来るわけではない為、機械的すぎるそれらも非推奨となってしまうのだ。
 せっかく奥義スキルだって習得してるのに、とお冠の彼女を、「まぁまぁ」と不知火あけび(jc1857)が宥める。
「また披露する機会もあるよ!」
「別にいいけどよー……」
 往年のロボットものみたいな、華麗な合体シーンを披露出来るかとおもったのだが。
 まぁ、今更他の撃退士に頼め、なんて言うつもりもない。
 っていうかさ、とラファルは不知火に向き直り、ちょっと意地悪そうな笑みを見せる。
「あけびちゃんて、サムライガール目指してたはずなのにニンジャのCMなんかに出て大丈夫なのか?」
「いいんですよ! 私だって忍の家の出ですし……!」
 忍者一族から生まれた会社だというのなら、自分だって協力したいのだ。
「不知火もNINJAの家系か! それはGoodだぜ!」
 と、それを聞いた炎條はにやっと笑う。
「俺もNINJAらしいNINJAとして、全力でSupportするつもりだ!」
「あー、それなんだけどさ……」
 大きな声で宣言する炎條。
 そんな彼に、紺屋はある提案を持ちかけて……



 それから数日経って後。
 スキルを中心としたCMは手早く撮影を終え、次にライブ会場でのロングCMの撮影が開始された。

「はい、じゃあもう一回確認します」

 会場にいるのは、依頼を受けた学園生達7人と、数名の金城社撃退士。それから若干名のエキストラだ。
 紺屋とミハイルが皆に大まかな流れを説明し、まずは下準備を整える。

「普段はサムライガールを目指してるけど、今日は正真正銘ニンジャガールだよ!」

 夜闇を思わせる美しい忍装束を纏い、不知火は気合を込める。
「全力でお守りしますね、忍さん!」
「ああ! ……But、戦闘シーンで出るのは俺じゃないんだな」
「Yes。どうだ、似ているか?」
 変化の術で炎條の姿になったミハイルは、喉に触れつつ声も炎條に近付けていく。
「Goodだ! あとは表情だな!」
 にぃ、と笑う炎條に合わせ、ミハイルも口角を上げる。瓜二つだ。

「んで、この歌詞は自分で考えたのか?」
 ラファルは、台本に書かれたバンドマンの歌……その内容について、炎條に尋ねる。
「そうだぜ!」
「おー、俺これのファンとして出んのか」
 ぐい、とペットボトルのドリンクを飲むラファルは、スタジャンにキュロットパンツ、それから縞々のタイツといった服装で、いかにも若いファンの娘、という風体だ。
「まぁ歌詞は少ししか出ないらしいがな! ……っと、もう本番がStartするぜ!」
「っし、んじゃ一丁やるか」
 いつものペンギン帽子を被りなおして、ラファルは立ち上がる。
「……俺のスキル使えりゃなー……」
 呟きに、しょうがないぜと炎條は短く返した。

 戦闘シーンの撮影は、1アクションごとに行われた。
 長回しでも十分見れる映像にはなるが、時間の調節が難しい……というのが理由である。

「全力を出すのは慣れていますが、力を抜くのは如何にも苦手ですね……」

 リハーサルとして数手動いてみてから、雫はぽつりと零す。
 演技とはいえ、あまり嘘くさくなってはいけない。といって、『巧く』手を抜く方法など心得てはいない。

「こっちは避けやすいだろうし、全力で叩こうと思う」
「うん。危なそうなら空蝉で避けるね!」
 いいよね、という逢見に、不知火は頷く。
「ミハイルさんも最初は畳返し使う予定だし、こっちは大丈夫かな。私の方からはどう?」
「ああ……別に遠慮しなくていいかな。回復すればいいだろうし」
「一応、危険な所には案山子使おうかと思ってるけど」
 逢見の答えに、小道具の準備を進めていた紺屋が声を掛ける。
「それならそれでいいかな。……あぁ、でも……」
 自分が倒されるなら、どういう演出がいいか。
 考えていた逢見は、そのアイディアを紺屋に説明する。
「……で、これやると案山子は使えない」
 代用するなら別の場所だな、と逢見は案山子を見遣った。
「それも面白そうだねぇ。倒した! って感じがする」
 うんうんと頷く不知火。であれば、と紺屋はひとまず案山子を端に退けてもらう。

 それから、撮影は着々と進み。

「……以上で、本日の撮影は終了です」

 最後のシーンを確認して、紺屋はスタッフ一同にそう告げた。
「お疲れ様ですー!」
 ふぅ、と息を吐き、不知火は笑顔を浮かべる。
 なかなか大変だったけど、これでひと段落だ。
「それじゃあ、皆で打ち上げに行きましょうっ!」
「おお、いいなァ。この人数なら、ウチの経費で落とせるぜ」
「ほんとですかっ!? ごちそうになります!」
 不知火の提案に答えたのは、金城社社長、金城珠だった。
 社長である彼も、絵コンテを確認した後、「面白そう」という理由で出演することとなったのだ。



「それでですね、忍さん!」
 打ち上げの席で、不知火は炎條の隣に座り、熱く語った。
「NINJAも格好良いですけどSAMURAIも格好良いと思うんです!」
「そうだな! 確かにSAMRAIも捨てがたい……!」
「そうなんです! 忍者の家系も勿論誇りに思うんですが、やっぱり私の目指すところは侍で――」
 己の侍像、忍者像について、彼女たちは意見を交わす。
 その一方では、ミハイルが金城珠に名刺を手渡していた。
「社内だけで撃退士を賄えない場合、そちらのような会社に外注することになるだろうからな」
「成程、将来のお得意様、ってわけだ」
 金城もまた、ミハイルに自分の名刺を渡しつつ、ありがたいことだと笑う。
「ウチはまだまだ実績が少ないからなァ、依頼があれば喜んで受けるぜ」
 それから金城はミハイルの会社について色々と尋ねてきた。
 ……無論、本当のことを言うわけには行かないので、予め用意した、当たり障りのない答えを返すことになったのだが。



「完成したCMが届いたぞ!」

 それからしばらく経ち。
 学園に一枚のディスクが届けられた。

「どんな出来になってるか楽しみですね!」
「なかなか上手く編集できたと思う」
 わくわくした声の不知火に、紺屋は自信ありげに答える。
 撮影が終了した後も、紺屋は編集作業を引き受け様々な調整に苦心していた。
 苦労した分の成果は出ているだろう、と紺屋は核心している。
「んじゃまぁ、とっとと確認しよーぜ」
 ラファルはそのディスクをひょいと取り上げ、プレイヤーに挿入した。
 パチパチと炎條が照明を落とすと、目の前のスクリーンに、映像が映し出される……



 暗い和室の中、不思議な文字の書かれた巻物を受け取る、少年。
 ババン、と三味線の音楽が響き渡り、少年は一瞬にして美女へとその姿を変える。

 美女は夜闇の町を駆け抜けていく。車さえ抜き、風の様に跳ぶ。

 瞬間、場面が切り替わる。
 何処か理知的な顔をした中年男性に、突如として暴漢が襲い掛かった。
 が、瞬時に男性の前に銀髪の少女が割って入ると、彼を背に護りつつ、剣から延びる影で男を縛り上げる。

 ここで画面が二つに分割した。
 左画面では、池の上を金髪の男が駆け抜けていく。
 右画面では、金髪の少女が黒髪の少女、短髪の少年、銀髪の少女へと姿を変えながら走り……
 元の姿に戻ると、彼女は一枚の手裏剣を投げ、つま先から顔を撫で上げると共に消えていく。
 すとん。音を立て手裏剣が的の中心に突き刺さると共に、金髪の男は溺れていた男性を引き上げた。

 そして再び、夜の街。
 ビルの壁面を駆け登る一人のくノ一が、突然こちらに振り返ると……

 何かを投げ放つ動作と共に、画面は暗転する。

『リアルな忍者が守ります 金城天魔警備』

 最後、低い男性の声と共に会社の名前が表示された。

 ………………
 …………
 ……

 2本目の上映が始まった。

『CHANBARA BARA! NINJAFIGHT! YEAHHH!!』

 あるライブハウスで、長髪の男がシャウトする。
 会場は大いに沸き、三味線とギターの音が響き渡る。

 そしてライブは終了し、客席から1人の男が花束を持って近づいてくる。
 長髪のバンドマンが花束を受け取ろうとした、その時だ。

 ――バサッ!

 男の背中から、蝙蝠のそれに似た対の翼が姿を現した。
 天魔だ……!
 騒然となる会場。天魔は何時の間にか手にしていた黒剣を、バンドマンへと振り下ろす。

 だがその時、会場から黒い影が飛び出し、天魔の前に立ち塞がった。

 キィィン!!

 黒い剣は桜の浮かぶ軍刀によって受け、流される。
 高い金属音の中、藤色のくノ一が姿を現した。
 同時に、客席がスポットライトに照らされ、観客の男が瞬く間に忍装束へと姿を変える。
「ニンジャ警備員、参上!」
 くノ一の叫びと共にバンドマンが衣装を脱ぎ捨てると……その下からは、更に金髪のサイバーニンジャが現れた。
「!!」
 天魔はサイバーニンジャを斬り払わんとする、が、ニンジャは地面を叩き、床から1枚の畳を造りだし、回避。
 その裏から飛び出したニンジャは、一対の剣を両手に握り、大きく斬り払う。
 と、剣先から薄く光る衝撃波が、十字を描いて天魔へと放たれた。
 天魔はその攻撃を受けると、手にした剣を長杖へと変化させ、周囲に冷気を発し始める。
「……」
 避難が進む会場。そんな中、舞台上を見つめ動かない、銀髪の少女。
 くノ一の刀が闇を纏い、目にも留まらぬ速さで連撃を叩き込む。
 少女はそれを見つめながら、手の内に般若の面を造りだし、被り……すっと構えた黒い剣で、くノ一の背へと斬りかかる。
 が、刃が裂いたのは彼女の肌でなく……一枚のジャケット。
「曲者め!」
 何時の間にか回り込んでいたくノ一は声を上げながら、棒手裏剣の雨で天魔と般若面を攻撃。
 傷付いた天魔たちは、何かの術でその場を黒い闇で包む。
 黒闇の舞台上で、5人の剣戟と共に白い花びらが舞う。
 ――それと共に、BGMの和楽器は激しく高鳴り――
 金髪のニンジャが、手から双剣を消す。
「助太刀します!」
 すかさず、くノ一が刀の切っ先を天魔へと向け、斬り、払う。
「っ!!」
 鎧に深い傷がつき、よろける天魔。
 そしてくノ一の背後から、金髪のニンジャは天魔の懐へと潜り込み……その胴体を、がしりと掴んで跳び上がり。

 思い切り床に、叩き付けた。

 ぼぅん、と天魔は爆発し、煙と共に消える。
 綺麗な所作で刀を収めるくノ一。金髪のニンジャは手で埃を払うと……
 ぱちん。サングラスを外しながら、カメラへ振り向きウィンクした。

『天魔討伐! 要人警護! イベント警備なら! 金城天魔警備!!』

「――それじゃあEncoreいくぜェェッッ!!」

 再び、活気を取り戻したライブ会場。
 興奮した少女客のペットボトルが手から吹っ飛び、飛んでいく。
 弧を描くボトルは客席の後方、ライブに熱狂する男性客――金城社の社長――へ向かうが。
 ぱしん。客の前に立っていたスーツの男がそれをキャッチし、何事も無かったかの様に直立不動。

『要人警護も承ります』

 最後にナレーションと共に文字が浮かび、CMは終了した。

 ………………
 …………
 ……

「おー、あけびちゃん随分カッコよく映ってたじゃん」
「改めて観るとちょっと、照れますね……!」
 不知火をからかうラファル。
 彼女は少し恥ずかしそうに答えつつ、「忍さんも、本物のバンドマンみたいでしたよ」と感想を述べる。
「Sanks! NINJA BAND、やってみてもいいかもしれないな!」
「またそんなことを……まさか、それで依頼出したりしませんよね?」
 無い、と言い切れない彼の性格に、雫は内心呆れつつツッコむ。
 どうかな、と元気よく答える炎條には、溜め息交じりに笑うしかない。
「ホントはもっとしっかり見せたかったんだけどな。こっちも時間ギリギリで」
「でもその分テンポは良いし、別にいいんじゃない?」
 素早く細かい動きではあったが、動き出しや間は出来るだけカットし、印象的なシーンのみをつなげて構成されている。
「でも、こうして観るとあっという間だな」
「俺の出番もラストだけだしなー」
「ペットボトルの投げ方はGoodだったぜ!」
 急遽後ろに投げることになったものだが、ラファルのスローイングは完璧であった。

「……おっと。そういえば金城からMessageも預かっていたぜ」

 各々が感想を言い合う中、忘れる所だった、と炎條は告げる。

『今回のCM、なかなか良い出来で気に入ったぜ!
 テレビでもある程度流すつもりだが、まずは会社のHPに掲載させてもらう!!』

 このCMの評判や会社への影響は……まだ、これからの話だが。
 ひとまず、今回のCM制作は成功を収めたのだった。


依頼結果/参加キャラクター

依頼成功度:大成功面白かった!:5人
MVP一覧
 美貌の奇術師・紺屋 雪花(ja9315)
重体一覧
 −

歴戦の戦姫・
雫(ja1894)

中等部2年1組 女 ナイトウォーカー
美貌の奇術師・
紺屋 雪花(ja9315)

大学部4年107組 男 鬼道忍軍
TVに出るとぼかしが入る・
ミハイル・エッカート(jb0544)

大学部5年9組 男 ナイトウォーカー
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

大学部2年5組 女 アカシックレコーダー:タイプB
童の一種・
逢見仙也(jc1616)

高等部3年1組 男 ディバインナイト
その先を歩む・
不知火あけび(jc1857)

高等部3年2組 女 鬼道忍軍


依頼相談掲示板

CM作り作戦卓
ミハイル・エッカート(jb0544)|大学部5年9組|男|鬼道
最終発言日時:2016年12月29日 19:50
挨拶表明テーブル
宝井正博(jz0036)|教師0組|男|一般
最終発言日時:2016年12月28日 11:08


リプレイ投票

このリプレイが面白かったと感じた人は下のボタンを押してみましょう!
投票1回につき1ポイントを消費しますが、1回投票する毎に1,000久遠プレゼント!
あなたの投票がマスターの活力につながります。

現在のあなたのポイント:0







推奨環境:Internet Explorer7, FireFox3.6以上のブラウザ