【ワシントン=鳳山太成】トランプ次期米大統領は16日の英紙タイムズ(電子版)のインタビューで、ロシアへの制裁解除と引き換えに核兵器の削減で合意できる可能性があるとの期待を示した。昨年12月には米国が核戦力を強化する必要があると述べ、ロシアとの軍拡競争も辞さない構えだったが、一転して対ロ関係改善に意欲を示した。
米国はロシアによるクリミア編入などに反発して、米社などとロシアの主要銀行や企業との取引を制限するといった経済制裁を科している。トランプ氏はインタビューでこうした制裁を引き合いに出し「ロシアといい取引ができるか考えてみよう」と述べた。理由として「核兵器は大規模に減らすべきだと考えているからだ」と説明した。
トランプ氏は昨年12月「米国は核戦力を大幅に強化、拡大しなければならない」とツイッターに投稿。テレビのインタビューで「軍拡競争をしよう」とも答えていた。ロシアのプーチン大統領が「戦略核戦力の軍事能力を強化する必要がある」と主張したことにトランプ氏が対抗したとみられていた。
トランプ氏は1月13日の米紙インタビューでもテロとの戦いなどでロシアが協力姿勢をみせれば、制裁解除を検討すると語っていた。
オバマ現政権はウクライナ危機や大統領選へのサイバー攻撃を機に対ロ制裁を発動し、米ロ関係が急激に冷え込んだ。トランプ氏は現在科している制裁の解除を取引材料にしてロシアを揺さぶり、核兵器削減やテロ組織の掃討でロシアとの協力関係を再び築く考えだ。
ただ米国内にはトランプ氏が主張してきた対ロ融和路線には慎重論が強い。米中央情報局(CIA)のブレナン長官は15日の米FOXテレビのインタビューで、ロシアによるウクライナのクリミア半島編入などを挙げて「トランプ氏はロシアの全体像を理解していない」と指摘。対ロ制裁を解除することに警鐘を鳴らした。
トランプ氏はロシアに個人的な弱みを握られているとの疑惑を巡り、情報を漏らしたとして米情報機関を厳しく批判している。